8月26日、東ティモールのコーヒー生産者を訪ねるオンラインツアーに参加しました。
主催は、私たちがいつもコーヒーの生豆を購入しているパルシック。毎年夏においしいコーヒーに出会う旅というコーヒー生産者を訪ねるツアーを開催していますが、今年は新型コロナの影響で、実際に行くとこはできません。そこでオンラインツアーの企画、パルシック東ティモール事務所の代表・伊藤淳子さんがコカマウ(マウベシコーヒー生産者組合)のエルダウトゥバ集落から、現地での収穫、加工、焙煎…を伝えてくれました。ツアー時間は午後2~5時の3時間、質問コーナーも何度かあって、充実した内容でした。
まずは、首都ディリの観光。ここはフリーガイドの松村さんが担当。ディリの市内には、おしゃれなお店やショッピングモールもあります。教会や抵抗運動博物館、サンタクルス墓地、東ティモールの歴史に触れながら案内してくれました。「カンタ!ティモール」の上映会を通して、ティモールの歴史はある程度理解しているつもりでしたが、サンタクルスの虐殺のきっかけは知なっかったし、海を見下ろす絶景の地に立つ大きなキリスト像・クリストレイも知りませんでした。勉強になりました。
それにしても、ティモールの景色の美しいこと!
山道を歩いてコーヒー畑へ向かいます。
東ティモールのコーヒーは、ポルトガルの植民地時代に作られたプランテーション跡地と1960年以降の小規模農家のの栽培地ですが、インドネシアの軍事支配下でコーヒー栽培に関する技術や知識が継承されなかったため、木が老朽化し、収穫量が落ちているとのこと。パルシックでは、コーヒーの木の再生プロジェクトも進めていて、ここエルダウトゥバがいち早く積極的に取り組んでいるそうです。
そんな話をしながらコーヒー畑に到着。コーヒーの実の収穫作業です。真っ赤に熟れた実だけを収穫すること、いいのはこんなの、ダメなのはこんなのと教えてくれてみんなで収穫。今回は男性ばかりでしたが、女性も収穫することもあるとか。(実はここにある写真は今回のツアーのものではなくパルシックのマウベシの別の時の写真です)高いコーヒーの木、上の方の実はどうやってとるの?と聞くと、長い木の棒を持ってきて、それで枝をひっかけて引っ張ってたわませて収穫するのをやって見せてくれました。昔柿の実をとるのに使った棒みたい、いいなあこういうの、なんて思いました。
収穫した赤く熟した実(コーヒーチェリー)を、シートの上にに広げて選別します。
それから加工作業に入ります。バケツに入れてまず水で洗う、するとゴミや葉っぱや軽い実が浮いてくるので、それを取り除く。
ちなみに、水は大きなタンクからひいて使っていましたが、それは2年前くらいにパルシックの支援によってできた設備、それまでは川に水を汲みに行っていたそうです。すごい!
今回は、ナチュラル、ハニー、水洗式の水あり、水洗式の水なしの4種類を実際に見せてくれました。ナチュラルは洗ったチェリーをそのまま木枠に網を張った台(アフリカンベッドという)に広げ、天日に干して乾かします。ハニーは脱穀機にかけてある程度果肉を取り除いたものを干します。水洗式は、脱穀機にかけたものをさらに水洗いして果肉をきれいに取り除いてから一日おいて発酵させてから干します。おいておく間、水を入れてつけておくのが水あり、水を入れないで発酵させるのが水なしです。水洗式は昨日やっておいたものを出してきて、コカマウのコーヒー技術指導責任者のネルソンさんが見て、これはもう少し置いておいた方がいいとかアドバイスしていました。ナチュラル以外は脱穀機にかけるのですが、この機械は生産者の方の手作り。木で作ってあって、木のハンドルを手で回す、いたってシンプルですがコーヒーチェリーの果肉はきれいに取れていきます。これもすごい!
