2024年3月30日土曜日

千葉市動物公園


千葉市動物公園へ行ってきました!千葉に引っ越してちょっと経った頃に一度行ったきりで、久々の訪問です。

千葉市動物公園と言ったら、ハシビロコウとレッサーパンダの風太君が有名。ですが、前回はそのどちらにもあってないみたいで、なんでかな??と思いながら、今回の訪問。動物園ってなんておもしろいんでしょう、楽しかった!ハシビロコウについては後で詳しく書きます。




モノレールの駅を降り、正門を入って木々の間の坂道を登っていくと、やがてモンキーゾーンに着きます。千葉市動物園には、たくさんの種類のサルたちがいることも特徴の一つです。これはフクロテナガザル。私の大のお気に入りです。野生ではマレー半島やスマトラの熱帯雨林に生息していて、テナガザルの中で最も大きい。大きな喉袋を膨らませて「ホウホウ」とかなり大きな声で鳴き、長い腕でうんていを伝わって素早く移動、見ていて飽きません。ずーっと見ちゃう。時々止まってこっちを見てる顔がなんともかわいい。ここにいるのは雌と雄の2頭。30年以上仲良く暮らしているのだとか。エサは、野菜・リンゴ・ゆで卵にヨーグルト食パン。人間の朝ごはんみたいですね。

これはブラッザグエノン。
オナガザルの仲間。コンゴ盆地やその周辺の湿地林、川辺に生息しています。場所によって、地上で半生活するグループと樹上で生活するグループがいるとか。食べ物は、木の実、葉っぱ、昆虫。横向きだからちょっとわかりにくいけど、おでこのところの毛がオレンジ色で目立ちます。

これはワオキツネザル。本当はしっぽが長くて黒と白のしましまで特徴的なのだけれど。しっぽをピンと立てて歩くと書いてあったけど、なかなかそういう光景は見られませんでした。
生息地はマダガスカル島南部。
エサは果実、木の芽や花や、昆虫。



これもキツネザルの仲間。クロシロエリマキキツネザル。
生息地はやはりマダガスカル島の東部。食べ物もほぼ同じ。
体は大きくがっしりしている。堂々としてる感じがしますね。
寒いときは体を丸めて、ふわふわの毛玉みたいになっちゃうらしい。
お母さんは子供を巣に置いて採食に出掛けるとか。
びっくりするほど大きな声で鳴くことがある。
この他にも、パタスざるとかマンドリルとかクモザルとか、いろんなサルがいて、それぞれ面白いです。もちろんニホンザルのサル山もあります。






極めつけはゴリラ。ニシゴリラのモン太君です。霊長目ヒト科ですよ。アフリカ西部の熱帯雨林に住んでいます。大きい。モン太君は雄だから200㎏近くあるのかな、身長も雄は160~180㎝というので、人間と同じ。エサは草の葉や茎、果実、昆虫。肉食はしないのですね。ただじっと動かずに座っているだけなのに、なぜか目が離せなくなってしまう。何か深遠なことを考えていそう。ゴリラって本当に哲学的。離れがたくなってしまったのは私だけではないようで、隣にいた女性は、「もんちゃんごめんね、もう行くね」と何度も繰り返しながらしばらくずーっと居ました。


モンキーゾーンを抜けると中央広場があって、その向こうに鳥類・水系ゾーンがあります。
そこに至る途中にナマケモノのケージがあって、そこを闊歩していたのがカンムリバト。体長70㎝ほどの世界で最も大きいハト。インドネシア生息。本当はナマケモノと共に動物科学館の中にあった熱帯雨林の森にいたのですが、現在科学館がリニューアル工事中で外に出ています。ナマケモノはどこにいるか全然わからなかったけど、しばらくして上の方にいるのを見つけました。
水系ゾーンにいたのは、カリフォルニアアシカとケープペンギン。アシカは地下の水中部分も見られます。海中では時速30㎞で泳ぐとか。スーッと来てスーッと行っちゃう。ペンギンさんはアフリカ南部にいる70㎝ほどのケープペンギン。カンムリバトと同じくらいの大きさなんですね。



