2026年1月30日金曜日

最近入手した本

秋から冬にかけて、本を数冊手に入れました。ずっと欲しいと思ってた本たち。

2026年最初のブログはそれらを紹介しようと思います。


まずは、手に入って一番嬉しい本。

『仏像に会う 53の仏像の写真と物語』西山厚著 ウエッジ。


著者は奈良国立博物館で学芸部長を勤め、現在は名誉館員であり半蔵門ミュージアム館長。2020年に出版された時からずーっとほしいと思っていた本です。

期待通り素晴らしい!国宝と重文(重要文化財)だらけ、美しい写真と簡単で的を射た短い説明を添えてあります。選ばれた仏像はいずれ劣らぬ名品ぞろい。本当に素敵です。 

写真は大阪・葛井寺の千手観音座像。国宝。

この本、ほとんどが奈良の仏像で、たまに京都、あとの地域はごく少数。葛井寺は大阪といっても奈良に近く、橿原から近鉄で1時間弱で行けます。国宝の千手観音像、毎月18日に見られるので行きました。意外と小さめ、でもすごい!

普通、千手観音の手は42本、実際に千本の手があるものは少ない。でもこの千手観音は1042本の手を持っています。それぞれの手に眼が描かれていて、千手千眼観音です。

この本に掲載されている仏像、私が見たものは半分弱。まだ見ていない仏像を見に、旅に出たいものです。


次は絵本。

『やってみないとわからないでしょ』作・絵 SHOGEN 発行上田祥玄(クラウドファンディングにより制作)


SHOGENは日本人の画家。タンザニアのペンキアート・ティンガティンガに出会い、単身タンザニアのブンジュという村に渡り、ティンガティンガアーティスト・カンビリ氏に弟子入りして寝食を共にしながら絵を描く。

帰国後はティンガティンガの「人々を幸せにする絵」という精神を基に、「生きるのって楽しい!」をコンセプトに活動を続けています。


私がSHOGENさんを知ったのは、友達が「なんか東ティモールに通じるところがあるような気がする」と言って教えてくれたことから。ホームページを見て、楽しそうな動物たちの絵に魅了されました。なるほど、村の人たちの暮らし、動物や自然とのかかわり方はティモールの人たちの考え方に通じるものがあるかと思います。ポストカードでも買おうかなと思いつつ数年経ち、絵本があることを知って買いました。人間の女の子が主人公(モデルはブンジュ村の女の子ザイちゃん)登場する動物は少ないけれど、その色彩感覚はやっぱりね、という感じです。


SHOGEN ホームページは https://www.nzu-risana.com

著書に「今日、誰のために生きる?-アフリカの小さな村が教えてくれた幸せがずっと続く30の物語」があります。この本も欲しいかも。


絵本もう1冊。

『きょうというひ』荒井良二作 BL出版。


これはクリスマスに衝動買いしました。ろうそくの炎のシンプルな表紙。

「きょうというひの ちいさないのりが きえないように きえないように」

雪で作った小さなろうそくの家、繰り返される「きえないように きえないように」のフレーズ。心が暖くなる絵本です。


荒井良二は絵本作家、数々の受賞歴もあり、個展も開いてるし、作品は多数。

何年か前に千葉市美術館で荒井良二の個展を観ました。「new born いつもしらないところへたびするきぶんだった」と題した展覧会。とてもおもしろかったです。今年もこの展覧会は続いているようです。

名作「あさになったのでまどをあけますよ」は時々手に取ってみています。「あさになったのでまどをあけますよ」と繰り返され、窓の外の景色が描かれている、なんかいいんです。


