遠い昔を思い出させてくれた物語を。
4月上旬、1本の映画を見た。「ストリートキングダム~自分の音を鳴らせ。」
監督・田口トモロヲ、脚本・宮藤官九郎、主演・峯田和伸・若葉竜也、原作・地引雄一。
「1978年ーたった1年を永遠にした若者たちがいた。その伝説的なムーヴメントが奇跡の映画化!」
東京ロッカーズと呼ばれたムーヴメントを題材にし、あの時代を追いながら、自分たちの理想の音を追い続ける若者たちの青春映画として、現代に生きる若者たちへのメッセージをも込めて作られた熱い映画。
「インディーズ」という言葉がまだなかった時代、自分たちでミニコミ誌を作り、レコードをプレスして、自分たちでライブシーンを作り出す。インディーズのDIY 精神。今では当たり前になっている「ロック・フェス・スタイル」や「オールスタンディング」、新しいライブスタイルは東京ロッカーズによって生み出された。
物語は、セックス・ピストルズが解散した1978年、カメラマンの夢に挫折したユーイチが「ロッキン・ドール」という手作りのミニコミ誌を手にしたことをきっかけに、東京で次々とパンクに触発されているバンドが登場しているのを知る。ミニコミ誌を作るサチ、TOKAGEというバンドのモモと知り合い、カメラマンとして、また、自らが何をできるかを問いながら、関りを深めていく様を綴っていく。
登場するバンド・人物には実在のモデルが居て、ライブシーンの音楽はすべてオリジナルの音源が使われている。
ユーイチは原作者の地引雄一さん、演じるのは峯田和伸、彼は実際のミュージシャンで銀杏BOYZというバンドを率いていて、かつ俳優としても活躍している。
TOKAGEのモモのモデルはリザードのモモヨ、演じるは若葉竜也。昨年「アンメットある脳外科医の日記」というドラマで、主人公川内ミヤビ(演じたのは杉咲花)の婚約者の三瓶先生で一躍有名になった役者さん。(それまでも知る人は知る存在だったけど)
ミニコミ誌のサチのモデルはゼルダのチホ(バンド名は映画ではロボトメイアとなっている)、演じたのは吉岡里帆。最近では「御上先生」で松坂桃李の御上先生の同僚是枝先生を演じてた。まじめな先生とロックバンドのベーシスト兼ミニコミの編集者とのギャップがすごい。ベース似合ってる。 (★この写真は、私が持っているゼルダのレコード)
*余談ですが、御上先生のエンディングテーマ曲はONE OK ROCK の「Puppets Can`t
Control You」。ワンオクはこのころの東京ロッカーズみたいに、今の時代を自分たちで切り開いているDIY精神のバンドだというのは何かの巡りあわせか。(こじつけかな。)
その他の東京ロッカーズの面々。
軋轢のDEEPのモデルはフリクションのレック。演者は間宮祥太郎。これがめちゃくちゃかっこよかった。フリクションってこんなにかっこよかったっけ?
