2020年3月30日月曜日

春なのに…


春なのに、桜も咲いたのに、

心晴れません。

 

何という寒さでしょう。昨日東京は大雪、ここいすみでは冷たい雨と強い北風。3月も終わりだというのに。

 

ここ12か月、ずっとすっきりした気持ちになれないまま生活しているような気がします。

 

中国の武漢で謎の肺炎で人がたくさん死んでいるらしい、なんて言ってた頃はまだまだ対岸の火事でした。横浜の沖で豪華クルーズ船が立ち往生している頃も、大変ねと言いながらテレビ見てました。

 

 

 

そのうち終るだろうなんて言ってられなくなったのは、2月の終わりころ。3月の予定をキャンセルしようかどうしようかと考え始めました。

3月に私は、定期的に続けている知的障害を持つ若者たちとごはんを作って食べる会を予定していました。その会では、隣にピッタリくっついて、時には手を取って、一緒にお料理を作ります。濃厚接触とかリスクなんて言われだした頃で、ごはんの会はまさに濃厚接触だし、食べ物を扱うし、スタッフは60歳以上が中心だし、参加者のみんなは障害があるということそのものがリスクだし、電車やバスに乗って集まってくるし、数え上げたらきりがない。時を同じくして、杉並区で感染者が出ました。予定していた会場のすぐそばにある病院で。これはもう中止するしかないと決断、「322日のごはんの会は中止します」と参加者にメールしました。

 

同じ杉並区高円寺の稲生座で、31日に予定していた水野のライブも、あるミュージシャンがライブの中止を告知したのを見て、悩んだ末に延期にしました。

 

ただし、その前日、229日にここ炎の雫で予定していた「やなぎ・水野たかしライブ」は、濃厚接触にはならないからいいかな、と考え、テーブルの配置を少し変え、アルコール消毒液を用意して、やることにしました。やなぎさんの主張のあるフォークソングと震災の時のことを交えた話(彼は岩手に家があります)、とてもよかった!! お客様は数人でしたがしっかりと聞いて下さって、いいライブだったことをご報告しておきます。

 

それから、いつも通りの営業を続けました。いつもたくさんの方が来る店ではないので、いつもと同じ、むしろいつもとは違う方が時々来たりします。炎の雫のことを高円寺で聞いてきたという方が来たり、若い人も何人か、カップルや、サーファーだという人や、明日からインドに行くはずだったのにビザが停止になってしまっていすみの友達のところに来たという若者も、太東海岸でコーヒーを飲むために来たという人がいたり、なんだか不思議な日々です。

 

近所のパン屋さんはいつもより混んでるし、100均もスーパーもなんとなく人が多い。ほとんど誰にも会わない神社でも、若いカップルや家族連れを見かけたりして、みんな行くところに困ってるのかなと思ったりしました。

 

そんなこんなですが、心のどこかに引っかかるものがある。もしかして感染してたら誰かに移してしまうかもしれない、と思ったら、遠出するのも憚られます。大好きな睦沢のパン屋さんときわぎ工舎に行きたいなと思っても、ときわぎさんは障害のある人たちが働いていることを考えると、うかつには行けません。見たい映画もあるけれど、今はやめとこうとか。2月の終わりに二人目の孫が産まれましたが、まだ会いに行っていないし。そういう小さなことがどんどんつみかさなって、ストレスになっていきます。

 

人間って変なものですね、めったに出掛けない日常を送っているとしても、おうちにいてくださいと言われたら、出かけたくなる。行っちゃだめとなると行きたくなります。困ったものです。毎日毎日ニュース見たってどうなるものでもないと思いつつ、見続けてしまう。目が離せないのです。これも困ったものです。

 

新型コロナウイルスの話。

 

そもそもの疑問は、なんでこんなに感染が拡大するのかと、なんでどんどん人が死ぬのかということ。

始めはインフルエンザと同じことでしょ、と思っていました。アメリカではインフルエンザで毎年何万人も死んでる、日本だって相当数の人が死んでる、だからコロナだって、と思っていました。

あれよあれよといううちに、感染の中心は中国からイタリアへ、そしてヨーロッパ各国、アメリカへ。世界的大流行・パンデミックと呼ばれるようになって、でも日本では感染者も死者も、ちょとずつ増えてるものの欧米ほどではない。これはいったい何?