読み物1。

『火明かり』アーシュラ・K・ル₌グィン著 岩波少年文庫。


ゲド戦記最後の書。去年の10月に出版されました。第1巻「影とのたたかい」が出版されて実に50年。短編が2つとル₌グィンの講演やエッセーが収められています。

「火明かり」は年老いてただの男になったゲドの最期を描いた短編。これが書きたかったんだろうなと思います。ゲド戦記の大ファンとしては感慨深い短編です。


ゲド戦記は何度読んだことか。深い、哲学的です。「火明かり」を読んだら、また1巻から読み返したくなりました。

個人的には、2000年代に入って書かれた「西の果ての年代記」3部作、「ギフト」「パワー」「ヴォイス」もとても好きです。

ル₌グィンはSF作家でもあります。「闇の左手」は読んでみたいと思いながらまだ果していません。


読み物2 

『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』 しんめいP著 サンクチュアリ出版。


ネットで見つけて、大ヒット中と書いてあって、大学哲学科で東洋哲学に興味ありの私としてはつい衝動買いしてしまいました。作者は東大卒、就職したけど上手くいかず退職、離婚もして実家で布団かぶって引き籠り、東洋哲学の本を読みまくってネットに書いてたら、それが編集者の目に留まって出版、すると20万部を超えるヒットになったとか。昨今の出版業界では2万部で大ヒット、10万部ならベストセラーと呼ばれるそうなので、立派なもの。読んでみようかなと。


結果、漫画みたいな本です。数時間で読める。確かにわかりやすい。6章立てなのですが、各章の題でほぼ内容わかります。「1章 無我 自分なんてない ブッダの哲学」「2章 空 この世はフィクション 龍樹の哲学」「3章 道 ありのままが最高 老子と荘子の哲学」「4章 禅 言葉はいらねえ 達磨の哲学」「5章 他力 ダメなやつほど救われる 親鸞の哲学」「6章 密教 欲があってもよし 空海の哲学」以上。面白いけど…、今の若い人にはこうしないと伝わらないのだろうなと思いつつ、これでいいのかなぁ、とモヤモヤが残りました。


番外編 まだ読んでない本

『NEXUS 情報の人類史』ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社


大大ベストセラー「サピエンス全史」の著者の新作。(因みにサピエンス全史は全世界で4500万部を突破したそう、すごい!でもね、「ハリー・ポッター」はシリーズで世界6億部以上、第1巻の賢者の石だけで1億7000万部ですって、びっくりです。)


NEXUS、「言葉、文字、印刷、コンピューター、そしてついに登場したAI。古代からAI時代まで、人類の歴史をかつてない視座で読む。」との謳い文句。


夫が今上刊を読んでいます。夫は前からこれ読みたいと言ってて、信頼できる友達が、サピエンス全史よりこっちの方がすごいと言ったので買いました。私は、サピエンス全史も読んでないから、読むならそっちからと思って、でもまだ手も付け付けずにいます。


以上、秋から冬にかけて入手し、読んだ本たちのご紹介でした。


今、炎の雫の店内の本の展示台は「最近入手した本と冬に読みたい本」と題して、私の独断と偏見で選んだ本を並べています。

千葉在住の詩人・大島健夫さんの新作詩集も追加しました。


まだもう少しこのままにしておく予定です。温かいコーヒーでも飲みながら、手にとってみませんか。  (2026年1月30日 水野佳)













2025年12月28日日曜日

熊と人

今年の漢字は「熊」だそうです。確かに、熊に関するニュースがたびたび世間を賑わせています。日本にいる熊は、北海道のヒグマと本州のツキノワグマの2種類。私の住む千葉県は、本州で唯一熊がいない県として話題になり、観光客が増えたとか。


環境省の発表によると、4~11月の熊による被害は230人と過去最多になりました。死者が13人とこちらも過去最多。

熊の出没件数は、捕獲数を公表していない北海道を除いて36814件。

8月には北海道羅臼岳で登山者が熊に藪の中に引き込まれて翌日遺体で発見されるという衝撃的な事件がありました。それ以降クマによるニュースが頻発。被害が多いのは、岩手県、秋田県、青森県、福島県と東北地方が主。10月には、秋田県東鳴瀬村で、4人がクマに襲われて1人死亡。岩手県北上市の瀬美温泉では露天風呂の清掃中の従業員が熊に連れ去られて後に遺体で発見。新潟県湯沢町では駐車場で宿泊客が襲撃されたり、長野で雪下ろし中の作業員が襲われたり。数え上げたらきりがないくらい。

