2026年2月25日水曜日

防災訓練 炊き出し&AED

 

2月22日、地域の防災訓練がありました。

私の住んでいる所の自治会はいすみ市岬地区の停車場と言います。駅の近くだからついた名前でしょう。私たちがここに引っ越してきた10年ほど前は、100軒近い世帯数だったのですが、年々減り続け、今では60軒を切ってしまいました。

停車場防災会では、時々防災関係の集まりを行っています。過去には、お餅つきやバーベキュー、流しそうめんのような親睦を兼ねたイベントや、炊き出しと豚汁作り、おにぎり作って会員宅に届けたり、などなどやってきました。私は一応、停車場の防災会の役員になっていて、何かある時にはできるだけ働こうと参加しています。


今回は炊き出し訓練・カレー作りとAED取り扱い講習会。講習の企画は初めてです。実は新年会の時に何か防災でイベントやりましょうという話になって決めた企画。いつも参加人数があまりいないので、少人数でも消防が受けてくれるかなと思いながら申請を出したらOKで開催が決まりました。


当日は役員が8時半集合、一般の方は9時集合、炊き出しは10時までに終わらせ、10~11時が消防署員による救命とAEDの講習会。

11時からカレーの配布で、持って帰る方はここまで。食べて帰る方は集会所の中で食事して、でも12時過ぎにすべて終了する、というタイトな企画でした。


千葉県東方沖を震源とする震度7クラスの地震を想定。家屋の倒壊とインフラの切断を確認したとして、救助班と炊き出し班を編成。素早く炊き出し準備に取り掛かり、カレーを作り配布する。そのため、必要最低限の材料で、なるべく短時間で調理することを念頭に動きました。水道は使えないという設定で、日頃備蓄してあるペットボトルの保存水を使い、野菜や調理器具を洗うのも期限の切れたペットボトルの水を使いました。



炊き出し 炊飯とカレー作り


まずは集会所の外側にガスコンロと発電機を設置。いすみ市の補助金で購入した屋外用のガスコンロを使ってみることも今回の目的の一つです。新しいコンロとプロパンガスをホースでつないでみたけれど、なかなか点火せずちょっと苦戦。しばらくして無事に火が付き、まず大きい鍋でお湯を沸かす。

その間に野菜の準備。玉ねぎは皮を剥いてちょっと水につけてから切る。こうすると目がシバシバしないそうです。実は防災会の会長さんはお弁当屋さんで調理のプロ、いろんなこと教えてくれます。

にんじんはすり下ろす。これはピーラーを使いましたが、ご高齢の男性がこんなの使ったことないと言いながら、一生懸命におろしてくださっていました。

まな板は段ボールに使い捨てのまな板シートを置いて。具は玉ねぎとにんじんだけです。大きなお鍋をコンロの火にかけ炒めてお湯を入れて少し煮込み、カレールウとウスターソースとケチャップを入れて出来上がり。なるほど時短。


ごはんの方は炊飯器を使いますが、これは発電機から電源を引いて外のテーブルで炊飯します。お米はビニール袋で洗う。お米と水を袋に入れて、クチュクチュしてお米部分を持って水を捨てる、これを3回ほど。洗ったお米と水を炊飯器に入れてスイッチオン、あとはお任せ。




これとは別に袋でお米を炊く(ゆでる)実験も。こちらはカセットコンロで。

袋に80gの洗ったお米と120㏄のお水を入れたものを3つ作って、お鍋の底にお皿を置いて、お湯を沸騰させ、そこにお米の袋を入れて20分加熱。火を止めて蒸らします。これでごはんが炊けるの?多少心配。




なにはともあれ、10時5分前にはカレーの火を止め、実験のごはんの火も止めることができました。1時間でできるの??って思ってたけど、やればできるものです。忙しかったけどね。