 

小さな小さなウイルスが、細胞が他の細胞との情報伝達に使うカギのセンサーを使って細胞の中に入り込む。ウイルスは、細胞内にある増殖のための設計図と工場を利用して、大増殖する。それから細胞の外へ出て、肺と気管でどんどん増えて、終には取り付いた人の命を脅かす。また咳やくしゃみによって空気中に出たウイルスは、新しい取り付き先を求めて、物体の上や空気中に残存し、目、鼻、口から新しい体に移っていく。その締め切りまでの時間は意外と長い。例えば、空気中では3時間、段ボールの上では1日、金属やプラスチックでは長いと3日くらい生きていて、取り付く相手が来るのを待っている。なるほど、だからどんどん拡大するのかと納得。

 

新型コロナの場合、感染してから症状が出るまで5~6日、長い人では2~3週間かかり、症状が出る前からウイルスを俳出している場合もあるらしい。ウイルスの排出期間は約20日間(または死亡するまで!)、長いと37日も続いた例もあるという。さらに問題なのは、無症状病原体保持者の存在。症状がない人がウイルスを排出しながら動くことで、感染は拡張していく。無症状病原体保持者はウイルスを一月もまき散らし続けるわけで、それではどんどん感染が拡大しても不思議はない。潜伏期間を考えると、そろそろ感染爆発が起こるかもと考えたりします。恐ろしいです。

 

ちなみに、インフルエンザでは、感染してから発症まで3日ほど、症状が現れてから最初の2日間にウイルス排出が起こり、それが最大1週間続く。つまり症状が出てから1週間ちょっとすれば、もう感染しないことになる。だから感染者が出てから学級閉鎖をするのでもある程度の効果はあり、熱が下がって1週間したらもう学校行っても大丈夫と証明されるわけですね。

 

また、多くの人への感染を広める人とそうでない人がいるらしい。それをスプレッダーというけど、どんな人がスプレッダーになるのかはまだ不明という。なんとなく、元気な無症状保菌者ほど多くの人を感染させているような気がするけど、気のせいでしょうか。

 

感染のメカニズムについては、ちょっとだけ理解しました。

次の疑問は、なんでこんなに人が死ぬのか、ということ。これがわからない。

そもそもコロナウイルスというのは前から存在していて、一般の風邪の原因の一つでもあったらしい。子供は近縁のコロナウイルスを原因とする風邪にかかりやすくて、その免疫を持っている可能性があるから子供はかかりにくいとか、子供の免疫系は常に警戒状態にあり、大人より素早く戦うからとか、いろんな説があるようですが、実際のところはわからない。最近では子供の重症化の例も出ているし。イタリアやアメリカの死者の多さは、医療体制の問題も大きいとは思うけど、まだ大流行する前から、病状が悪化したらあっという間に亡くなってしまう例が多発して、専門家も驚いていたみたいです。だって、途上国ならまだしも、アメリカなんて、最高峰の医療水準のある国ですよ、いったいどうなっているのか、未だ疑問のままです。どなたか教えてください。

 