また、キャンプ場に現れたり、町なかのスーパーや倉庫や銀行に立て籠ったり、保育園や小学校に侵入したり。東京や神奈川でも、人の生活圏(観光地も含めて)すぐ近くで目撃情報、こんなに熊が身近に出没するようになったのは驚きです。

(写真は10月23日、岩手県盛岡市中津川の河川敷を移動する熊)


原因についてはいろいろ言われています。

個体数の増加、分布域の拡大、どんぐりなどの凶作によるエサ不足、狩猟者数の減少、里山の荒廃、過疎化と高齢化、耕作地の放棄や空き家増加による人の手の入らない領域の拡大‥。様々な要素が複合的に作用して、熊が人里に入り込む事例が頻発し、2016年以降はこれまでとは違う新しいフェーズに入ったようで、今後は熊が出るのは当たり前という時代に入るといいます。


そもそも、熊は賢い動物です。知能は高く、犬と霊長類の間、3~8歳程度と言われています。好奇心旺盛で学習能力もあり、人間でいうと小学生から中学生程度の記憶力、学習能力を持つと推測されますが、経験を積むと20~30代の知恵を持つとも言われています。人間の食べ物と味を記憶し再び訪れる、罠にかかった経験からその仕組みを理解して避ける方法を学習する、岩をどかして踏み台のように使うなど道具を使ったり、クーラーボックスの仕組みを理解して開ける、猟師をだますために足跡を消すなどの行動も確認されています。

ドアを開けたりするのは当然できます。だから作業小屋に入り込んで冷蔵庫のドアを開けて中のお米を食べたりできるのですね。そこまで賢いとは、私全然知りませんでした。びっくりです。どんどん賢くなったらどうなっちゃうんでしょう。


本来はほぼベジタリアン的な雑食。木の実や果実、タケノコや山菜を食べ、アリなどの昆虫を食べ、時に魚や動物の死骸を食べます。決して自ら狩りをして動物を獲って食べる動物ではありません。性格は臆病で、基本的には人間を避けるはずなのですが。

人馴れした熊は、人間を恐れる必要がないことを学習してしまった熊で、これは非常に危険な状態。そういう熊が増えてきてしまったことが、最近の熊被害の増加のベースにあるのなら、とても怖いことです。

(*この写真のクマは民家の庭の柿の木に2日間居座って柿を食べ続けました。)


熊を神性な存在として崇め、畏怖の対象としている民族もあり、それぞれ熊との付き合い方があります。シベリアでは熊は祖先とされ、ともに生きている存在であり、家族の呼び名で呼ばれています。先住民によってそれぞれのクマの祭りがあリ、狩猟は儀式的で、聖なる意味を伝えて行われ、狩った後は熊の力、知恵を身に付けるために食べます。ある民族では、一人の狩猟者が狩ることのできる数は限られていて、その数を超えたら、あの世からの罰を受けて自ら命を絶つことになっているそうです。


これに近いのがアイヌの文化。ヒグマは「キムンカムイ」として崇められる最高位の神の一つで、人間に肉や毛皮を与える存在。熊を狩ったら「イオマンテ」という霊送りの儀式を行い、その魂(カムイ)を神々の世界に送り返すことで、再訪とさらなる恵みを願います。冬眠中の熊を獲った際に子熊がいたら捕獲し、1~2年大事に育てて、成長したら豪華な装飾と食べ物を持たせて神々の国へと送り返します。育てることは神へのおもてなし、そうすることで神が地上に多く訪れてくれると考えていました。人を襲うなど、人との境界を越えた悪い神は「ウェンカムイ」。肉は食べず、魂を地上に返さないようにする特別な儀式を行って処理されます。

(この写真は北海道デジタルミュージアムより「カムイへの祈り―信仰」)