鳥たち。茶色いのはイヌワシ。90㎝くらいある。精悍でかっこいい。地上のウサギ、空中のカモなどを捕まえて食べる。
白いのはヘビクイワシ。1mくらいあって翼を広げたら2mもある。サバンナから半砂漠に住み、猛禽類では珍しく地上で生活する。エサは、昆虫、ネズミ、蛇、鳥の卵だって。
その次の写真はハイイロコクジャクのお尻。開きかけたけど開かなかったのでした。
赤いのはショウジョウトキ。生息地は南アメリカ、マングローブや加工の湿地など。小魚やカエル、貝を食べる。トキって日本の国鳥かと思ったけど、違いました。学名がニッポニア日本で日本を象徴する鳥とされることが多いけど、国鳥はキジだそうです。日本のトキはもっと白くて、野生のトキはすでに絶滅したけど、保護活動によって、今佐渡のトキは500羽くらいに増えました。
最後の白い鳥はアフリカヘラサギ。アフリカ中部・南部の湿地や干潟で生活していて肉食。ヘラみたいな嘴を水野中に突っ込んで魚やザリガニを食べます。

さて、ハシビロコウです。
体調1.2mほど。大きいです。それがゆっくりゆっくり歩いていきます。なんか時間の流れが遅くなったみたいな、不思議な空気感をまとっています。なんだ、これ、って感じです。もとはアフリカ東部から中央部の湿地や草原に生息。スーダン、ウガンダ、タンザニア、中央アフリカ、ルワンダ、エチオピア(…これってコーヒーの産地ですよね。)主食は魚。じーっと獲物が浮かんでくるのを待って、パクっと捕まえます。
野生環境で魚を捕まえる時は、魚をめがけて体ごと倒れこむのだそう。ハイギョとか時にはカエルやヘビも食べちゃう、動物園でのエサは生きたコイ。
ハシビロコウは独りでいるのが好き。以前、3羽を同じ部屋に入れたら、お互いの距離を保つために1羽が動くと他のこも動いて、三角形を描いてずーっとぐるぐる回っていたとか。おもしろい!
今動物園には、ジットくんとシズカちゃんという2人がいて、別々のお部屋とスペースを持っていますが、この日はしずかーにお互いに境界の柵のところに行ってしばらく見つめ合っている光景がありました。恋してるのかな。独特の雰囲気に、相当惹きつけられてしまって、ここでもなかなか去りがたく、時間かけちゃいました。



平原ゾーンに入っていきます。入り口にはフラミンゴのケージ。色鮮やかな方がベニイロフラミンゴ。カリブ海やガラパゴスに生息。少し小さめで色も薄い方がチリーフラミンゴ。南米のエクアドルやペルー、アルゼンチンなどの山中の塩水湖に生息。エサはどちらも藻やプランクトン。一緒に居ても大丈夫なのかしら。
平原ゾーンは柵や仕切を少なくしたパノラマ式の展示です。大カンガルーはオーストラリアのタスマニア島から。エサは葉っぱ。じゃれあってました。カンガルーの子供って、体長2cm、体重1gで生まれるんですって、ちっちゃい!それからお母さんのおなかの袋で8か月育てられてから外に出るみたい。
マレーバクはマレーシアやスマトラに生息。夜行性なので寝てるのに近い感じでじっとしてました。夢を食べる獏は中国の空想上の生き物でそれとは別。バクが白黒なのは、お釈迦様がバクの背中に乗った跡が白くなったという言い伝えがあるらしい。実際は薄暗いジャングルでは白黒は保護色として有効な色合いだと言わています。



シマウマは2種類いました。広大な丘陵地帯にはグレービーシマウマ。シマウマの中で最も大きくて350~400㎏もあって体長も2.5~3m、アフリカ・スーダンやケニアに暮らしていて、お腹には縞がありません。1頭寝てたからわかりやすい。もう1種類は別のエリアに居てサバンナシマウマ。アフリカ東部から南部のサバンナ地帯に生息。ひと回り小さい230~320㎏、2~2.4m。写真ではちょっとわかりにくいけどお腹まで縞があります。シマウマというよりロバに近い。ともに草を食べます。
鹿の仲間もいくつか居て、これはシロオリックス。アフリカの半砂漠地帯で草や木を食べて暮らしています。1m以上ある長い角は、雄にも雌にもあるそう。この子は東京の多摩動物園から来たと書いてありました。