救命講習とAED操作講習

予定通り、10時からは講習に入れました。消防車と救急車、5人の消防署員の方が来てくださり、人形を並べて準備。参加者14人が講習を受けました。


初めに緊急時の対応の講習。倒れてる人がいたらどうするか。

救命の4つの連鎖を教えていただきました。

それは

①心停止の予防ー生活の中での予防、薬の服用、事故の防止など

②早い119番通報

③早い応急処置ー心肺蘇生法、AED

④専門的処置ー救急隊や病院での治療

このうち①~③を担うのは一般人、私たちです。



★緊急時の対応の流れ


まず意識と呼吸の確認。両肩をたたきながら「わかりますか?」反応がなければ →「人が倒れています。誰かいませんか」→ 誰か来てくれたら、分担依頼「あなたは119番通報してください。」「あなたはAEDを持ってきてください。」同時に周囲の安全を確認。道の真ん中など危険があるところでは安全な場所に移動させる。→ 呼吸の確認。頭から足の方を斜めに見て胸やお腹が上下しているか見る。123456と数える、普通なら6秒に1回呼吸している。それで呼吸がなければ → 胸骨圧迫(心臓マッサージ)手を組んで肘を伸ばし、胸の中央・胸骨の下部を手のひらの付け根で5センチ沈むくらい強く押す。1分間に100~120回のテンポで。(本当は胸骨圧迫30回に人工呼吸2回の組み合わせで継続するのがよいが、感染の危険もあるため人工呼吸は行わなくてもいい。)→ AEDが到着したら電源を入れAEDの音声指示に従う。



AEDの操作

基本的には電源を入れ指示に従う。AEDの中にパッドを貼る位置を描いた図が入っている。電気ショックが必要なら充電が始まり、指示に従って動けばいい。ショック後胸骨圧迫を再開し、2分後にまた指示がある。電気ショックが必要ない場合はそう伝えられる。胸骨圧迫は、目的のあるしぐさが再開されればやめてもいい。


AEDを使うときの注意は、胸が濡れていたら拭くこと、湿布が貼っていないか確認すること、ペースメーカーが入っている人の場合はパッドを貼る位置に注意すること、ネックレスなどはAEDに当たらないようにすることなど。

これは最新式のAEDです。

AED自体がメトロノームのように1分間に120回のペースの音を出してくれるし、未就学児用のバージョンもあるそうです。未就学児!保育園の子どもでも使えるやつがあるなんてびっくりです。一般のは小学生以上用。


余談ですが、一昨年のドラマ「放課後カルテ」で、小学6年生の女の子が学校医の牧野先生(松下洸平)の指示でAEDでおじいさんを救う場面がありました。それが、AEDを使うところをきっちり全部見せていて、なるほどこうやるのかと思った覚えがあります。その通りでした。ドラマちゃんと正しく知識を伝えてました。

もう一つ、昨年「119エマージェンシーコール」という横浜消防の119番の指令管制員のドラマで、通報に対して胸骨圧迫の仕方も丁寧に教えていて、こちらもなるほどと思って見ていました。

今回の講習で「119番は岬の消防署にかかるのですか?」という質問があって、答えは千葉市のコールセンターにかかるということでしたが、とにかく119番にかけてくれれば、そこで教えてくれるのでその通りに従ってやれば大丈夫だから、とにかく通報してくださいとのことでした。通報大事です。


救急車は基本3人、運転が1人なのであとの2人で処置を続けることになるそうです。胸骨圧迫の継続が必要な場合は2人で交代で病院まで。このあたりだと、いすみ医療センターまで15分、勝浦の塩田病院までだと30分、それを2人で。大変です。

胸骨圧迫を人形でやってみたら、30回ですら疲れて、30回+2呼吸(人工呼吸の分)を4セット(か5セット、どっちか忘れた)やってみましょうと言われて、実践してみると、押してるだけでヘトヘト。それも「弱いです!」と指摘されながら、これ以上無理~なんて大変なのと思いました。消防隊員の方、すごいです。


きっかり1時間で講習を終え、消防の方が帰った後は炊き出し訓練の続き。屋外のテーブルで、出来上がったカレーを容器に入れて配布。カレーにはゆで卵とハムカツを添えました。食べていく方は屋内に入って食事。

時短カレー、味はどうかな、子供でも食べられるように全然辛くないのだけれど、玉ねぎの甘さが出ておいしいです!


実験で作ったビニール袋ごはんも味見してみます。うん、ありです。カレーだし、普通においしく食べられます。袋に入れてお湯に入れとくだけでちゃんとご飯になるんだ、覚えておくといいですね。ただ、残った袋ご飯を持ち帰って、翌日炒飯にしてみたら、なんとも不思議なものが出来上がりました。沖縄のジューシーみたいなもの、それはそれで美味しかったけど。


実はおかずも同じやり方でできるみたいです。蒸しパンとかもできるらしい。(蒸しパンはホットケーキミックス50gに牛乳50g入れて20分加熱すればいいそうです。)ネットにいろいろ出てるので検索してみてください。

★ビニール袋は耐熱性のあるもの、湯煎可の表示のあるものを使うこと!


