先月のガスに続いて、今月は水道の話。
日本国内の水道普及率は98%と言われています。ほとんどのところで、蛇口をひねると安全な水が出てきて、安心して飲むことができます。私たちにとっては当たり前のこと、でも世界ではそうじゃない、安全な水を確保できない地域が大多数。水道水をそのまま飲める国は、日本を含めて11か国しかないのです。
日本は水の豊かな国と言われていますが、日本の河川は長さが短く、流れも急で、雨が降ってもすぐに海に流れ出てしまうため、実際に使える水資源は少ない。
水資源賦存量というのがあるのですが、これは降水量から蒸発散量を引いたもので、理論上人間が最大限利用可能な水資源量のことです。世界平均は1人7027立方メートル/年、これに対して日本は3400立方メートル/年と半分以下です。もっと言うと、3400は全国平均であって、関東地方に限ると900立方メートルになります。人口密度も関係しているため仕方ないのですが、この数字を見ると首都圏で毎年繰り返される水不足にも納得できます。日本は決して水が豊かな国ではないのです。
そもそも水道水はどうやって作られるのか。
自然の中にある水を浄水して作っています。浄水場で、川や湖の水、地下水などを取り込んで、濾過し消毒して安全な水として送りだします。
簡単に説明すると、沈殿→攪拌→濾過→消毒という工程。取り込まれた自然水は、まず薬品を混ぜて砂やゴミを固めて、沈ませて取り除きます。次に徐々にスピードを落としながら攪拌する。砂の層を通して濾過し、最後に塩素による消毒を行います。浄水の過程でいくつかの薬品が使われますが、処理過程で除去されてしまうので、最後に残るのは塩素だけです。
水道水は、塩素消毒をし、蛇口における残留塩素濃度が0.1mg/ L 以上なければならないと定められています。これはWHOの基準の倍以上の厳しさ、世界トップクラスの安全基準だそうです。また、塩素濃度が高いと味やにおいに影響を与えるため、上限を1mg / L以下に抑えるという管理目標値も設定されています。
塩素濃度については、地域の事情に合わせて、地域ごとに基準があります。
水道料金について。
水道の料金、地域格差がとても大きいことはよく知られています。それはなぜか、水道事業は自治体が管理しているからです。
水道は公共性の高い事業、公共の利益を優先し住民の生活を保障するために公営とされました。また地域の水資源情報を把握しているのが自治体で、住民のニーズに合わせた事業を請け負えるからでもあります。そして独立採算制であること、水道事業の収益を事業運営のみに充てることで安定的に運営する。ほかの事業のマイナスを補填して、そのせいで水道が使えなくなったりしないように、ということでしょう。それは逆から言えば、水道料金以外の収入は使えないということ。これが自治体間の料金の格差につながっています。
水道料金もガスと同様、基本料金+従量料金で計算します。
一概に比べるのは難しいのですが、千葉市と東京23区で比較してみます。
基本料金:水道管の直径で異なる。(一般家庭向けは、13ミリ、20ミリ、25ミリくらい。)
東京 13ミリ 860円/月 20ミリ 890円 /月 25ミリ 1590円/月
千葉市 13ミリ 418円/月 20ミリ 979円 /月 25ミリ 1749円/月
従量料金 東京 1~5㎥ 0円 6~10㎥ 22円 11~20㎥ 128円 21~30㎥ 163円
千葉市 1~10㎥ 62円 11~20㎥ 165円 21~40㎥ 268円
例えば、20ミリの水道管で月25㎥使った場合は、東京では2315円、千葉では4590円の水道代がかかります。ただし東京では下水道料金が2580円プラス、千葉市では2030円プラス、合計で4890円、千葉市では6620円となります。(計算間違ってるかもしれませんが…)
参考までに、私の住んでるいすみ市は、2か月分計算になっていて、基本料金が2か月で20㎥まで3400円、それを超えた分は1㎥につき190円、それにメーター料金として13ミリで140円、20ミリで160円、25ミリで300円が加算されます。上と同様に、20ミリで25㎥つかった場合は2か月で9260円、1か月にして考えると4630円となります。うちは大体2か月で35~40㎥使っていて、水道代は2か月で7~8000円です。千葉は水道料金が高いと言われていますが、そうでもないなと思っていたけれど、改めて東京に居た時とそう変わっていっていないことが確認できました。ただし、いすみ市は下水道がありません。その分浄化槽の点検費が年間13000円ほどかかります。(浄化槽については後述します。)
また、この4月から、夷隅郡広域市町村圏事務組合というのができて、いすみ市、勝浦市、御宿町、大多喜町の水道事業を広域管理することになり、今後値上げが予想されています。今後の予想を見たら、広域化しないとどんどん値上げになっていくようで、少しでも値上げ幅を押さえるための措置のようです。
千葉県全体も水道料金の値上げが公表されています。日本全体といってもいいかもしれません。水の問題は、実はとっても深刻な状況にあるのです。
ちなみに、全国の水道料金の格差は2倍以上。
都道府県別では、1位神奈川県2142円に対して47位の青森県は4418円。(これは口径13ミリ、使用水量20㎥での金額。)自治体別では1位兵庫県赤穂市853円、2位静岡県長泉市1120円に対して、ワースト1位は北海道夕張市6841円、ワースト4位まで北海道で、5位は長崎県上天草市が6242円となっています。すごい差ですね。
