2023年1月28日土曜日

那古船形へ (付:千手観音について)

寒いですね~。昨夜雪が降りました。2日前は水道が凍ってお湯が出なくなったし。房総なのに。10年に一度の寒波はまだ続くようです。

折に触れて、千葉の隠れた名所を探して、いいかもと思ったら出掛けていきます。最近見つけたのが那古寺、ちょっと遅めの初詣を兼ねて行ってきました。

外房線に乗って安房鴨川から内房線に乗り継ぎ、館山の一つ先が那古船形です。太東から2時間半かかりました。東京行くより遠い。降りてみたらスイカのチャージもできない完全な無人駅でした。

駅から歩いて15分ほど、補陀落山那古寺に到着。通称那古観音。坂東三十三観音巡礼の三十三番目の結願寺です。奈良時代の養老元年(717年)、行基という高僧が天皇の病気平癒を祈願して開いたと伝えられています。

宗派は真言宗。千葉では日蓮宗のお寺が多いけど、ここは日蓮宗が成立するずっと前からある、古くて由緒あるお寺です。

本坊のところから、登っていくと山門に着きます。石段と緩やかな坂道と2つのルート。

山門(仁王門)にも、周りの木々にも風格があります。俗世界を離れて、天上の世界へ向かう道。

どんな宗教でも、神様や仏様は天上の世界にいると考え、人は天の世界に憧れてそこへ近づきたいと願う。だからお寺も神社も教会も、高いところに作られる。


仁王門の両側には金剛力士像。この2つの像、いいですねぇ。仏像大好きな私は嬉しくなってしまいます。

金剛力士像の役割はお寺を守ること。門の左右に阿形・吽形の一対で設置されています。神社の狛犬も沖縄のシーサーもみんな阿吽で一対。「あ・うん」は、物事の始まりと終わり、宇宙の始まりと終わりを象徴的に表すと考えられています。

本堂(観音堂)は門の奥にあります。現在の観音堂は江戸時代中期(1758年)に再建されたもの。
内部は内陣と外陣に分かれています。訪れた日はちょうど月に一度の護摩法要の日で、内陣の近くでお参りできました。
境内では観音市が開かれ、にぎわっています。市というよりフリマに近く、現役のお寺なんだなぁと思いました。

ご本尊の千手観音は秘仏です。
内陣のお厨子の中にいらっしゃいます。ご本尊の両脇には、不動明王と地蔵菩薩、千手三尊形式で安置されています。
奈良時代に行基が海から拾った霊木に千手観音を刻んで本尊としたと伝えられています。現在のご本尊は高さ149センチの一木造りで平安後期の作の藤原仏。(この写真は参道にあった看板の写真を撮ったもの、内陣の閉ざされたお厨子の前には、御前立観音がいらっしゃいます。それも十分素敵ですが、本物見たいな)

丑年と午年の4月頃に御開帳されるそうです。午年は3年後ですね、その時また訪れたいものです。

私は仏像大好き、中でも十一面観音とか千手観音とか、異形のものになぜか心惹かれる傾向があります。千手観音は本当は「十一面千手千眼観音」、お顔が十一、手が千本、その手には一つずつ目がついているのが基本(?)ですが、一面のものや二十面のものもあります。一般的には十一面四十二臂のものが多いようです。四十二本の手は、胸の前で合掌する二本の手を除いた40本の手が、それぞれ25の世界(仏教の三界二十五有)を救うものであり、25×40=1000と考えられています。千本の手を作るのも大変だからでしょうね。

ですが、実際に手を千本持つ千手観音もあります。一番有名なのが、奈良・唐招提寺の千手観音立像。高さ5mを超える丈八像。平安時代(8世紀末)、国宝。もとは1000本の手があったのでしょうが、今は大手が42本、大手の隙間に911本の小手、953本の手が現存しています。唐招提寺は大好きで、何度も訪れています。その迫力と千の手には圧倒されます。それでいてどこまでも受け入れてくれそうな眼差し、いつまでも見ていたくなる観音様です。

もう一つは、大阪・葛井寺の千手観音座像。高さ1mほど。天平時代(8世紀半ば)、国宝。こちらは大手40本、小手1001本で、合計1041本の手を持ちます。大手・小手共にてのひらには絵の具で眼が描かれていた痕跡が残っていて、千手・千眼以上です。