解剖室の未知ヲのモデルはスターリンの遠藤ミチロウで仲野太賀。今NHKの大河ドラマ「豊臣兄弟」で主役やってる。え、仲野太賀がミチロウ?って思ったけど、妙に納得させられたのはさすが。振り切れててお見事。
ごくつぶしのヒロミのモデルはじゃがたらの江戸アケミで、演じたのは中村獅童。何となく似てるかも。ラスト近くでお遍路さんの格好でモモのレコード店を訪ねてきて「戻ってきちまったぜ」とニヤリと笑うシーンがたまらない。
S-TORAのモデルはS-KEN 、演じたのは大森南朋。正直Sケンはよくわからない。東京ロッカーズのプロデューサー的役割が強いような。ちゃんと見てないしね。
さっき映画のライブシーンはすべてオリジナル音源と書いた。それは吹き替え、役者はあてぶりということ。撮影時は役者たちが実際に弾いてて、映画の編集段階でオリジナルの楽曲に乗せてライブシーンを作ってる。オリジナルのバンドの映像や写真を織り交ぜているところも多々ある。でも全然違和感がない。
役者たちはスタジオに入って練習を重ね、実際に演奏できるまでに上達したという。各バンド間で競い合い、「やばい、うまくなってる、うちももっと練習しなきゃ」なんてやってたらしい。
その中で、映画のエンディングテーマはリザードの「宣戦布告」のカバー、峯田和伸と若葉竜也が歌っている。
(★写真はパンフレットより)
役者のみならず、スタッフにも“熱”は伝わり、特に美術スタッフはレコードを作り、当時のライブハウスを詳細に調べ、街の有様などをいかに再現するかにのめり込んだという。
「東京ロッカーズのDIY 精神に感化されてクリエイティブ魂に火が付いた」
田口監督の情熱が俳優やスタッフに飛び火して燃え上がり、「ストリートキングダム」は「失われた時代の記録ではなく、若者たちが自分たちでアクションを起こせるようになった今の時代にこそ見るべき物語として完成した。」(パンフレットより)
東京ロッカーズはバンド名ではない。いくつかのバンドが集まって1978年にいくつかのライブを行い、「東京ロッカーズ」というレコードを79年に出した。マスコミに取り上げられるようになって個々のバンド足並みがそろわなくなり、東京ロッカーズの看板を下ろし、それぞれの道を行くことを決断した。だからたった1年。彼らの目的は売れることではなく、自分たちにとって最高の音楽をやること。かっこいい。
冒頭に、遠い昔を思い出させてくれた、と書いた。
私は実際に東京ロッカーズを同時代で見た体験者なのだ。
たぶん1980年代の初めころ、私は一人の男の子と出会った。彼は大学に入ったばかりで、どういう経緯か知らないがスターリンのミチロウに傾倒していた。私にとって彼はアリスのうさぎ、アンダーグラウンドのミュージックシーンへの道案内となった。
その頃私は芝居ばっかり見てて音楽は全然、ましてやインディーズやパンク系は全くの門外漢。彼に誘われるままに、ライブハウスや学祭に出入りした。そしてはまった。
面白い!
彼はスターリンの親衛隊で、ライブでは最前線で体を張ってお客さんを止める役を担っていた。スターリンはギグ(昔はよくギグって言ってた、今では死語かしら)を重ねる度に過激になっていったけど、初期はそれほどでもなかったように思う。なんかちょっとゴミ投げたり、鶏投げたりしてた。空間は張り詰め、異様な雰囲気、ミチロウのエネルギーは半端なく、どこからあんなパワーが湧いてくるんだろうと思った。ミチロウはステージを降りると穏やかで腰が低くてとてもいい人だった。
(★この写真は私が持ってるスターリンのレコード、3枚あったんだ。)
80年代に入ると、東京ロッカーズの流れを汲む様々なバンドが登場する。当時、大学はライブの大きな柱だった。京大西部講堂はもちろん、各大学でこぞってライブが行われた。東京だと法政大学とか武蔵野美大とか、横浜だと横浜国大とか神奈川大とか。私の水先案内人は横浜市大の学生だったので、よく横浜方面に行った。オールナイトもたくさんあったような気がする。この映画に登場するスターリン、ゼルダ、じゃがたら、フリクション、ノンバンド(お話部分には登場せず、本人の映像とレコードが登場)の他、水玉消防団、突然段ボール、吉野大作&プロスティテュート、スクリーン、コクシネル、灰野敬二…。
残念ながら、リザードとS-KENについてはほとんど見てない。本当の東京ロッカーズにはちょっと間に合わなかった。残念。リザードはちゃんと見たかったな。
「ストリートキングダム 自分の音を鳴らせ。」を見て、ああそんな時代もあったなぁと思いながら、今に繋がるものを認識し直す。それは未来に繋がるものでもある。
ここに挙げたバンドのレコード、聞きたい方は炎の雫をお訪ねください(2026年㋃28日 水野佳)







































