炎の雫が外房に移転して、この秋で10年を超えました。
(私たちがいすみに移住したのが2015年6月、炎の雫の再開店が10月でした。)
これを記念して、11月16日の午後、「炎の雫・外房10年記念ライブ~気がつけば 時は過ぎゆき~」を開催しました。
最近のライブでやっている歌と手話のコラボも含めて、水野が今歌いたいと思った曲だけを詰め込んだ2時間ちょっとのライブ。
おかげさまで大盛況、皆様とともに素敵な時間を過ごすことができました。
本当にありがとうございます。
カフェ炎の雫は2012年に東京・高円寺で生まれ、生音ライブ、映画上映会、アート展示、イデアの雫(人と出会い話を聞く会)、ごはんの会(ユニバーサルな昼食会)等、さまざまな活動を行っていました。2014年の12月、水野たかしの脳出血をきっかけに、東京を離れ、ここ千葉いすみ市へ。移住から4か月後、現在の炎の雫をオープン。高円寺の時より少なくなったとはいえ、ライブや映画上映会は続けてきました。それがコロナをきっかけに途絶えてしまって…今回久しぶりのライブでした。
今回のライブ、歌詞とともに紹介させてください。(こんなことほぼしないんだけど。♫と♫の間は歌詞です、切り取りは私の独断。)
スタートは水野たかし定番の「ホーボーズララバイ」。
♫ 町から町へとさまよい歩く
長距離トラックのうなりが 俺らにゃ子守唄 ♫
これをやるとなんかのってくるらしい。
2曲目は「祈りの唄」
♫ 忘れられないなら忘れなくてもいい 思い出と一緒に生きればいい
天地あまねく命を抱きしめて つらい夜をやり過ごす ♫
この曲は東日本大震災の後で作った曲です。
3曲目「ほろ酔い気分」
♫ ほろ酔い気分に優しさが顔をのぞかせる
今日も一日生きた 少しだけ前に進んだ ♫
水野の歌にしては珍しくカバーしてくれている人もいる曲です。
この後は手話コーナー。
まずは水野の歌と私の手話のコラボの原点になった
「ヘイ マルシーラ」
♫ 大きな力に惑わされるな われらの過ち大地は知る
ヘイマルシーラ ヘイウルシーラ 大地よ力を与え給え
この身も心も大地とともに ♫
(マルシーラ=みんな、ウルシーラ=大人たち)
高円寺時代から上映会を続けてきたドキュメンタリー映画「カンタ!ティモール」のテーマソング。カンタティモールの上映会のきっかけになったのは名古屋のミュージシャン・江口晶さん。夫の古い知り合いで上映会を企画して上映&ミニライブ&シェア会を続けていました。高円寺の上映会の時も何度も名古屋から来てくれました。
その頃、彼がこの曲を歌い、当時の奥様がフラを踊るというのをやっていて、素敵だなと。私は踊れないけど、手話ならつけられるかとやり始めました。どうせならと歌詞も原曲の意味に沿って訳し直して、上映会の度に歌ってきました。
(写真はこの曲を作ったアレックス。映画にも出演しています。)
次に「メメントモリ」
♫ 人は愚かで間違えるけど 外しちゃいけない道がある
生を思え 死を思え 本当に生きているのだろうか ♫
これはコロナで日本全部が封鎖された時のことを書いた歌。
水野のステージに立って手話をつけるという形でやってきました。(この写真は今回のライブの写真ではありません。撮影は南風島渉さん。)
千葉に来て出会ったものの1つにポエトリーリーディングがあります。2019年4月、ご縁があって、詩人たちが集まって朗読をするイベントを開催しました。この時は5人の方が出演してくださいました。個性的で実力ある方が集いました。その中のお一人詩人の大島健夫さんが主宰する詩のオープンマイク「千葉詩亭」に参加させていただき、歌詞を手話をつけながら語ったことがあります。それで目覚めて、ライブの時ちょこちょこやらせてもらっています。
今回、2つの歌を合わせてリーディングバージョンを作りやってみました。
「Justice & Love」。