葛井寺の千手観音は毎月18日に公開されていて、こちらも市が立っていました。ここも地元の人に愛され護られてきた現役のお寺。

実際に見たら、すごい! なんだこれ? え、どうなってるの?どうやって作ったの?1300年以上も経ってるなんて信じられない!しばし見入って、魅入られてしまいました。
(これはお寺で購入した写真をパソコンで取り込んだ画像です。)

千手観音で有名なもう一つは、三十三間堂(京都・妙法院蓮華王院)。こちらは十一面四十二臂ですが、千一体あります。これもすごいです。
千手ではない十一面観音も、素敵な仏像がたくさんあります。特に奈良には国宝級が多数。それもほとんどがいつ行っても見られる。奈良おそるべしです。どこもそういう風になるといいのだけれど。

話が逸れました。那古寺に戻りましょう。

那古寺のもう一つの仏像、阿弥陀如来像。山門を入って右手、多宝塔の手前の小さな阿弥陀堂の中にいらっしゃいます。鎌倉時代の作。ガラス越しに覗けるのですが、よく見えなくて、これも看板の写真です。こちらは予約すると扉を開けてくださるらしい。予約しとけばよかったかな。


お昼ご飯は駅への途中にある「やきそばまるじゅう」で。ここのメニューはやきそばとフライなるものだけ。フライって何? 埼玉県行田市のご当地グルメだそう、薄く焼いたお好み焼きみたいなもの。聞けば、ご店主夫妻は行田からの移住者だとか。やきそば卵付きとフライやきそばを注文しました。フライやきそばはフライでオムレツケーキみたいにやきそばを包んだもの。これが結構ボリューミー。食べても食べてもなかなか減らない、お腹一杯になりました。特製の山椒が入ったソースがさっぱりしておいしい! ごちそうさまでした。

那古船形には、もう一つ見るべきお寺があります。駅の反対側海の方へ歩いて20分ほど。船形山大福寺、通称崖観音。断崖絶壁に張り付くように朱塗りのお堂が見えてきます。
こちらも、行基が地元漁民の海上安全と豊漁を祈願して、山の岩肌の自然石に十一面観音を刻み、その後慈覚大師が堂宇を送検したと伝えられています。

江戸時代に火災で観音堂のすべてが消失、再建されましたが明治時代の末に豪雨による土砂崩れで倒壊、大正の大震災でも本堂倒壊、昭和元年に再建されたものの経年劣化により平成に大改修、と幾多の苦難を乗り越えてここに立っています。

ご本尊の摩崖仏十一面観音は、船形山の中腹の祠に刻まれているとのことですが、祠ってこれかしら? 違うよね。でもここ岩肌がいい感じです。

ホームページによると、観音堂内の正面奥に摩崖仏を拝むとのことでしたが、残念ながらよくわかりませんでした。
でも、色鮮やかな天井絵は素敵です。房総の植物が描かれているのだとか。
ここも那古寺と同じ、真言宗智山派のお寺。同じ人が同じころに来て建てたんだから、当たり前か。
なんといっても素晴らしいのは、観音堂からの眺め。眼下に広がるのは館山湾・鏡が浦。この日はあいにくの曇り空でしたが、晴れていれば伊豆大島も見えるとか。
長い階段を頑張って登ってきよかった!と思わせてくれる景色。下を見れば、御朱印巡りの方がひっきりなしにやってきます。ここも現役のお寺です。

千葉の隠れた名所、まだまだあるのでしょうね。知っている方、教えてください。ただし条件が一つ、電車やバスで行けるところをお願いします。私たち夫婦は車に乗らないので。そんなとこなかなかないよと言われるけど、探せば結構あったりしますね。

最後に。
これ何かわかりますか?
縄文笛です。縄文人がたぶん吹いていたであろう土笛。一番小さいのが、盲目の縄文笛奏者・縄文笛つよしさんがご自身で作って演奏しているもの。よく響くいい音がします。

3月に高円寺・稲生座で水野たかしのバースデーライブをやるのですが、そこにゲストで縄文笛さんが来てくれることになっています。
聞いてみたい方、3月1日の稲生座へどうぞ。お問い合わせは炎の雫まで。

遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。 (2023年1月28日 佳)
















新生・炎の雫

「炎の雫」新しくなりました。 東ティモールコーヒーから自家焙煎コーヒーへ。コーヒーの銘柄を増やして、カフェでも飲めるし、豆の販売でもご購入いただけるようになりました。 ラインナップに加わったのは、タンザニア・コロンビア・メキシコ・グァテマラ・エチオピアシダモの5種類。 また、焙煎...