エリアの中には鳥たちも歩いてたりします。変ちくりんな鳥はアフリカハゲコウ。ピンクの大きな喉袋を持っています。ハシビロコウの仲間かな。身長も110~140㎝渡大きく、サバンナで死んだ動物やヘビ、ネズミ、魚を食べているそうです。
顔だけ出してるのはハゴロモズル。ハゲコウと身長は同じくらいの大きさ。南アフリカ、ナミビアの高原の草地に生息。昆虫や魚、カエルなどがエサですが、ネズミ退治のためにまかれた毒餌のせいもあって急激に減少して絶滅が危惧されているとありました。かわいい顔してます。
ミーアキャットは何頭かいました。体調は30㎝くらいと小さい。サバンナで昆虫やクモを食べて暮らしています。家族や兄弟で群を作り、一番優位なメスがリーダーになる、雄じゃないのね。





キリンも象もいます。キリンはアフリカのサバンナのアミメキリン。象は東南アジアのアジアゾウ。象って一日の18~20時間食事してるんですって。ずーーっと食べてるんですね。
どちらも草食です。ヤマアラシは寝てました。これはアフリカタテガミヤマアラシ。なんかかわいい。ヤマアラシは球根や木の根、果実を食べるみたい。



ライオンは別々の場所に。1頭は完全に寝てました。その寝顔を見てたら、何やら迫力ある鳴き声が響く。もう1頭のライオンが動き回りながら吠えているのでした。精悍でこれは百獣の王と呼ばれるな、と納得できる声。そっちのライオンを見に行ったけど、お尻しか写真にとれなくて、吠え終わって、さて寝るかというところをパチリ。一応目が開いてる顔です。

ブチハイエナ。何だかハイエナっぽい。アフリカのサバンナで暮らしています。エサは、シマウマなどの草食動物。他の動物の食べ残しを漁るというイメージがありますが、最近の研究では、自分たちで狩りをすることの方が多いということがわかってきました。何だかよくないイメージが付いちゃってて、気の毒ですね。


最後は小動物ゾーンです。


ここはなんといってもレッサーパンダ。シセンレッサーパンダという種類で、中国雲南省・四川省からミヤンマーの山地の森林で、子連れのメス以外は単独で暮らしています。標高1800~4800mですって、びっくりです。食べ物は竹の葉っぱや果実、鳥の卵。パンダみたいですね。後ろ脚でまっすぐ立つことで超有名な風太君は去年の夏20歳を迎えて、年だからあまり外に出てこないとのことで、会えませんでした。人間だったら80歳を超えるおじいちゃん、仕方ないですね。でも、風太君の子孫(?)達がかわいい姿を見せてくれています。
このゾーンには、ハナグマやビーバー、カワウソもいるみたいですが、おうちにいるのかよくわかりませんでした。

千葉市動物公園、サイズ感も、のどかさも、混み具合もちょうどよくて、とてもおすすめです。
半日以上たっぷり楽しんで、千葉の駅ビル・ペリエで食事して帰りました。春のメニュー「ソラマメとスナップエンドウのカーチョエペ」というおつまみがビールによくあって美味。ピザとアヒージョもね。大満足の一日でした。
(2024年3月30日 佳)


2024年2月27日火曜日

ロブスタ・アナエロビック

東ティモールから、ロブスタ種のコーヒーが届きました。

東ティモール・エルメラ県ポニララ村のサココ集落でロブスタ種のコーヒーを生産する青年組合コハル(KOHAR)が、2023年に初の試みとして行ったアナエロビック(嫌気性醗酵)製法の豆です。

え?ロブスタ、そのままは飲めないんじゃないの? なんて思いながら、パルシック・東ティモール事務所の伊藤淳子さんのレポートを読みました。「果実の甘みをしっかりと含んだ、おいしいコーヒーに仕上がっていました。」とあります。俄然興味がわいてきました。飲んでみたい、ということになって、サンプルを送っていただきました。やや小ぶりですが、きれいな豆です。