328日の夜、ショッキングなニュースが飛び込んできました。千葉の知的障害者入所施設での集団感染です。職員と施設利用者58人が新型コロナウイルスに感染してしまいました。恐れていたことが起きてしまったのです。私のごはんの会のメンバーたち、入所はせずに在宅で作業所に通っていますが、知的障害者です。他人事ではありません。知的障害のある人は、自閉傾向があったり、パニックを起こしたり、時に自傷他害もあったりします。いつでも同じ生活パターンを好み、予定の変更は苦手です。そんな人たちが、予想外の状況に置かれ、検査や入院や隔離生活を送らなければならないなんて、どんなに大変か、わかるだけに心が痛くなります。幸い、県は感染した職員さんは入院させたものの、ほとんどの利用者さんたちは施設にとどまって医療スタッフを派遣するという対応にするようです。それでも、いつものスタッフがいないことで不安になるでしょうし、自傷行為やパニックなどを起こしてしまうかもしれない。施設の看護婦さんは、慣れている人でないと駄目な方もいると話していました。彼らが少しでも安心して生活できることを願ってやみません。

 

ですが、障害を持つ人たちは本当に大変なことになっているとき、それを感じ取る能力を持っています。9年前の東日本大震災の時、私は中野の特別支援学校にいました。放課後クラブの仕事をしていて、学校にお迎えに行ったちょうどその時、大きな揺れが来て、学校の指示で体育館での待機となりました。生徒やお迎えの方、教職員、相当な数の人が体育館に入って、これは混乱するなと覚悟しました。重度の自閉症の人もたくさんいたのです。ところが誰一人騒ぎません。声を出す、飛び跳ねる、走り回る、パニックになって暴れる、普段そんな人たちが、じっと座って待っていました。ほんの数人が先生に連れられて静かに出て行っただけでした。それを目の当たりにして、私は、ああ彼らはわかっているんだと思いました。そんなことを思い出し、きっと大丈夫、と信じています。

感染は施設全体に広がり、90人近くになってしまいました。利用者の方で入院が必要な人も出てしまったようです。誰も重症化せず、早く平穏な日々に戻ることができるように、祈るような気持ちです。

 

目に見えない、匂いもしない、小さな小さなウイルスという名の魔物に、人間はどう対していけばいいのか、まだまだ考え続けなければならないと思います。

 

その昔、江戸川乱歩のTVドラマのオープニングで「町をを歩いていてこんなことを考えたことがありませんか?…あなたの隣にいる人は殺人者かもしれない…」というメッセージがあったのを妙に覚えているのですが、今は隣にいるのは感染者かもしれない、とつい考えてしまいます。疲れますね、それがいつまで続くのかわからないから、尚疲れます。仕方がないと思いますが。

感染しない、人に感染させない、そのためにどうすればいいか、考えつつ、何とか乗り切っていきましょう。

 

これ以上ひどくなりませんように、心穏やかに暮らせる当たり前の日常が戻りますように、

春なのに心晴れず、ではなく、春だから心浮き立つ、と言える日が早く来ますように、

祈るしかありません。

 

みなさま、ご自愛ください。(2020330日 佳)

 

写真は、うちからワンブロックの田んぼの脇ににある桜です。昨日の雨風に耐えて満開。そういえば、うちの山桜も今年はたくさん咲きました。今までで一番なくらい。せめて春の気分をね。

 

 

*参考

 

新妻免疫塾 免疫学研究者によるやさしいコロナウイルス解説①~⑧

https://www.youtube.com/watch?v=yM9wCG23iQ0

ユーチューブで新妻免疫塾と検索してください。‘’

新妻耕太さんは、スタンフォード大学で免疫学の研究をしています。上総一ノ宮にある“たまアート創作工房”のこまちだたまおさんの教え子です。小中学生にもわかりやすい内容、興味がある方、ご一覧を。

 

MIT Technology Reviw

ニューズライン 新型コロナとインフルの似ているところ、違うところ=WHO報告

technologyreviw.jp

 

 

新生・炎の雫

「炎の雫」新しくなりました。 東ティモールコーヒーから自家焙煎コーヒーへ。コーヒーの銘柄を増やして、カフェでも飲めるし、豆の販売でもご購入いただけるようになりました。 ラインナップに加わったのは、タンザニア・コロンビア・メキシコ・グァテマラ・エチオピアシダモの5種類。 また、焙煎...