お食事タイムは親睦も兼ねて、ちょっとお菓子や飲み物もいただきながらしばし歓談。

食事後手際よく片づけをして解散。半日にも満たないイベントなのに、こんなに濃密で意義深い時間は、そうそうないと思います。

参加者の皆様、お疲れさまでした!




*近隣のAED所在地

太東小学校、岬中学、岬児童館、セブンイレブン、ケーズ電気、関歯科医院など。太東駅や農協、コメリにはないそうです。

AEDのある所も、施設内のどこにあるかわからないし、人がいるときじゃないと借りられないし、緊急時に使えるかどうかは疑問です。「放課後カルテ」みたいに、神社にあって、誰でも持っていけるAEDはそうそうないでしょうから、日頃から状況の把握は必要ですね。

皆さんもお住いの地域のAED状況、確認してみてください。

それから、本文にも書きましたが、119番通報は、近くの消防署ではなく、広域のコールセンターにかかるので、住所は市町村も入れてちゃんと伝えましょう。


(2026年2月25日 水野佳)









2026年1月30日金曜日

最近入手した本

秋から冬にかけて、本を数冊手に入れました。ずっと欲しいと思ってた本たち。

2026年最初のブログはそれらを紹介しようと思います。


まずは、手に入って一番嬉しい本。

『仏像に会う 53の仏像の写真と物語』西山厚著 ウエッジ。


著者は奈良国立博物館で学芸部長を勤め、現在は名誉館員であり半蔵門ミュージアム館長。2020年に出版された時からずーっとほしいと思っていた本です。

期待通り素晴らしい!国宝と重文(重要文化財)だらけ、美しい写真と簡単で的を射た短い説明を添えてあります。選ばれた仏像はいずれ劣らぬ名品ぞろい。本当に素敵です。 

写真は大阪・葛井寺の千手観音座像。国宝。

この本、ほとんどが奈良の仏像で、たまに京都、あとの地域はごく少数。葛井寺は大阪といっても奈良に近く、橿原から近鉄で1時間弱で行けます。国宝の千手観音像、毎月18日に見られるので行きました。意外と小さめ、でもすごい!

普通、千手観音の手は42本、実際に千本の手があるものは少ない。でもこの千手観音は1042本の手を持っています。それぞれの手に眼が描かれていて、千手千眼観音です。

この本に掲載されている仏像、私が見たものは半分弱。まだ見ていない仏像を見に、旅に出たいものです。


次は絵本。

『やってみないとわからないでしょ』作・絵 SHOGEN 発行上田祥玄(クラウドファンディングにより制作)


SHOGENは日本人の画家。タンザニアのペンキアート・ティンガティンガに出会い、単身タンザニアのブンジュという村に渡り、ティンガティンガアーティスト・カンビリ氏に弟子入りして寝食を共にしながら絵を描く。

帰国後はティンガティンガの「人々を幸せにする絵」という精神を基に、「生きるのって楽しい!」をコンセプトに活動を続けています。


私がSHOGENさんを知ったのは、友達が「なんか東ティモールに通じるところがあるような気がする」と言って教えてくれたことから。ホームページを見て、楽しそうな動物たちの絵に魅了されました。なるほど、村の人たちの暮らし、動物や自然とのかかわり方はティモールの人たちの考え方に通じるものがあるかと思います。ポストカードでも買おうかなと思いつつ数年経ち、絵本があることを知って買いました。人間の女の子が主人公(モデルはブンジュ村の女の子ザイちゃん)登場する動物は少ないけれど、その色彩感覚はやっぱりね、という感じです。


