2021年9月24日金曜日

「夜の木」とタラブックス

念願の「夜の木」、入手しました!

とてもうれしい!

インドの小さな出版社、タラブックスのハンドメイドの絵本です。麻や綿の古布から手漉きで作られた紙に、手作業によるシルクスクリーン印刷し、手製本、すべて手で作られています。

インクのにおいに土のにおいが混じったような、独特のにおいがあります。分厚い紙の手触りは、ざらついていてでもふわふわしているような、心地よい触感。

私の手元に届いたものは、1746 / 3000 です。


ページをめくると幻想的な木々が描かれています。インドのゴント族の3人のアーティストによる美しく、かつ独創的な絵です。添えられている言葉は、長いのも短いのもあります。神話や民話を下敷きにして、木々に宿る精霊を描いています。宿る、というより、木そのものが聖なる存在であったり、神の化身として描かれたり、かなり自由です。木の枝が蛇だったり、木の実が小鳥だったり、孔雀になって真っ赤に燃え上がったり。また、ユーモラスなお話あり、不思議なお話あり。ずーっと眺めていたい、想像の世界で遊んでいたい、と思わせてくれる本です。

「夜の木」の存在は知ってはいたのですが、本気で欲しいと思ったのは、2月にミティラー美術館展でゴント画を見てからです。会場の一部にゴント画のコーナーがあって、「虎は虎に見えない、面白い」なんてブログに書いたのですが、インドアートをネットで検索していて「夜の木」についての記事を読み、超有名になっていることを知りました。某テレビ局の“セカほし“という番組で取り上げられてブームになったようです。(その時のテーマは紙だったみたいですが) ネットで探してみると、まったくない、どこを見ても売り切れ。アマゾンやメルカリでは軒並み1万円を超える値段がついている。そういう買い方はしたくないので、しばらく待つことにしました。

代わりに、タラブックスの別の手作り絵本はないかなと思って見たら、ありました。それが「インドのけもの」という本です。子ども向けの動物図鑑みたいなもの。
もともと、タラブックスは、子どもに読ませたい本がインドにはないということで始まった出版社です。絵本という表現形態は、インドでは一般的でなく、今でも絵本ってどうやって読むの?という大人がいるそうです。
いろんな動物がでてきますが…実際とはだいぶ違うものもけっこうある、図鑑じゃないですね。でも子供の想像力を育むには、こっちの方がいいかも。とっても面白いです。

この"とら"、私がミティラー美術館展で見たのと近いかな。"しか"の角が木になっていたり、画面いっぱいにクネクネ書かれたながーい"へび"に目が10こあったり、"ありくい"は宮西達也の狼を彷彿とさせるし、"いぬ"なんて全然犬に見えない。おもしろいです。

この時、一緒に買ったのがこの本です。
「タラブック インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる」

タラとはサンスクリット語で星。1995年に、2人の女性によってに作られました。その年、フランクフルトの絵本市で、オフセット印刷が間に合わなくて、シルクスクリーンで手刷りしてもらった2ページのサンプルを持っていき、それをカナダの出版社が8000部注文すると言ったことが、タラブックスのハンドメイド絵本の始まり、偶然の産物でした。

タラブックスの本作りは独特。トライバルアート(少数民族のアート)を取り入れ、作家と対話しながら本を作り上げていく。大切にしているのは、価値観や主張と本の美しさのバランス。そしてスモールビジネスであり続けること。そうすれば全員とコミュニケーションをとることができる。今、人はせっかちだけれど、在庫がなければ待ってくださいと伝え、私たちはゆっくりやっているということを理解してもらう、と言います。このあたりのことは、カンタ!ティモールの広田奈津子監督の話したダンパーの話に通じるものがあります。とても興味深い本です。
(この本が出版された2017年の時点で、タラブックスのビルの中で働いている人は17人、印刷工房などもあり、40の家族に対する責任を負っていると代表ギータは述べています)
この本を読んだから「夜の木」は次刷を待とうと思ったのかもしれません。

日本で「夜の木」を取り扱っているのは、タムラ堂という吉祥寺にある小さな出版社です。ボローニャのチルドレンズブックフェアで「夜の木」と出会い、魅せられて、当時勤めていた出版社をやめて小さな出版社を起ち上げ、そこで出版することになりました。インドで出版されてから5年後でした。初めてタラブックスを訪ねたときは、作家が滞在するゲストルームがあり、イベントやワークショップをやっていたりして、出版社というより活動体という感じだったと言います。
良いですねぇ。

タムラ堂のFBをフォローしていたら、「太陽と月」第3刷が4月に出るというお知らせがありました。それで先にそっちを買うことにしました。タムラ堂は卸で直接は買えないことがわかり、ネットで検索。扱っているのは少数の個性的な本屋さん、その中から、ひときわ変わった本を扱っている書店を選んで予約し、入手しました。10人のアーティストによるインド民族の物語、という副題がついていて、見開き2ページに片っぽが太陽、反対側が月、言葉は少しだけ添えられている。もちろんハンドメイドで、すごく素敵です。時々手に取り、手触りを楽しみ、ページを繰ってそれぞれ個性的な太陽と月を眺めています。

そんな経緯があって、ついにタムラ堂から「夜の木」第10刷の発売予告。当初夏にという話でしたが、コロナ禍で遅れが。5月にインドの感染爆発、ロックダウンとなり、製本工房のスタッフにも感染者が出て工場閉鎖になり、工房責任者から作業の遅れの謝罪の連絡があったといいます。そんな中でも、工房で共同生活をしながら製作を続けてくれて、7月の末に見本版が届き、9月末に発売できそうとのこと。それを読んで、「太陽と月」を買った出版社のHPを見ると、予約受付中。予約して9月20日に手元に届きました。
待つというこで、喜びが大きくなったような気がします。「太陽と月」ではそれほど感じられなかったにおい、「夜の木」の特別感を増しています。
タラブックスの皆さんに感謝。大切にします!

最後に…

9月18日、茂原のアスモ劇場でのアコースティックナイト・水野たかしライブ。
本気のライブ1年以上ぶりでした。
私もコーラスと手話でちょっとだけ参加しました。

(写真はアスモ劇場支配人・木下明彦氏のFacebookより))

この日のライブ、私が言うのも何ですが、すごくよかった!!
水野たかしの歌、やっぱりいいなあ、としみじみ思いました。

コロナ禍、もう1年半を超えました。ライブ・イベントままならず、上映会ですらライブをつけられない状況、早く終わってほしものです。
みなさんどうぞお元気で、心置きなく集える時を待ちましょう。(2021年9月24日 佳)







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