«大切なのはこれ以上傷つけないこと 心の中に正義と愛を持っていること
目をしっかり開いて 背筋をピンと伸ばして 愛を持って正義を貫きたい »
結構練習しました。どうだったでしょうか。
さてここで、皆さんにも手話をやってもらおうと「虹」という曲のサビの部分の手話を説明して練習。
♫ 虹が虹が 空にかかって 君の君の気分も晴れて
きっと明日はいい天気 きっと明日はいい天気 ♫
ここを会場のお客さんにやってもらいました。
以前東京でのライブでもやってみたら、意外と皆さんちゃんとやってくださったのに気をよくして。
「虹」は子供の歌なのですが、数年前に「虹色カルテ」というドラマで取り上げられた曲で、知ってる方、馴染みの方もいたようです。虹の診療所チーム(高畑充希・北村拓海・井浦新)が歌ってました。
手話では“虹”は右手で7を作って空間に虹の形を描きます。このイラストで分かるかな。手話の数の表し方、空間の使い方も簡単に説明しました。自分の体より前が未来、後ろが過去、だから1を出して前に動かすと“明日”です。
手話の歌のこと。
手話は聞こえない人の言葉です。手話の歌は本来、聞こえない人に歌詞を伝え、一緒に歌を楽しむためのもの。でも私にとっての手話の歌はちょっと違います。私は東京に居た時、知的障害のある子どもたちの放課後活動の仕事をしていました。初めてそのクラブを訪ねた時、みんなで手話で歌っていたのです。自閉症や言葉を発しない子どもたちが、手を動かすことによって声を出さなくても歌に参加できる、そうか、こういう使い方があるんだと思いました。そこでは毎日の活動で必ず手話で歌う時間があって、自然と手話の歌が身に付いていきました。後に、自分で考えて歌に手話をつけるようになり、それが今の活動のベースになっています。子どもたちが真似してくれたように、大人も真似してくれるかなと思って「虹」やってみたら、みんな楽しそうに手を動かしてくれて、嬉しかったです。
前半の最後は軽快に「Peace like a river」
♫ 見えない時間に 見えない場所で 見えない誰かを思い
目立たず知られず でもそれでいいんだ (歌詞奇妙礼太郎)
これはスタンダード?ゴスペル? とあるCMで使われていた曲です。
Peace Love Joy 大切です!
休憩を挟んで、後半は水野たかしソロ。
まずはやなぎの「ウイスキー」で幕開け。
♫ ウイスキー ウイスキー 光の水よ
俺をどこかへ連れてってくれ
ここじゃないどこかへ ♫
やなぎさんとは、ずいぶん前に高円寺の稲生座(=東京に居た時の水野のホームだった老舗のライブハウス)で知り合って長い付き合い。日本全国を歌いながら旅しているシンガーソングライターです。高円寺でも何度も出てもらって、千葉にもライブをしに来て、地元のミュージシャンと共演もしてくれました。
実は私はやなぎさんが大好きで、よくいろんなところのライブを聞きに行ってました。好きな曲もいっぱいあります。やなぎさんが一番好きだという名古屋・犬山のライブハウス「ふう」まで行ったこともあります。
水野は水野で、どこか共通する価値観があったようで、次第に距離を詰めていき、東日本大震災の直後にやなぎさんの車で東北を旅したり、彼が陸前高田のライブハウスで録音するのに付き合ったり。千葉のうちの小さなスタジオにもふらっとやってきて、一晩でデモを録っていったり。私たち夫婦にとってとても大切な人でした。
残念ながら、2022年に突然逝ってしまいました。水野より10歳も若いのに。
やなぎのアグレッシブな曲をもう2曲。
「いきるもののうた」
♫ 信じることをやめるな 疑うことをやめるな
届かぬものに手を伸ばし もがき続けることをやめるな ♫
「貧しい人々」
♫ パソコンの画面の中に 真実なんてない 真実を弄ぶ悪意があるだけだ
国の最高機関の議事録に 正義なんてない 正義を弄ぶ言葉が並んでいるだけだ