産地で加工されたコーヒーはディリの二次加工場に送られます。ここでまた選別され出荷されるまでの過程を、畑から集落に帰る間に、あらかじめ撮っておいたVTRで見せてくれました。ディリの工場には、もう何十年もコーヒーの選別作業をしているベテランの女性もいるそうです。現地の工場責任者の方が案内し丁寧に説明してくれました。
さて、エルダウトゥバの集落に戻って、いよいよ焙煎です。
まずは木の臼に入れた豆を棒で突いて、パーチメント(内果皮)を取り除きます。ざるに入れてあおって、上手に要らないものを外に出していく手さばきは見事です。
ティモールでは、中華鍋を使って直火で焙煎します。火にかけて、ひたすら混ぜ続けます。台所はけむりだらけ、「目が痛い、痛くないの?」と伊藤さん。生産者のお嫁さんの女性はものともせずにかき混ぜ続けます。だんだん色がついてきて、いい色になってつやが出てきて、ああコーヒーだとなるまでに約20分くらい、大変な作業です。彼女は週2回焙煎しているそうです。
ここでは、台所は母屋とは別になっていて、家族が集まる場所。出産も台所で行われるそうです。
(この写真も今回のツアーとは関係ありませんが、こんな感じです)
焙煎した豆を挽くのにも、先ほどの臼と棒を使うようです。
生産者の皆さんとパルシックの現地スタッフと伊藤さん、コーヒーを淹れてもらって屋外で飲みながら、今日3回目の質問タイム。今までは東京のスタッフを通しての質問でしたが、今回は参加型、質問者は直接顔を出して現地とやり取り。いろんな質問があり、それぞれのお答えになるほどと思うことがいくつもありました。現地の方たちの、“いいコーヒーを“作りたい、届けたい” という思いがひしひしと伝わってきて、とても良い時間が持てたと思います。あっという間の3時間でした。
(この写真はマウベシの風景、byパルシックです)
初めてのオンラインツアー、初めてのzoom、ちょっとドキドキでしたが、今回は希望しなければ音声も映像も出さないから気楽にコーヒーを飲みながら参加してくださいとのことだったので、ちゃんとティモールのシティローストのコーヒーを淹れて出発しました。
いつか東ティモールに行きたいねとずーーっと話していましたが、なかなか行けなくて。でも今回はコロナのおかげで思いがけずオンラインツアーに行くことができてとてもうれしかったです。
パルシックの皆さん、エルダウトゥバの皆さん、本当にありがとうございました。
*ここに載せた写真は、すべて今回のオンラインツアーの写真ではありません。パルシックまたは東ティモールで活動する他のNPOなどの過去の写真のフリー素材から、イメージの近いものを選びました。
パルシックのオンラインツアーの1週間ほど前のこと。
上野の芸大美術館で行われている「あるがままのアート~人知れず表現し続ける者たち」の、オンラインロボット鑑賞を体験してみました。
あるがままのアートは、アールブリュット(アウトサイダーアート)の展覧会、海外でも評価の高い25人の作品が展示されています。
アールブリュットには以前から興味があり、好きな作家の作品も出ているので、ぜひ行きたいと思っていました。
その展覧会で、ロボット鑑賞という試みがあり、こんな時期だからそれいいかもと申し込んでみました。
ロボ鑑賞ってどんなの?というと…。
ロボットといっても、A4くらいのパネルに足がついたものが動くもの。
それを自分で動かして、好きな作品の前まで行って、近づいたり離れたり、向きを変えたり、ズームしたりしてみるのですが、これがかなり大変。まずまっすぐに動いてくれないし、曲がるのは難しい。目的地に行っても、角度も定まらないし、近すぎたり遠すぎたり、上向き下向き、ちょっと動かすつもりがどーっと動いちゃったり。操作にやっと慣れてきたら、もう1時間の制限時間の半分以上を過ぎていました。実は一つのロボットに一人のスタッフが付いて歩いていて、どうしてもうまくいかないと、手で引っ張ったりして角度を直してくれたりするのですが、なかなか見たいものを見るには至りませんでした。本当はパネルにこちらの顔が映されて、音声もつながっているのですが、うちのパソコンはカメラが付いていないので、音声だけのやり取りでした。実際のロボットの画面はどうなっていたのかな。
1時間の鑑賞時間が終ったとき、まったく見た気がしなくて、やっぱり実際に行こうということになりました。その場で予約、この展覧会は時間指定の予約制、1週間分ずつ予約を受け付けています。料金は無料。どうせなら勢いでと2日後に予約を入れて、上野まで行ってきました。
とても暑い日で、そのせいもあったかもしれませんが、こんなにすいてる上野は見たこともないという程、駅も公園の中もすいてました。
2時間ほどかけてじっくり鑑賞しました。大好きな澤田真一さんのとげとげの生物たちもありました。中野のアールブリュット展で彼の作品に魅せられたのが、私のアールブリュット体験の始まり、もう10年くらい前のことです。それ以来、折に触れて調べたり体験したり、数年前には滋賀県のボーダレスアートミュージアムNOMAにも行きました。
今回の展覧会、見ごたえがあってとても刺激的です。9月6日までなのであと少しですが、機会があればぜひ行ってみてください。
この展覧会、ほとんどが写真OK、以下は作品の写真たちです。(8月29日 佳)