左側がコハルのロブスタ・アナエロビック。右側がいつも使っているアイナロ県マウベシ郡のCOCAMAU(マウベシ農業協同組合)の生豆。色が違いますね。大きさは、同じスクリーン17ということになっていますが、ロブスタの方が小さいようです。
早速焙煎してみました。うちでは、初めての豆はまず中煎り(シティロースト)にすることが多いので、ロブスタですが中煎りでやってみました。

左がロブスタ、右がいつもの中煎り。焙煎してもやはりロブスタが小さめ、それに少し色も濃い。アナエロビックだからでしょうか。(ロブスタについて、アナエロビックについては後述します。)
飲んでみました。ロブスタだから苦いんだろうなと思っていたのですが、全然そうじゃない。これがロブスタ??全然あり、というのが最初の率直な感想です。ロブスタ種のコーヒーを単体で飲んだのは初めてです。
この写真は、ロブスタの中煎りをいつもやっている松屋式ドリップで淹れたもの。見た目は普通です。確かに香りは強くない。でも一般に言われているような穀物感(麦茶とかトウモロコシ茶みたいとか言われたりする)はそれほどなく、独特の(煮だした漢方薬のような風味=ロブ臭と言われる)苦みも泥臭さも、感じられない。

そもそも、コーヒーには3大原種というのがある。アラビカ種、カネフォラ種(ロブスタ種)、リベリカ種。リベリカ種は生産量が少なく味も劣るため、実質はアラビカとロブスタ。

今世界で飲まれているレギュラーコーヒーはほぼすべてがアラビカ種。売っている豆も喫茶店で飲むコーヒーもみんなアラビカ。ただし、例外はベトナムコーヒーとエスプレッソ。 ベトナムコーヒーはロブスタ種を使い、独特の苦みや泥臭さを消すために、焙煎の段階でバターやニョクマムなどを加え、飲むときには練乳を入れて飲む。ベトナムはブラジルに次いで世界第2位のコーヒー豆輸出国だって知ってましたか?
また、イタリアでは、一部でエスプレッソを淹れる時、15~50%のロブスタ種を入れるそうです。これは消化促進と食後の口内リセットのため。でも日本で飲むエスプレッソは100%アラビカ種だそうです。ロブスタは日本人が嫌うタイプの苦さだと書いてあるものもありました。
ベトナム式コーヒーは、ロブスタの豆をフランス製の「カフェ・フィン」というアルミフィルターを使って濃く抽出するのですが、カフェフィンはフレンチプレスを簡易化したものだそうで、フレンチプレスで淹れるのも良いということ、なのでやってみました。確かにドロッとした濃さみたいなものは出るけどあまりおいしいとは言えない。実験失敗。

なぜベトナムでロブスタかというと、ロブスタは低地でも育てられ、高温多湿に適応し、病害虫にも強いから。ロブスタはラテン語で強靭という意味。1898年にアフリカのコンゴで発見されました。
アラビカ種が1300~1800mの高地でしか育たないのに対して、ロブスタは300~800mで栽培可能です。

では、ロブスタは何に使われているかというと、缶コーヒーやインスタントコーヒーの原料として使われています。最近スーパーやコンビニで売られているコーヒーに、「アラビカ100%」と書かれているのを見かけませんか。裏返すと、そう書かれていないのはロブスタが入っているということ。缶コーヒー、インスタントコーヒーのファンは一定数いて、その理由にいわゆる普通のコーヒーだとシャキッとしないという主張があります。それこそがロブスタのなせる技なのではないかと思います。ロブスタはアラビカよりもカフェインが多く含まれています。さらにクロロゲン酸もアラビカより多い。苦みや刺激はクロロゲン酸の焙煎によって生まれるとされています。だからロブスタの入っているコーヒーの方が覚醒作用があるというのは一理ある気がします。

