2017年3月10日金曜日

震災から6年、東北の春はまだ遠い

 

 

先日、陸前高田の喫茶「ジャズタイム・ジョニー」の再建募金のメールが届いた。

津波で流されて跡形もなくなってしまったジョニー。仮設店舗で運営を続けているが、仮設の期限が近づいている。高台に造成中の土地へ移転の予定、土地は確保したものの、建物の建設費用が足りないという話だった。造成中の土地がいつ出来上がるのかは、今一つ定かではないのに、仮設の期限だけは決まっていく。なんだか切ない話だ。

   (写真は2013年夏の高田の海ー海は今も変わらないだろうか)

 

震災から丸6年。月11日が近づくと、東北の状況を伝える報道が増える。でもそれも年々少なくなっているようだ。6年経ってなお、いまだに仮設住宅に暮らす人々がいる。でも仮設の期限は決まっていて、どこかへ行かなくちゃならない。ほんとは仮設住宅は5年までと決まっているらしい。それが特別に延長されたようだけれど。

陸前高田市では、仮設の撤去スケジュールが出されている。早ければ今年の前半から。29年度・30年度に解体予定のところが約三分の二、31年度まで当面存続が三分の一。31年度までいけば、震災から8年にもなる。仮設で8年!小学校と中学校のほぼ全部を仮設で過ごす生活、考えられるだろうか。

仮設の店舗には、また別の撤去スケジュールがあるようだ。国が解体費用を全額補助するのは5年まで、それ以降延長は可能だが、自治体が撤去費用を負担しなくちゃならないらしい。なんだかおかしい。

 

神戸の震災の時は、5年経ったら街はまったく元通り、いや元あった以上の街が出来上がった。神戸は都会だから、街を復興させる必要があり、またその見返りも期待できた。自治体の体力もあったけど、国も力を入れたのだと思う。でも東北では、全然状況が違う。陸前高田は鉄道すらなくなって、今はBRT(バス高速輸送システム)というバスが走っている。駅(バス停?)は、2013年に仮市庁舎の駐車場にプレハブが建ち、ちゃんとした駅の開業はなんと去年の3月、丸5年もかかっている。このスピードの差は何だろう。東北は、漁村、農村が多く、そこにお金をつぎ込んでも、生まれてくるものは少ないから?人が暮らしているのは同じなのに。割り切れない思いだ。

 

震災から3年目の2013年の夏、私たちは陸前高田を訪れた。きっかけは陸前高田在住の小野文浩さんが「陸前高田・海の写真展」を高円寺のお店でやったこと。彼は、海に太陽が昇る写真を中心に撮っていた。その後彼は、やなぎさんと水野ののライブを企画してくれた。場所は「ジャズタイム・ジョニー」だった。アイスコーヒーを頼むと、グラスにちょこっと入れて、それでいいの?と聞くと、大丈夫、氷を入れてちょうどよくなるの、と店主の由紀子さん。ほんとうかな、飲んでみると本当だった。おいしかった!ライブはいい感じで、その後の打ち上げではたくさんのご馳走。集まってくれた地元の方々はみんな明るかった。その晩は小野さんのお友達の家に泊めていただいた。震災で家もご家族もなくしたという。再建したばかりのログハウス風の家、全然知らなかった人なのに、朝からバーベキューなんかして、力いっぱいもてなしてくれた。今から思えば、誰でもいいから泊まってほしかったのかもしれない。

 

車で陸前高田の街を回った。町と言っても何もない。あっけらかんと何にもなくなっていた。空き地というか、ただただ広がっている大地、ところどころにブルトーザーがいるだけ。「ここは駅前の商店街だったんだよ」と言われてびっくり。駅なんてどこにもないし、お店も1軒もない。言われてみればかろうじて線路が分かるぐらい。夏の陽射しを浴びて、奇妙に明るかった。そんな記憶が、一気に蘇る。

 

東京オリンピックが決まった時、オリンピックなんてやってる場合じゃないでしょ、そのお金を東北の復興に回して欲しいと切に思った。今でもその思いは変わらない。東北の人は忍耐強いから怒ったりはしないけど、私は怒りたい。たまたま縁があって、陸前高田の状況を少し知ったけれど、状況はそれぞれ違うかもしれないし、同じようなことはたくさんあるのだろうと思う。

 

そして6年目の3月11日だ。

去年、炎の雫では、ドキュメンタリー映画「逃げ遅れる人々」の上映会をやった。東北大震災の時、障害を持った人はどうしたのか、避難所に行ったけど居られなくて帰ってきた人、避難所にはいかないという選択をした人、原発の事故で行き場がなくなり流離う人‥それぞれの重さが描かれている。今年は上映会は予定していないけれど、夫と二人、この映画を見ながら静かに考えたいと思う。 

 

神戸の震災の後作られ、ずっと歌い継がれてきた「満月の夕」という歌がある。今夜、明日、日本各地で「満月の夕」が歌われるのだろうと思いながら、これを書いている3月10日の朝。  

 

 

再び「ジャズタイム・ジョニー」

ジョニーは、店舗無償支援によって、仮設のプレハブで営業を続けてきました。その無償支援の終了に伴い、移転を求められています。震災前に所持していた土地の代替地として提供される土地は確保したが、その造成地の完成は平成30年度だそう。店舗開設の資金の協力を求めています。

ポイントは、見返りのない募金であること。

「募金に協力した方が、再建した店を訪問してくれたとき、最大限のおもてなしはします。けれど料金などでサービスはできません。なぜなら、店舗の完成は終わりではなくスタートであり、メニュー1つ、コーヒー一杯を日々の糧としていかなければならないからです。」という、素敵な文章がありました。

 

再建募金は、やなぎさんが実行委員長です。彼は、岩手の奥州市に家があり、車で全国を歌いながら回っています。私は彼の歌が大好きだし、こういう活動の中心になる彼の生き方も大好きです。

 

興味のある方は、検索してください。(3月10日) 


新生・炎の雫

「炎の雫」新しくなりました。 東ティモールコーヒーから自家焙煎コーヒーへ。コーヒーの銘柄を増やして、カフェでも飲めるし、豆の販売でもご購入いただけるようになりました。 ラインナップに加わったのは、タンザニア・コロンビア・メキシコ・グァテマラ・エチオピアシダモの5種類。 また、焙煎...