また、日本のマタギにもアイヌと同じような精神性があります。マタギとは、北海道や東北地方の山岳地方で、クマなどの大型獣を伝統的な集団猟で狩って正業をたててきた人々の集団のこと。巻狩りと呼ばれる方法で、熊を山の神からの授かりものとして尊び、独特の儀式と独特の言葉を用いながら役割分担して狩りを行います。熊は山の神の化身、魂を山に送り返す儀式を行い、獲物のすべての部位を余すところなくいただく、その一方で、マタギは知識と技術をもって熊が里に近づかないようにする共存の知恵を持っています。

現役のマタギが言うには、「巻狩りによって熊を威嚇し、ここから先は人間が住む領域として認知させる。それを数百年以上前から毎年欠かさずやり続けていれば、熊も寄り付かなくなる。自己防衛であり、暮らしを守る手段であり、熊との共存の知恵である。」


マタギを追った映像をみましたが、なんだかすごく荘厳で美しかったです。現代ではマタギは減少し、巻狩りが成り立たなくなりつつある、その状況を危惧しています。

(写真はJBpressセレクションより「冬のマタギ」/ 「阿仁マタギがクマを捕獲した際に行う『ケボカイ』山神様への感謝と授かった熊の供養、そして今後の豊漁を願う。」)


神話や童話の中にも度々熊が登場します。

神話の例。北ユーラシア(アイルランド)では、熊は祖先や精霊と同一視される神聖な動物であり、知性や癒しの象徴。ケルト神話で、アルトゥスは大自然の脅威を体現する森の王で力と勇気の象徴。アルティオは母性を象徴する熊の女神。


フィンランドでも、熊は神や精霊と同一視される存在。ここでも熊を狩った後、その魂を来世に送りだすための儀式として盛大な熊祭りが行われ、死と再生、豊穣を願います。フィンランド神話に登場する「ホンガタル」は松の木に由来するクマの母神です。


カナダでは、先住民にあがめられるスピリッド・ベアという白い熊の神様がいます。氷河時代の記憶を伝える神の使いとされ、森の守り神。特定地域に生息し、数は限られていて、大切に守られています。



熊は人間にとって親しみやすい存在でもあり、たくさんのお話のキャラクターになっています。お話の世界で最も有名なキャラクターは「クマのプーさん」でしょうか。イギリスのA・A・ミルンの書いた児童小説。熊のぬいぐるみではちみつ大好きなプーさんと、クリストファー・ロビンや森の仲間たちの日常が楽しく描かれています。


プーさんが何で赤い服を着ているかというと、クリストファーロビンがプーさんにミッキーマウスの赤い服をハサミで切ってきせてあげたからだそうです。(ディズニー版の裏設定では、ミッキーマウス自らが自分の服を着せてあげたとなっているらしい。)

来年はプーさん生誕100周年だそうです。長く愛されているプーさんです。


プーさんのモデルになったのはテディベア。キャラクターとして一番有名な熊はこっちかな。

テディベアは1902年第26代アメリカ大統領のセオドア(愛称テディ)ルーズベルトが、瀕死の熊を助けたというエピソードが漫画として新聞に載り、感銘を受けたお菓子屋さんがぬいぐるみを作って大人気になり、世界中に広まりました。欧米では、赤ちゃんが生まれたら最初の友達として贈る習慣があります。テディベアのぬいぐるみ、持ってる方、多いんじゃないでしょうか。

伊豆に「テディベアミュージアム」というのがあって、アンティークのテディベアが展示されています。HPで見た1904年製のテディガール、とってもかわいい!ぬいぐるみ作りの体験もできるみたいで、ちょっと行ってみたくなりました。(伊豆急の伊豆高原駅下車10分)



熊の絵本、たくさんありますね。「くまのパディントン」「くまのコールテンくん」「3びきのくま」「くまのこウーフ」こぐまちゃんのシリーズ、よるくまのシリーズ‥。

うちにあるくまの絵本で一番かわいいくまはこれかな。

「よるくま クリスマスのまえのよる」(酒井駒子作・白泉社)

