2021年3月29日月曜日

読書の春

 

この春、勢いついて本を読んでいます。

 

きっかけは、詩人岬多可子さんの大岡信賞の受賞でした。久しぶりに岬さんの詩集を読もうと手に取って、受賞作「明るい水になるよう(書肆山田)を読みながら、ふとあの震災の時の詩を読みたいなと思ったのでした

岬さんとは、2年前、炎の雫でポエトリーリーディングのイベントをやった時に知り合いました。「この人は本物の詩人だ」と感じたことを覚えています。その時、掌詩集という小さな冊子を置いていかれました。その中の「白い闇のほうへ」という詩に心惹かれました。それは東日本大震災の後に詩人たちによって出された「ろうそくの炎がささやく言葉」(勁草書房)という詩集にも収められた詩でした。その詩集を読み返したのは、ちょうど3・11の頃。そしたら、池澤夏樹「春を恨んだりはしない」(中央公論社)のことを思い出しました。当時、まっすぐに入ってきて心に突き刺さった一冊でした。それなのにすっかり忘れていて、どうしてももう一度読まなくちゃと思って手に入れました。この本、震災や津波の被害と共に原発事故のことも取り上げて、池澤さんなりの視点で考察しています。これを読んでいるうちに、また読み返したい本が出てきました。

 

それが「レベル7~福島原発事故隠された真実」(幻冬舎)、東京新聞の取材班が原発事故を追ったもの。これも当時読んで相当ショックでした。今また読みたい、読まねばと思い、ついでに「メルトダウン」(大鹿靖明著・講談社)菅直人の「東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと」(幻冬舎新書)も購入。勢いづいて読みました。

多くは語りませんが、改めて、あの時自民党政権でなくてよかった、総理大臣が菅直人でよかった、と心から思います。自民党だったら、東電に忖度してもたもたしているうちに日本は悲惨なことになっていたでしょうね。

震災による物理的な破壊は復興できるけど、原発はそんなに簡単なことじゃない。除染も廃炉も手を付けることすらできず、何一つ進んでいない、放置し続けている現状、この先どのくらい時間がかかるのか見当さえもつかないという現実と、なぜかそれがほとんど話題にされない状況、人間の力ではどうにもできないものに手を出してしまったこと、ちゃんと見て、考えなくちゃいけない。

 

その一方で、どうしても欲しい本があって、この際だから、ついでに買っちゃおうかと手に入れたのが、タラブックスの本。先月のブログに書いた「夜の木」は無理だったけど、タラブックスの手作り絵本「インドのけもの」(エクスナレッジ)と、タラブックスの成り立ちを日本人が取材して書いた「タラブックス」(玄光社)。副題は「インドのちいさな出版社まっすぐに本を作る」、この本を読んで、タラブックスのあり方は一つの理想形だと思いました。池澤夏樹の言うところの「集中と高密度と効率追求ばかりを求めない分散型の文明」への挑戦であり、その成功例だと思えます。池澤は原発事故後の日本が、そういう方向へ変化することを期待していると言っているのだけれど、私の中では「春を恨んだりしない」と「タラブックス」が繋がってしまいました。すべての会社がタラブックスみたいな姿勢で誠実に丁寧にモノづくりをしてくれたら世界は変わるのに。

 

ついでに…シリーズ、草間彌生と岡本太郎も。

草間彌生は、最近なぜかとっても好きになりました。昔は水玉の人としか思ってなかったんだけど。大地の芸術祭~越後妻有アートトリエンナーレに行ったとき、松代農舞台というミュージアムの外に「花咲ける妻有」という屋外作品があり、それがあまりにも特別な存在間で、以来気になりだしました。去年のコロナ自粛の時の草間の全世界へのメッセージにも感動して、コロナが収まったら松本市美術館に行くと決めてたのに、実現しないまま。美術館はこの4月からリニューアルのための休館に入ってしまいます。残念!

岡本太郎も昔から気になる存在。青山の岡本太郎記念館は何回か行ったし、渋谷の駅の巨大壁画「明日の神話」はわざわざ見に行って、どうして誰も足を止めないんだろうと思いながらずーっと見てたし、千葉劇場でドキュメンタリー映画「太陽の塔」も見たし。本物の太陽の塔にはまだ行けてない。ネット予約の登録だけはしてあるけど、いつ行けるんでしょうか。

 

ここまで、このところ読んだ本、入手した本のこと書いてきましたが、うちの本棚には結構いろんな本があります。時々眺めているのは、アールブリュット・アウトサイダーアートの本。右の写真の本の表紙になっているのは澤田真一さんの作品で、とげとげのある不思議な生物。私はこれが大好き。彼は日本のアウトサイダーアートでは有名人です。なんだか癒されるんだなぁ。

名嘉睦念の版画集や詩画集、絵本もあります。睦念さんを知ったのは、「ガイアシンフォニー・地球交響曲」というドキュメンタリー映画でした。それぞれストリーがあるものです。

 

絵本もいろいろあります。まじめに読んで考える本に疲れると、絵本を見ます。

お気にいりは、五味太郎。「はやくあいたいな」という絵本は、思い出もあり個人的にお気に入り。ユリ・シュルビッツの「よあけ」と言う絵本はことばはほんの少しだけ、すごく美しい。そんなこんないろいろありますが、それはまたの機会に。

 

読書の春のきっかけは岬多可子さんだと書きましたが、実はその前段があります。

それは「やまゆり園事件」(神奈川新聞取材班・幻冬舎)という本。昨年の秋、長い時間をかけて読みました。

言うまでもなく、相模原のやまゆり園で障害ある人がたくさん殺されたり傷つけられたりした事件でです。この本は辛くて読み進められなくて、少しずつ読みました。それを読み終わったことが、私の中で、ちゃんとした本をちゃんと読もうという思いにつながったのだと感じています。

 

この事件の被害者の中で、唯一実名と顔を出して発信しているのが尾野一矢さんとご家族です。彼らの事件後の生活が、4月に上映会をすることになった「道草」という映画の中に出てきます。

重い知的障害、自閉や行動障害を持つ人の一人暮らしとその支援者たちを追ったドキュメンタリーですが、東京都内の話です。

 

ドキュメンタリー映画「道草」、ぜひ見てください。きっと何かが見つかります。

 

「道草」上映会は、4月10日(土)14:00、11日(日)10:30と14:00 の3回です。

ご参加をお待ちしています。 (3月29日 佳)


新生・炎の雫

「炎の雫」新しくなりました。 東ティモールコーヒーから自家焙煎コーヒーへ。コーヒーの銘柄を増やして、カフェでも飲めるし、豆の販売でもご購入いただけるようになりました。 ラインナップに加わったのは、タンザニア・コロンビア・メキシコ・グァテマラ・エチオピアシダモの5種類。 また、焙煎...