東ティモールのロブスタに話を戻しましょう。
標高の低いサココのKOHARでは以前からロブスタ種を栽培し「乾燥式」と呼ばれる製法で精製していました。実が小さく、果肉が薄くて硬いロブスタは、収穫後に果肉を取らずそのまま乾燥させるのが主流ですが、KOHARでは2023年アナエロビック製法に挑戦。乾燥前のコーヒーの実を密閉容器に入れ、カビが発生しないようになるべく酸素に触れない状態で数日間醗酵させます。アナエロビック製法は、ロブスタの薄い果肉の糖度を存分に利用して、甘みを豆に移し、コーヒーにフルーティーな味わいを加えることができると言われています。(3枚の写真はパルシックのスタッフレポートより、内容も参考にさせていただきました。)

アナエロビックとは、日本語では嫌気性醗酵。収穫され、未熟豆などを取り除き(ハンドピックして)水で汚れを落とした豆を、乾燥させずに果肉が付いたまま密閉容器に入れて蓋をして、キャップにに小さな穴をあけたペットボトルにつないでガスを抜き、数日間空気に触れないようにして醗酵させます。空気のない環境で活発に活動する微生物(嫌気性の微生物)の力を借りての醗酵させます。

すべてが手作業です。

12日間ほど発酵させ、パイナップルのような甘い香りが漂ってきたら蓋を開けます。
カビも生えずにきれいに醗酵しました。
醗酵の終わった実を、アフリカンベッドと呼ばれる網を張った台に重ならないように広げて、通気性の良い環境で2週間ほど天日干しして完成です。
従来の乾燥式に比べて、甘みをしっかりと含んだ美味しいコーヒーになりました。


コーヒーにおける嫌気性醗酵には、カーボニックマセレーションとアナエロビックファーメンテーションがあります。カーボニックマセレーションはワインの醸造におけるマセラシオン・カルボニックがもとになっています。二酸化炭素が充満したタンクにブドウを入れ嫌気性の微生物の働きによって無酸素状態で醗酵させるマセラシオン・カルボニックは、甘くフルーティーな味を作ることができ、通常より短期間で醸造することができる。ボジョレー・ヌーボーはこの方法で作られています。
それをコーヒーに応用したのがカーボニックマセレーション。タンクに直接二酸化炭素を入れ、温度湿度を徹底管理して甘さや酸味をコントロールする方法。それを簡単にしたのがアナエロビック。直接二酸化炭素は入れず嫌気性微生物によって二酸化炭素を発生させる、比較的手間がかからない方法。今ではスペシャルティコーヒーではスタンダードになりつつあるらしい。一度乾燥してから嫌気性醗酵させたり、嫌気性醗酵を二度繰り返したり、フルーツやワイン酵母など加えて発酵させたり、様々なアナエロビックプロセスが行われています。コーヒーにいかに手をかけて、いかに高いお金を取るか、というような側面も否めません。その辺はちょっとどうかなという部分です。

KOHARから届いたロブスタ・アナエロビック、アラビカ種に少量だけ混ぜてみたらどうかなと、サイフォンでコーヒーを淹れる時に実験してみました。そしたら…おいしい!
ほんのちょっと(22g中 アラビカ17gでロブスタ5g)混ぜただけなのに全然変わりました!ふくらみが出て、コクが増え、奥行きがぐっと深くなりました。なんで??やっぱり適材適所で使うべきなのでしょうね。
今回のサンプルは200g、中煎りにしちゃったので、他の煎り方も(ロブスタの特徴を生かすにはもっと深くいるべきですよね)、また他の方法も、いろいろ試してみたいので、KOHARのロブスタ・アナエロビック、注文してみようということになりました。おいしいブレンド、作れるかもしれません。気長に待っててください。