SHOGEN ホームページは https://www.nzu-risana.com

著書に「今日、誰のために生きる?-アフリカの小さな村が教えてくれた幸せがずっと続く30の物語」があります。この本も欲しいかも。


絵本もう1冊。

『きょうというひ』荒井良二作 BL出版。


これはクリスマスに衝動買いしました。ろうそくの炎のシンプルな表紙。

「きょうというひの ちいさないのりが きえないように きえないように」

雪で作った小さなろうそくの家、繰り返される「きえないように きえないように」のフレーズ。心が暖くなる絵本です。


荒井良二は絵本作家、数々の受賞歴もあり、個展も開いてるし、作品は多数。

何年か前に千葉市美術館で荒井良二の個展を観ました。「new born いつもしらないところへたびするきぶんだった」と題した展覧会。とてもおもしろかったです。今年もこの展覧会は続いているようです。

名作「あさになったのでまどをあけますよ」は時々手に取ってみています。「あさになったのでまどをあけますよ」と繰り返され、窓の外の景色が描かれている、なんかいいんです。


読み物1。

『火明かり』アーシュラ・K・ル₌グィン著 岩波少年文庫。


ゲド戦記最後の書。去年の10月に出版されました。第1巻「影とのたたかい」が出版されて実に50年。短編が2つとル₌グィンの講演やエッセーが収められています。

「火明かり」は年老いてただの男になったゲドの最期を描いた短編。これが書きたかったんだろうなと思います。ゲド戦記の大ファンとしては感慨深い短編です。


ゲド戦記は何度読んだことか。深い、哲学的です。「火明かり」を読んだら、また1巻から読み返したくなりました。

個人的には、2000年代に入って書かれた「西の果ての年代記」3部作、「ギフト」「パワー」「ヴォイス」もとても好きです。

ル₌グィンはSF作家でもあります。「闇の左手」は読んでみたいと思いながらまだ果していません。


読み物2 

『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』 しんめいP著 サンクチュアリ出版。


ネットで見つけて、大ヒット中と書いてあって、大学哲学科で東洋哲学に興味ありの私としてはつい衝動買いしてしまいました。作者は東大卒、就職したけど上手くいかず退職、離婚もして実家で布団かぶって引き籠り、東洋哲学の本を読みまくってネットに書いてたら、それが編集者の目に留まって出版、すると20万部を超えるヒットになったとか。昨今の出版業界では2万部で大ヒット、10万部ならベストセラーと呼ばれるそうなので、立派なもの。読んでみようかなと。


結果、漫画みたいな本です。数時間で読める。確かにわかりやすい。6章立てなのですが、各章の題でほぼ内容わかります。「1章 無我 自分なんてない ブッダの哲学」「2章 空 この世はフィクション 龍樹の哲学」「3章 道 ありのままが最高 老子と荘子の哲学」「4章 禅 言葉はいらねえ 達磨の哲学」「5章 他力 ダメなやつほど救われる 親鸞の哲学」「6章 密教 欲があってもよし 空海の哲学」以上。面白いけど…、今の若い人にはこうしないと伝わらないのだろうなと思いつつ、これでいいのかなぁ、とモヤモヤが残りました。


番外編 まだ読んでない本

『NEXUS 情報の人類史』ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社


大大ベストセラー「サピエンス全史」の著者の新作。(因みにサピエンス全史は全世界で4500万部を突破したそう、すごい!でもね、「ハリー・ポッター」はシリーズで世界6億部以上、第1巻の賢者の石だけで1億7000万部ですって、びっくりです。)


NEXUS、「言葉、文字、印刷、コンピューター、そしてついに登場したAI。古代からAI時代まで、人類の歴史をかつてない視座で読む。」との謳い文句。


夫が今上刊を読んでいます。夫は前からこれ読みたいと言ってて、信頼できる友達が、サピエンス全史よりこっちの方がすごいと言ったので買いました。私は、サピエンス全史も読んでないから、読むならそっちからと思って、でもまだ手も付け付けずにいます。


以上、秋から冬にかけて入手し、読んだ本たちのご紹介でした。


今、炎の雫の店内の本の展示台は「最近入手した本と冬に読みたい本」と題して、私の独断と偏見で選んだ本を並べています。

千葉在住の詩人・大島健夫さんの新作詩集も追加しました。


まだもう少しこのままにしておく予定です。温かいコーヒーでも飲みながら、手にとってみませんか。  (2026年1月30日 水野佳)













2025年12月28日日曜日

熊と人

今年の漢字は「熊」だそうです。確かに、熊に関するニュースがたびたび世間を賑わせています。日本にいる熊は、北海道のヒグマと本州のツキノワグマの2種類。私の住む千葉県は、本州で唯一熊がいない県として話題になり、観光客が増えたとか。