炎の雫では今、クリスマス関連の本を展示していて、それにも入っています。欧米ではクリスマスは日本のお正月みたいなもので1月6日ころまで続くそうなので、年明けまでこのままにしておこうと思っています。


昨今の熊と人間の現実に戻りましょう。人に危害を与えるかもしれない熊をどうするか、駆除するのか、山に返すのか、人と熊の境界をどうやって守るのか、熊が出たらどう対処するべきか。答えはどこにあるのでしょうか。


熊と共存している(?)アラスカで暮らす日本人のネットの記事を読みました。アラスカには10万頭以上の熊が生息していて、町にもよく出没する、でも森で狩りをする人はいても、駆除しろという人はいない。生活の一部に熊がいることは当たり前。警察からの注意事項は、近づいて写真を撮るな、冷静で分別ある行動をとれ、本当に危害が加えられる危険がある時だけ110番(向こうでは911)しろ、というもの。(暗に熊がいるくらいで警察に電話するなと言っている。)。ゴミ箱は熊が開けられないような構造になっているそうです。(写真はアラスカのゴミ箱と熊。横に注意書き。アラスカ警察のFacebook)

熊は出没してもほとんど庭の木の果実などを食べていて、基本は人間や犬をみたら逃げる。年間数件しか被害は起こらないので、恐れず、ほっとけばいいという感じだそうです。事件を起こした熊を調べたら、過去にも人を襲っていたことがわかった例も複数あったようです。裏を返せば、ほとんどの熊は殺人グマじゃないということ。アラスカでは、それを人間がちゃんと理解しているのですね。そりゃそうだ、人間だって殺人者になるのはごくごく稀な例で、ほとんどの人はそんなことしないのですから。日本人は怖がりすぎ、熊が出たら殺されると思って大騒ぎしています。


興味深い研究もあります。人里近くに住むイタリアのヒグマは、小型化して攻撃性も低くなっているそうです。これは人間が攻撃的な個体を排除し続けた結果、遺伝子レベルでおとなしい熊だけが選抜されて生き残ったと考えられ、家畜化症候群に近い現象とも言えるとありました。

(写真はイタリアのアペニンヒグマ、なんかかわいい、ヒグマの種類とは思えない)



かつてオオカミが犬になっていったように、獰猛ではない、人間と共存できる熊が現れ始めているのかもしれません。

でも、人間の行いが、生物を、生態系を変えてしまっていいのかなと、複雑な思いです。


私たち人間は、生態系の食物連鎖の枠の中にはまらない、だとしても、自然界に生きる生物の一つにすぎず、生あるものの命をいただきながら生きているのです。それを忘れずに、熊も、その他の生物も、最大限に尊重しながら生きたいものです。


最後に、阿仁マタギの言葉から、この文章を。

「銃声の後の静かな時間は命と向き合う時間だ。地球上すべての生きとし生けるものの命は等価であり、スーパーで並ぶ牛や豚、鶏もすべて同じ命だということを改めて考えることが必要だと思う。人間はそうした『命』によって生かされている存在だということを今一度認識しなければならない。」


2025年、今年1年間、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

よいお年をお迎えください。 (2025年12月28日 水野佳)





 

2025年11月27日木曜日

炎の雫・外房10年記念ライブ

炎の雫が外房に移転して、この秋で10年を超えました。

(私たちがいすみに移住したのが2015年6月、炎の雫の再開店が10月でした。)


これを記念して、11月16日の午後、「炎の雫・外房10年記念ライブ~気がつけば 時は過ぎゆき~」を開催しました。

最近のライブでやっている歌と手話のコラボも含めて、水野が今歌いたいと思った曲だけを詰め込んだ2時間ちょっとのライブ。


おかげさまで大盛況、皆様とともに素敵な時間を過ごすことができました。

本当にありがとうございます。


カフェ炎の雫は2012年に東京・高円寺で生まれ、生音ライブ、映画上映会、アート展示、イデアの雫(人と出会い話を聞く会)、ごはんの会(ユニバーサルな昼食会)等、さまざまな活動を行っていました。2014年の12月、水野たかしの脳出血をきっかけに、東京を離れ、ここ千葉いすみ市へ。移住から4か月後、現在の炎の雫をオープン。高円寺の時より少なくなったとはいえ、ライブや映画上映会は続けてきました。それがコロナをきっかけに途絶えてしまって…今回久しぶりのライブでした。