最後に、ロブスタの可能性について。
以前にも取り上げたコーヒー2050年問題。温暖化と森林伐採によりコーヒーの栽培面積はどんどん狭められ、2050年までに現在のコーヒー産地の5割ほどでコー栽培ができなくなるのではないかと言われています。コーヒーを安定的に市場に供給するため、コーヒー業界で注目されているのが良質のロブスタ。日本ではロブスタは安物、低品質と思われていますが、風味豊かな高品質のロブスタはアラビカ種と同等の値段で取引され、ヨーロッパではロブスタ種のグレーダーテストも行われています。
また、研究によって、アラビカ種とカネフォラ(ロブスタ)ハイブリッド品種の掛け合わせで新しい品種が生み出されてきました。その鍵となっているのがハイブリッドティモール。実はティモールのコーヒーは純粋なアラビカ種ではありません。遥か昔に、なぜかロブスタとアラビカの交配によってできたハイブリッドティモールという品種。現在は正式にアラビカ種として認められていますが、どこかにロブスタが入っている品種です。本来アラビカとロブスタは染色体の数が違うため自然交配することはありません。ですがロブスタの痕跡を持つハイブリットティモールがその橋渡しをしてくれる可能性を秘めています。
ハイブリッドティモールと、ブルボンの突然変異種カトゥーラ種の掛け合わせで生まれたカティモールというハイブリッド種が注目されています。2050年問題解決へとつながる一歩かもしれません。(2023年2月27日 佳)














2024年1月29日月曜日

アールブリュット

 

ここに数冊の本があります。アールブリュットに関する本、しばらくぶりに手に取りました。この本たちを本棚から引っ張り出したのは、1月10日~21日に千葉県立美術館で行われた「千葉アールブリュットセンターうみのもりの玉手箱3」という展覧会に行ってきたから。“うみのもり”は千葉県障害者芸術文化活動支援センター、2021年に設立されました。上総一ノ宮にある、たまあーと創作工房のこまちだたまお先生がセンター長です。

「うみのもりの玉手箱3」には “展覧会・あらゆるひとの表現“ という副題がついていました。テーマはよろこび。
今回は3つの部門での公募展。部門1は絵画・彫刻(立体)・写真・書・クラフトの作品、部門2はうみのもりフラッグの作品、部門3は詩等の作品。部門2と3は普通の展覧会ではなかなかないと思います。2のフラッグは大体が共同作品かな、旗の製作は福祉関係の作業所にお仕事として依頼し縫製してもらったものだそうです。
20枚以上の大きな旗がずらっと並んで迫力あります。それぞれの喜びがはじけています。
部門3の詩の作品は、プリントアウトされた紙が展示されているのと共に映像もありました。詩の朗読、読んでいるのはなんと詩人の大島健夫さんだ!思わずじっくり見入っちゃいました。やっぱり大島さんの朗読いいなぁ、さすがだ、なんて思いながら。他にも、身体表現の舞台を映した映像も、背景のアート作品も含めて面白かったです。

この作品はとても印象に残ったもの。
千葉県立美術館長賞を受賞した作品です。
美術展って、どうしても説明を読んだり、時系列や横のつながりを考えたりしてしまうけど、アールブリュットの展覧会は何も考えず、ただ見て感じて、いいなと思うことができるから大好きです。ただただ己の感性を働かすのみ。

この作品、めちゃくちゃインパクトがありました。
私にとっては、これぞアールブリュットという感じ。
燃えさかる火のような赤が、情熱的な喜びを表現している、あーかなわないなと思います。



この2点のほのぼのとした雰囲気も好きでした。
右側の女の子の表情には、なんだか心惹かれ、虹の下の動物たちは幸せそう。あらゆる人の表現とされているように、勢いに任せて描いたものも、ものすごく緻密に描かれたものも同居しているのがまた面白いところです。

この動物たちもいいですね。
これは千葉県教育長賞を受賞した作品。ま、賞なんてどうでもいいですが。
ダイナミックさが好きです。額縁のシマウマ模様が絶妙です。




立体作品もあります。これはお人形さん。ちょっとわかりにくいけど、とってもかわいいのです。5人並んでます。
これは千葉テレビの賞を受賞した作品。(いっそ賞なんて作らない方がいいかもと思う私もいます。)

こちらは陶芸作品。色とりどりの魚たち。こまちだ先生によると、千葉の特別支援学校では、せっかく作陶窯を持っているのに、壊れていたり、指導者がいなかったりして使えないところが多々あるのだとか。何とか使えるようにしてほしいものです。
東京の杉並区に都内では珍しい区立の養護学校があって、年に一度のバザーの時、授業で造った子供たちの作品、お皿や器、植木鉢などを販売していたりします。(もちろんお菓子や食品、布巾とかポーチとかいろいろあって楽しい、子供たちが育てた花もある、値段も安いから保護者以外の近所の方も楽しみにしてる。)