環境省の発表によると、4~11月の熊による被害は230人と過去最多になりました。死者が13人とこちらも過去最多。

熊の出没件数は、捕獲数を公表していない北海道を除いて36814件。

8月には北海道羅臼岳で登山者が熊に藪の中に引き込まれて翌日遺体で発見されるという衝撃的な事件がありました。それ以降クマによるニュースが頻発。被害が多いのは、岩手県、秋田県、青森県、福島県と東北地方が主。10月には、秋田県東鳴瀬村で、4人がクマに襲われて1人死亡。岩手県北上市の瀬美温泉では露天風呂の清掃中の従業員が熊に連れ去られて後に遺体で発見。新潟県湯沢町では駐車場で宿泊客が襲撃されたり、長野で雪下ろし中の作業員が襲われたり。数え上げたらきりがないくらい。

また、キャンプ場に現れたり、町なかのスーパーや倉庫や銀行に立て籠ったり、保育園や小学校に侵入したり。東京や神奈川でも、人の生活圏(観光地も含めて)すぐ近くで目撃情報、こんなに熊が身近に出没するようになったのは驚きです。

(写真は10月23日、岩手県盛岡市中津川の河川敷を移動する熊)


原因についてはいろいろ言われています。

個体数の増加、分布域の拡大、どんぐりなどの凶作によるエサ不足、狩猟者数の減少、里山の荒廃、過疎化と高齢化、耕作地の放棄や空き家増加による人の手の入らない領域の拡大‥。様々な要素が複合的に作用して、熊が人里に入り込む事例が頻発し、2016年以降はこれまでとは違う新しいフェーズに入ったようで、今後は熊が出るのは当たり前という時代に入るといいます。


そもそも、熊は賢い動物です。知能は高く、犬と霊長類の間、3~8歳程度と言われています。好奇心旺盛で学習能力もあり、人間でいうと小学生から中学生程度の記憶力、学習能力を持つと推測されますが、経験を積むと20~30代の知恵を持つとも言われています。人間の食べ物と味を記憶し再び訪れる、罠にかかった経験からその仕組みを理解して避ける方法を学習する、岩をどかして踏み台のように使うなど道具を使ったり、クーラーボックスの仕組みを理解して開ける、猟師をだますために足跡を消すなどの行動も確認されています。

ドアを開けたりするのは当然できます。だから作業小屋に入り込んで冷蔵庫のドアを開けて中のお米を食べたりできるのですね。そこまで賢いとは、私全然知りませんでした。びっくりです。どんどん賢くなったらどうなっちゃうんでしょう。


本来はほぼベジタリアン的な雑食。木の実や果実、タケノコや山菜を食べ、アリなどの昆虫を食べ、時に魚や動物の死骸を食べます。決して自ら狩りをして動物を獲って食べる動物ではありません。性格は臆病で、基本的には人間を避けるはずなのですが。

人馴れした熊は、人間を恐れる必要がないことを学習してしまった熊で、これは非常に危険な状態。そういう熊が増えてきてしまったことが、最近の熊被害の増加のベースにあるのなら、とても怖いことです。

(*この写真のクマは民家の庭の柿の木に2日間居座って柿を食べ続けました。)


熊を神性な存在として崇め、畏怖の対象としている民族もあり、それぞれ熊との付き合い方があります。シベリアでは熊は祖先とされ、ともに生きている存在であり、家族の呼び名で呼ばれています。先住民によってそれぞれのクマの祭りがあリ、狩猟は儀式的で、聖なる意味を伝えて行われ、狩った後は熊の力、知恵を身に付けるために食べます。ある民族では、一人の狩猟者が狩ることのできる数は限られていて、その数を超えたら、あの世からの罰を受けて自ら命を絶つことになっているそうです。


これに近いのがアイヌの文化。ヒグマは「キムンカムイ」として崇められる最高位の神の一つで、人間に肉や毛皮を与える存在。熊を狩ったら「イオマンテ」という霊送りの儀式を行い、その魂(カムイ)を神々の世界に送り返すことで、再訪とさらなる恵みを願います。冬眠中の熊を獲った際に子熊がいたら捕獲し、1~2年大事に育てて、成長したら豪華な装飾と食べ物を持たせて神々の国へと送り返します。育てることは神へのおもてなし、そうすることで神が地上に多く訪れてくれると考えていました。人を襲うなど、人との境界を越えた悪い神は「ウェンカムイ」。肉は食べず、魂を地上に返さないようにする特別な儀式を行って処理されます。