今回のライブ、歌詞とともに紹介させてください。(こんなことほぼしないんだけど。♫と♫の間は歌詞です、切り取りは私の独断。)


スタートは水野たかし定番の「ホーボーズララバイ」。

 

♫ 町から町へとさまよい歩く 

 長距離トラックのうなりが 俺らにゃ子守唄 ♫


これをやるとなんかのってくるらしい。


2曲目は「祈りの唄」

 

♫ 忘れられないなら忘れなくてもいい 思い出と一緒に生きればいい

 天地あまねく命を抱きしめて つらい夜をやり過ごす ♫


この曲は東日本大震災の後で作った曲です。


3曲目「ほろ酔い気分」


♫ ほろ酔い気分に優しさが顔をのぞかせる 

 今日も一日生きた 少しだけ前に進んだ ♫


水野の歌にしては珍しくカバーしてくれている人もいる曲です。


この後は手話コーナー。


まずは水野の歌と私の手話のコラボの原点になった

「ヘイ マルシーラ」


♫ 大きな力に惑わされるな われらの過ち大地は知る

 ヘイマルシーラ ヘイウルシーラ 大地よ力を与え給え 

 この身も心も大地とともに ♫ 

(マルシーラ=みんな、ウルシーラ=大人たち)


高円寺時代から上映会を続けてきたドキュメンタリー映画「カンタ!ティモール」のテーマソング。カンタティモールの上映会のきっかけになったのは名古屋のミュージシャン・江口晶さん。夫の古い知り合いで上映会を企画して上映&ミニライブ&シェア会を続けていました。高円寺の上映会の時も何度も名古屋から来てくれました。

その頃、彼がこの曲を歌い、当時の奥様がフラを踊るというのをやっていて、素敵だなと。私は踊れないけど、手話ならつけられるかとやり始めました。どうせならと歌詞も原曲の意味に沿って訳し直して、上映会の度に歌ってきました。

(写真はこの曲を作ったアレックス。映画にも出演しています。)


次に「メメントモリ」


♫ 人は愚かで間違えるけど 外しちゃいけない道がある 

 生を思え 死を思え 本当に生きているのだろうか ♫


これはコロナで日本全部が封鎖された時のことを書いた歌。

水野のステージに立って手話をつけるという形でやってきました。(この写真は今回のライブの写真ではありません。撮影は南風島渉さん。)


千葉に来て出会ったものの1つにポエトリーリーディングがあります。2019年4月、ご縁があって、詩人たちが集まって朗読をするイベントを開催しました。この時は5人の方が出演してくださいました。個性的で実力ある方が集いました。その中のお一人詩人の大島健夫さんが主宰する詩のオープンマイク「千葉詩亭」に参加させていただき、歌詞を手話をつけながら語ったことがあります。それで目覚めて、ライブの時ちょこちょこやらせてもらっています。


今回、2つの歌を合わせてリーディングバージョンを作りやってみました。

「Justice & Love」


«大切なのはこれ以上傷つけないこと 心の中に正義と愛を持っていること 

 目をしっかり開いて 背筋をピンと伸ばして 愛を持って正義を貫きたい »


結構練習しました。どうだったでしょうか。



さてここで、皆さんにも手話をやってもらおうと「虹」という曲のサビの部分の手話を説明して練習。

 ♫ 虹が虹が 空にかかって 君の君の気分も晴れて

  きっと明日はいい天気 きっと明日はいい天気 ♫


ここを会場のお客さんにやってもらいました。

以前東京でのライブでもやってみたら、意外と皆さんちゃんとやってくださったのに気をよくして。


「虹」は子供の歌なのですが、数年前に「虹色カルテ」というドラマで取り上げられた曲で、知ってる方、馴染みの方もいたようです。虹の診療所チーム(高畑充希・北村拓海・井浦新)が歌ってました。