これは紙に字を書き連ねたものを透明のボードに張って吊り下げた作品。この作品のみ今回の展示ではなく、9月に茂原市美術館で行われたたまアート・コバルト教室の展覧会の時のものです。今回の県立美術館でも展示されていましたが、茂原の時の窓の外に木が見える風景の中の展示がステキだったので、この写真を乗せてみました。
このアイデアもいいですねぇ。
文字や漢字に拘って書き続ける方もいて、なんだか不思議。

これは細く切った紙を手で丸めた作品です。こまちだ先生は、作品を展示することについてのワークショップを何度も行っています。そうか、こういう展示の仕方でこんなに素敵に見えるんだ、と目から鱗。昔こういう知識があれば、描いた絵や手芸作品を素敵な作品に仕上げてご家族に渡してあげられたのに。

何か一つ切り抜いたモチーフを(例えば蝶々)画面の中に配置して、その周りに自由に線を書いたり色を塗ったりした作品は、これだと形を書いたりするのが苦手な人でもちゃんと表現できるからいいなと思いました。(それに似たことはやったことあるけれど、あくまで時間を費やすためのもので、作品にしようなんて考えもしませんでした。)

他にもたくさん魅力的な作品が並んでいます。
これはなんとなくすごーく好きだった作品。
何かを感じます。それで充分。

とあるアールブリュットの本に、「語るのはやめましょう。感じればいいのだから。」みたいなことが書いてありました。


私とアールブリュットとの出会いはもう15年以上前のこと。当時、とある知的障害児の放課後クラブでスタッフをしていました。
その頃エイブルアートという活動がり、中野の小さな会場で街角美術館みたいな巡回企画があって見に行きました。
そこで出遭ったのが 澤田真一さんの作品です。冒頭の右側の本「アウトサイダーアートの作家たち」の表紙は、澤田さんがトゲトゲさんを製作している指先のシルエット。左側の本「アールブリュット・ジャポネ」の中にも澤田さんの作品は掲載されています。
私、トゲトゲさんに一目惚れしました。

アール・ブリュットとはフランス語で「生(き)の芸術」、フランスの画家ジャン・デュビュッフェが命名しました。正規の美術教育を受けず、人間の生の根源からやむにやまれぬ衝動によってあふれ出してきた芸術作品のこと。アウトサイダー・アートとも呼ばれます。アウトサイダー・アートは美術史家のロジャー・カーディナルが定式化した言葉ですが、彼はその時カミュの「異邦人」を参照したそうです。異邦人は英語でアウトサイダー。アールブリュットとはちょっとニュアンスが違いますね。

欧米では1980年代以降、アールブリュットの作品は高く評価されるようになっていきます。そんな中、2010年3月~2011年1月に、パリのアル・サン・ピエール美術館で「アールブリュット・ジャポネ」展が開催されました。日本では、一般の人には障害者施設で行われている創作活動としか認識されていなかった頃、もしかしたらそれすら知らない人が多かった頃に、パリではちゃんと作家として扱われた製作者たちが、展覧会のオープニングに参加していたなんて、びっくりです。展覧会は大成功、12万人もの人が訪れました。
その後、日本でも展覧会が開催され、主だった作家たちがテレビに出演したりしました。私も美術番組で見た記憶があります。

アールブリュットに惹かれて、映像や本を探したりして、ぜひ行きたいと思ったのが滋賀県近江八幡市にある「ボーダーレス・アートミュージアムNO-MA」。日本の障害者施設の草分けでもある滋賀県に2004年に設立されました。障害者とアートをつなぐ展示スペースとして、あらゆる境界を越えた新しい芸術文化の交流を目指して活動しています。アールブリュット・ジャポネ展も、パリの美術館とNOMAの交流事業によるもの、日本側の作業はNOMAが担当したそうです。滋賀にこんなところがあるなんて、全然知りませんでした。すごい!
やっとNPMAに行けたのは2017年の2月、雪の日でした。古民家の一軒家。絵画、書や文字の作品、造形作品が並べられ、蔵にも陶芸作品が置かれています。何だかほっとする空間、居心地がよくてずっと居たくなる。でも残念ながらこの日は澤田さんの作品はなくてポストカードだけ買ってきました。(NOMAの写真の前がその時買ったポストカードの写真です)