僕らはどうしてこんなに貧しくなったのか ♫
彼の言葉がまっすぐに突き刺さってくる、これぞやなぎ、今でも鮮烈です。
もう一人、石井明夫の歌を1曲。
「Sacred Mercy」
♫ 日が昇り 目覚めの時を知る
だが世界は争いを続けている‥‥
選ばれし人よ 進め 自由をなすのに理由はいらない
選ばれし人よ 今 愛と勇気に言い訳は似合わない ♫
この曲、歌詞がすごい!マザーテレサもラマダライも出てくる。石井明夫は高円寺では超人気のとても高円寺らしいバンドマンです。
この曲は、水野が歌いたいと彼に言って、どんどんやっちゃってくださいと言ってもらった歌。ほかにも何曲か彼の歌やってます。
この後は「One more sonng」で一息ついて。
♫ 人生に引きずられておいら どこに行くのかこれから
おいら歌う おいらの旅に向けて たとえ夜が覆いかぶさろうと ♫
「あなたの星」
♫ 生きていた時は あなたは激しくて
求めて投げかけて 揺れて疲れ果てて
生きていた時は あなたはまっすぐで
まるで嵐のように駆け抜けて星になった
大いなるものと一つになった今
はるかな高みから見ていておくれ
大いなるものと一つになった人
小さき人のために祈っておくれ ♫
水野は、星になって空から見ているであろうミュージシャンたちに捧ぐと言いました。その思いで歌い続けていると思います。
でも、詩を書いた私にとっては、これは16歳で天に召された男の子に捧げた歌。障害を持って生まれ、激しく、まっすぐに生きて、嵐のように駆け抜けて逝った彼。彼が亡くなった後、しばらくの間言葉のかけらだけ抱きしめていました。とある人が、「大丈夫、いつか形になるから」と励ましてくれて、その通りにやがて歌になりました。今でもこの曲を聴くたび、彼の笑顔を思い出し、涙しそうになります。
(私達は、私が詩を書いて水野が曲をつけるという形で歌を作っています。もう20年近くなるでしょうか。昔は詩のことで議論も喧嘩もしたけれど、最近はあまり闘わなくなりました。いいのか悪いのか、エネルギーがなくなってきたのかもしれませんね。)
最後は「あなたに」 一番新しい歌です。
♫ いつだって心は揺れる それでも笑っていよう
誰だって何か抱えて あなたはあなたでいい
今はただあるがままに 流れにまかせ何処へ
いつの日か終わりは来るけど その日も笑っていたい‥‥
あなたに会えてよかった あなたにありがとう ♫
しっとり終わりました。
ありがたいことにアンコールもいただいて。「いくつもの星が流れ」を歌いました。
♫ 明日は明日の風が吹くけど どうなっていくかは俺たち次第
いいことばかりが続かないけど 行く先真っ暗と決まっちゃいない ♫
これはヒロスケの曲。ヒロスケって知ってますか?メジャーデビューしてレコード出して、ちょっと名前が出て。兵頭ゆきの夫でもあり、長いことアメリカに行ってました。
実は水野たかしは、一時期ヒロスケと一緒に活動していました。ギターとボーカル水野、もう一人キーボードがいて3人で。ヒロスケのハスキーな高めの声と水野の硬質な声がうまく合わさって、なかなか魅力的なバンドでした。
私、なぜかこのバンド見たことあります。その頃は全然知らない人だったけど。
ヒロスケの名曲と言われているのが「いくつもの星が流れ」。西城秀樹がカバーしたこともありました。何十年も前の曲だけど、今聞いても全然古くない。
水野も折に触れて歌い続けてきました。うん、やっぱりいい曲でした!
というわけで、11月16日炎の雫・外房10年記念ライブのレポートでした。
11年目に入った炎の雫、これからもよろしくお願いします。
★余談ですが、現在公開中の映画「スプリングスティーン 孤独のハイウエイ」、とてもいい映画です。興味がある方、ぜひ見てください。 (2025年11月27日 水野佳)



