手話では“虹”は右手で7を作って空間に虹の形を描きます。このイラストで分かるかな。手話の数の表し方、空間の使い方も簡単に説明しました。自分の体より前が未来、後ろが過去、だから1を出して前に動かすと“明日”です。


手話の歌のこと。

手話は聞こえない人の言葉です。手話の歌は本来、聞こえない人に歌詞を伝え、一緒に歌を楽しむためのもの。でも私にとっての手話の歌はちょっと違います。私は東京に居た時、知的障害のある子どもたちの放課後活動の仕事をしていました。初めてそのクラブを訪ねた時、みんなで手話で歌っていたのです。自閉症や言葉を発しない子どもたちが、手を動かすことによって声を出さなくても歌に参加できる、そうか、こういう使い方があるんだと思いました。そこでは毎日の活動で必ず手話で歌う時間があって、自然と手話の歌が身に付いていきました。後に、自分で考えて歌に手話をつけるようになり、それが今の活動のベースになっています。子どもたちが真似してくれたように、大人も真似してくれるかなと思って「虹」やってみたら、みんな楽しそうに手を動かしてくれて、嬉しかったです


前半の最後は軽快に「Peace like a river」


♫ 見えない時間に 見えない場所で 見えない誰かを思い 

 目立たず知られず でもそれでいいんだ (歌詞奇妙礼太郎)


これはスタンダード?ゴスペル? とあるCMで使われていた曲です。

Peace  Love  Joy  大切です!


休憩を挟んで、後半は水野たかしソロ。


まずはやなぎの「ウイスキー」で幕開け。


♫ ウイスキー ウイスキー 光の水よ 

 俺をどこかへ連れてってくれ 

 ここじゃないどこかへ ♫


やなぎさんとは、ずいぶん前に高円寺の稲生座(=東京に居た時の水野のホームだった老舗のライブハウス)で知り合って長い付き合い。日本全国を歌いながら旅しているシンガーソングライターです。高円寺でも何度も出てもらって、千葉にもライブをしに来て、地元のミュージシャンと共演もしてくれました。


実は私はやなぎさんが大好きで、よくいろんなところのライブを聞きに行ってました。好きな曲もいっぱいあります。やなぎさんが一番好きだという名古屋・犬山のライブハウス「ふう」まで行ったこともあります。

水野は水野で、どこか共通する価値観があったようで、次第に距離を詰めていき、東日本大震災の直後にやなぎさんの車で東北を旅したり、彼が陸前高田のライブハウスで録音するのに付き合ったり。千葉のうちの小さなスタジオにもふらっとやってきて、一晩でデモを録っていったり。私たち夫婦にとってとても大切な人でした。