澤田真一さんのトゲトゲさんと再会できたのは、2020年8月、東京芸大美術館で行われた「特別展・あるがままのアートー人知れず表現し続ける者たちー」の会場でした。
コロナの真っただ中で、オンラインでロボットを遠隔操作するというロボット鑑賞を申し込み、それはやったけれど、やっぱり直接自分の眼で見たいよね、という結論に達して、夫と2人で出掛けて行きました。この展覧会は芸大とNHKの共同企画。NHKに「no art, no life」というミニ番組があるのですが、その映像を流してアーティストたちの紹介もしつつ、作品展示しています。参加の作家さんは、今となってはアールブリュット界のビッグネームと言うべき人たちがずらり。
魲 万里絵さん、川上健次さん、松本寛傭さん、戸来貴則さん、山際正巳さん(正巳地蔵という小さなかわいいお地蔵さんを何百何千と作り続けている)・・いずれも世界に知られたアーティスト。わくわくします。興味があったらネットで検索してみてください。
そして、いました!トゲトゲさん。8人もいる!それまで本や写真で見てたのとは少し変化(進化?)して、でもあのトゲトゲさんでもあって、思わずにんまりしちゃいました。嬉しい。澤田さんは言葉を発することはほとんどなく、作品に名前を付けることもしません。だから全部無題。生み出した生き物たちに、しなやかな指で黙々と棘を植え付けていきます。彼は何の迷いもなく淡々と、時に微笑みながら棘を植えていき、完成すると彼らは窯で3日間焼かれ、自然と偶然の炎の力で赤茶色の鎧のような衣を纏う。
彼の生き物たち、「トゲトゲしているのに、なんともユーモラスな愛らしさをたたえ、その不可思議な魅力で彼は多くのファンを持つ。」(角川学芸出版発行「アウトサイダーアートの作家たち」より)まさにそう、私も彼の生き物に魅せられた一人です。今度いつトゲトゲさんたちに会えるかなぁ、楽しみにしてアールブリュットの展覧会を待ちましょう。

久しぶりに本を手に取り、パラパラ見るはずが、いつしかしっかり読んで、じっくり見入って、時の経つのを忘れてしまいました。丸ごと全部、どのページを開いても面白い。アールブリュット凄いです!ぜひ触れて、感じてみてください。

最後に。
「うみのもりの玉手箱3」に行ったとき、同時開催のメイン企画「テオ・ヤンセン展」も見てきました。こっちもとってもおもしろかった。風力で動くストラビンビースト(砂浜の生物という意味だそうです)という機械の展示とデモンストレーション、映像もあり。壮大なおもちゃみたいな機械。これも一種のアウトサイダーアートと言えるかもと思いました。千葉県立美術館、楽しい一日でした。

2024年が始まり、早1か月。年明け早々地震や事故で不安な幕開けでしたが、この先、誰もが、少しでも穏やかな日を送れるように願ってやみません。(2024年1月29日 水野佳)

*参考 千葉県障碍者芸術文化活動支援センター うみのもり https://uminomori.net/
            ボーダーレス・アートミュージアムNOMA https://no-ma.jp
    「アールブリュット・ジャポネ」発行:現代企画室 2010年
    「アウトサイダー・アートの作家たち」発行:株式会社角川学芸出版 2010年
    「福祉×表現×美術×魂」発行:3331 Arts Chiyoda 2013年
*「no art, no life」は主にNHKのEテレ・日曜日の朝の日曜美術館の直前8:55~の5分間と水曜日の午後11:55~放送されています。ナレーションは内田也哉子。















































千葉市動物公園

千葉市動物公園へ行ってきました!千葉に引っ越してちょっと経った頃に一度行ったきりで、久々の訪問です。 千葉市動物公園と言ったら、ハシビロコウとレッサーパンダの風太君が有名。ですが、前回はそのどちらにもあってないみたいで、なんでかな??と思いながら、今回の訪問。動物園ってなんておも...