この差の原因は、水源、地形・地理的条件、水道事業の運営規模、設備の老朽化と維持コストなど。水道に関しては選べないから、そこに行ったらそこの料金を払うしかない、お引越しするときは水道について調べた方がいいと思います。
*2018年に法律が改正され、民間事業者の参入が可能になりました。いわゆる水道民営化。2021年に宮城県で民間企業に運営権を売却・委託するコンセッション方式による事業が開始。東京では、水道局から維持管理などの業務を委託していた法人が合併し、東京水道株式会社が設立されて業務を運営しています。
水道民営化、知ってました?賛否両論のようです。
下水道と浄化槽について。
日本の上水道は98%設置済と述べましたが、下水道については81%ほどです(令和4年末)。人口密集地域では、下水道による処理の方が効率がいい、でもそうでない地域では初期投資の費用が高くて予算の確保が難しく、事業期間も長期に亘るため、なかなか手が出せず、整備が進みません。
千葉県では下水の設置状況は77%、全国平均より低く、特に私の住む外房方面は、未設置のところが多い。この図は千葉県の下水道実施都市の状況ですが、これで分かるように、いすみ市は下水はありません。
下水道のない地域での汚水処理は、浄化槽による処理が行われています。
ここに引っ越してきて、まず浄化槽って何?と思いました。下水のないところなんて、考えたこともなかった。不動産屋さんが浄化槽業者も手配してくれて、最初に来た時に「浄化槽使ったことあります?」って聞かれて、「全然ない」と答えたら説明してくれたけど、よくわからなくて。
今回調べてみて、やっとちょっとわかりました。要は、浄水場でやってるようなことを、各戸でやる、庭に埋めた装置というか水槽みたいなものを通して、汚水を浄化する仕組みです。
主役は微生物。まずは嫌気性微生物が汚水の中の有機物を分解する、そこに空気を送り込んで今度は好気性微生物がさらに分解、微生物は汚泥となって沈殿する、残った水は塩素剤で消毒して放流されます。放流?どこに流されるんだろうといつも思いますが、ただ単にその辺に流しているみたいです。いいのかな、と思いますが、浄化されてるからいいのでしょう。うちは周りがだいたい元田んぼの空き地だから、まいいかって感じです。
浄化槽の点検は4か月に1度、業者さんが来てちゃんと動いてるか点検して、お掃除してくれます。これは1回4400円。数年に一度、浄化槽に溜まった汚泥(微生物の残骸なのね)を汲み取る作業が必要で、これには結構お金がかかります。3年前にやった時は4万円ちょっとかかりました。検索したら年1回と書いてあったけど、うちは点検業者さんに言われたときにやってます。その費用を月にならすと、1000~2000くらいでしょうか。
今年1月埼玉の八潮市で下水道管が破裂、道路が陥没して運転手が落下し、3か月後に死亡している状態で発見されるという痛ましい事故があったのを覚えていますか?この事故を受けて、緊急点検が行われた結果、いつどこで似たような事故が起きても不思議はないということがわかりました。水道管は各地で老朽化しているのです。実際に、水道管の破損による事故は頻発しています。今年4~5月にも、京都市下京区や大阪市城東区で、水道管の破裂によって道路が水浸しになる事故が起きました。いずれも設置から60年を超えた排水管でした。千葉でも、2月に大網白里市で水道管破裂と道路陥没が起きています。
老朽化した水道管はどこにでもあります。上水道管は比較的浅い位置に埋まっているのですが、下水管は上水より深い位置に埋まっていて、なかなか点検もままならず、お金もないし、放置されているものが多いようです。いつ、どこで、大事故が起きても不思議はない状況、どうするんだろう、と思ってしまいます。
そういう意味では、下水のないいすみでは、陥没事故は起きにくいかもしれませんが。
最後にちょこっと水知識。硬水と軟水について。
水の硬度というのは、水中のカルシウムとマグネシウムの量を表す指標です。炭酸カルシウムに換算します。(これはアメリか硬度と言います。日本やWHOではこれを使用。他に酸化カルシウムに換算するドイツ硬度もある。)
WHOでは0~60㎎ / Lを軟水、60~120㎎ / Lを中程度の軟水、120~180㎎ / Lを硬水、180㎎ / L以上を非常な硬水といいます。日本では0~100㎎ / Lを軟水、101~300㎎ / Lを中硬水、301㎎以上を硬水としています。日本の水道水は地域差はありますが、平均で48㎎程度で軟水と分類されます。硬度1位の千葉は78㎎、2位埼玉70㎎で多少硬度高いですが、軟水の範疇です。
ミネラルウォーターとして売られているエヴィアンは304㎎で硬水です。
水の硬度を決めるのは地質環境です。ヨーロッパでは石灰岩が多く、河川や地下水にミネラルが多く溶けだすので硬度が高くなる。日本では河川が短く流れが急なので、水が岩や土に触れている時間が短く、溶け出すミネラルが少ないので、水の硬度は低くなると考えられます。
硬度が高いほど石鹸が泡立ちにくくなり、お肉が柔らかくなります。逆に軟水では石鹸が泡立ちやすく、お茶や紅茶をいれるのに適しています。
日本のお水、おいしいですよね。
お茶もコーヒーもお料理も、おいしいのは水のおかげ。
おいしい水がいつでも使えるのはとても幸せなこと、大事にしなくっちゃね。
この幸せが長く続くことを願わずにはいられません。(2025年5月25日 水野佳)
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