残念ながら、2022年に突然逝ってしまいました。水野より10歳も若いのに。


やなぎのアグレッシブな曲をもう2曲。

「いきるもののうた」


♫ 信じることをやめるな 疑うことをやめるな 

 届かぬものに手を伸ばし もがき続けることをやめるな ♫


「貧しい人々」


♫ パソコンの画面の中に 真実なんてない 真実を弄ぶ悪意があるだけだ 

 国の最高機関の議事録に 正義なんてない 正義を弄ぶ言葉が並んでいるだけだ 

 僕らはどうしてこんなに貧しくなったのか ♫


彼の言葉がまっすぐに突き刺さってくる、これぞやなぎ、今でも鮮烈です。


もう一人、石井明夫の歌を1曲。

「Sacred Mercy」


♫ 日が昇り 目覚めの時を知る 

 だが世界は争いを続けている‥‥

 選ばれし人よ 進め 自由をなすのに理由はいらない 

 選ばれし人よ 今 愛と勇気に言い訳は似合わない ♫


この曲、歌詞がすごい!マザーテレサもラマダライも出てくる。石井明夫は高円寺では超人気のとても高円寺らしいバンドマンです。

この曲は、水野が歌いたいと彼に言って、どんどんやっちゃってくださいと言ってもらった歌。ほかにも何曲か彼の歌やってます。


この後は「One more sonng」で一息ついて。


♫ 人生に引きずられておいら どこに行くのかこれから 

 おいら歌う おいらの旅に向けて たとえ夜が覆いかぶさろうと ♫


「あなたの星」


♫ 生きていた時は あなたは激しくて 

 求めて投げかけて 揺れて疲れ果てて 

 生きていた時は あなたはまっすぐで 

 まるで嵐のように駆け抜けて星になった           

 大いなるものと一つになった今

 はるかな高みから見ていておくれ 

 大いなるものと一つになった人 

 小さき人のために祈っておくれ ♫


水野は、星になって空から見ているであろうミュージシャンたちに捧ぐと言いました。その思いで歌い続けていると思います。

でも、詩を書いた私にとっては、これは16歳で天に召された男の子に捧げた歌。障害を持って生まれ、激しく、まっすぐに生きて、嵐のように駆け抜けて逝った彼。彼が亡くなった後、しばらくの間言葉のかけらだけ抱きしめていました。とある人が、「大丈夫、いつか形になるから」と励ましてくれて、その通りにやがて歌になりました。今でもこの曲を聴くたび、彼の笑顔を思い出し、涙しそうになります。


(私達は、私が詩を書いて水野が曲をつけるという形で歌を作っています。もう20年近くなるでしょうか。昔は詩のことで議論も喧嘩もしたけれど、最近はあまり闘わなくなりました。いいのか悪いのか、エネルギーがなくなってきたのかもしれませんね。)


最後は「あなたに」 一番新しい歌です。


♫ いつだって心は揺れる それでも笑っていよう 

 誰だって何か抱えて あなたはあなたでいい 

 今はただあるがままに 流れにまかせ何処へ 

 いつの日か終わりは来るけど その日も笑っていたい‥‥ 

 あなたに会えてよかった あなたにありがとう ♫


しっとり終わりました。


ありがたいことにアンコールもいただいて。いくつもの星が流れ」を歌いました。


♫ 明日は明日の風が吹くけど どうなっていくかは俺たち次第 

 いいことばかりが続かないけど 行く先真っ暗と決まっちゃいない ♫


これはヒロスケの曲。ヒロスケって知ってますか?メジャーデビューしてレコード出して、ちょっと名前が出て。兵頭ゆきの夫でもあり、長いことアメリカに行ってました。

実は水野たかしは、一時期ヒロスケと一緒に活動していました。ギターとボーカル水野、もう一人キーボードがいて3人で。ヒロスケのハスキーな高めの声と水野の硬質な声がうまく合わさって、なかなか魅力的なバンドでした。

私、なぜかこのバンド見たことあります。その頃は全然知らない人だったけど。


ヒロスケの名曲と言われているのが「いくつもの星が流れ」。西城秀樹がカバーしたこともありました。何十年も前の曲だけど、今聞いても全然古くない。

水野も折に触れて歌い続けてきました。うん、やっぱりいい曲でした!


というわけで、11月16日炎の雫・外房10年記念ライブのレポートでした。

11年目に入った炎の雫、これからもよろしくお願いします。


★余談ですが、現在公開中の映画「スプリングスティーン 孤独のハイウエイ」、とてもいい映画です。興味がある方、ぜひ見てください。 (2025年11月27日 水野佳)













 

最近入手した本

秋から冬にかけて、本を数冊手に入れました。ずっと欲しいと思ってた本たち。 2026年最初のブログはそれらを紹介しようと思います。 まずは、手に入って一番嬉しい本。 『仏像に会う 53の仏像の写真と物語』西山厚著 ウエッジ。 著者は奈良国立博物館で学芸部長を勤め、現在は名誉館員であ...