(この写真は北海道デジタルミュージアムより「カムイへの祈り―信仰」)








また、日本のマタギにもアイヌと同じような精神性があります。マタギとは、北海道や東北地方の山岳地方で、クマなどの大型獣を伝統的な集団猟で狩って正業をたててきた人々の集団のこと。巻狩りと呼ばれる方法で、熊を山の神からの授かりものとして尊び、独特の儀式と独特の言葉を用いながら役割分担して狩りを行います。熊は山の神の化身、魂を山に送り返す儀式を行い、獲物のすべての部位を余すところなくいただく、その一方で、マタギは知識と技術をもって熊が里に近づかないようにする共存の知恵を持っています。

現役のマタギが言うには、「巻狩りによって熊を威嚇し、ここから先は人間が住む領域として認知させる。それを数百年以上前から毎年欠かさずやり続けていれば、熊も寄り付かなくなる。自己防衛であり、暮らしを守る手段であり、熊との共存の知恵である。」


マタギを追った映像をみましたが、なんだかすごく荘厳で美しかったです。現代ではマタギは減少し、巻狩りが成り立たなくなりつつある、その状況を危惧しています。

(写真はJBpressセレクションより「冬のマタギ」/ 「阿仁マタギがクマを捕獲した際に行う『ケボカイ』山神様への感謝と授かった熊の供養、そして今後の豊漁を願う。」)


神話や童話の中にも度々熊が登場します。

神話の例。北ユーラシア(アイルランド)では、熊は祖先や精霊と同一視される神聖な動物であり、知性や癒しの象徴。ケルト神話で、アルトゥスは大自然の脅威を体現する森の王で力と勇気の象徴。アルティオは母性を象徴する熊の女神。


フィンランドでも、熊は神や精霊と同一視される存在。ここでも熊を狩った後、その魂を来世に送りだすための儀式として盛大な熊祭りが行われ、死と再生、豊穣を願います。フィンランド神話に登場する「ホンガタル」は松の木に由来するクマの母神です。


カナダでは、先住民にあがめられるスピリッド・ベアという白い熊の神様がいます。氷河時代の記憶を伝える神の使いとされ、森の守り神。特定地域に生息し、数は限られていて、大切に守られています。



熊は人間にとって親しみやすい存在でもあり、たくさんのお話のキャラクターになっています。お話の世界で最も有名なキャラクターは「クマのプーさん」でしょうか。イギリスのA・A・ミルンの書いた児童小説。熊のぬいぐるみではちみつ大好きなプーさんと、クリストファー・ロビンや森の仲間たちの日常が楽しく描かれています。


プーさんが何で赤い服を着ているかというと、クリストファーロビンがプーさんにミッキーマウスの赤い服をハサミで切ってきせてあげたからだそうです。(ディズニー版の裏設定では、ミッキーマウス自らが自分の服を着せてあげたとなっているらしい。)

来年はプーさん生誕100周年だそうです。長く愛されているプーさんです。


プーさんのモデルになったのはテディベア。キャラクターとして一番有名な熊はこっちかな。

テディベアは1902年第26代アメリカ大統領のセオドア(愛称テディ)ルーズベルトが、瀕死の熊を助けたというエピソードが漫画として新聞に載り、感銘を受けたお菓子屋さんがぬいぐるみを作って大人気になり、世界中に広まりました。欧米では、赤ちゃんが生まれたら最初の友達として贈る習慣があります。テディベアのぬいぐるみ、持ってる方、多いんじゃないでしょうか。

伊豆に「テディベアミュージアム」というのがあって、アンティークのテディベアが展示されています。HPで見た1904年製のテディガール、とってもかわいい!ぬいぐるみ作りの体験もできるみたいで、ちょっと行ってみたくなりました。(伊豆急の伊豆高原駅下車10分)



熊の絵本、たくさんありますね。「くまのパディントン」「くまのコールテンくん」「3びきのくま」「くまのこウーフ」こぐまちゃんのシリーズ、よるくまのシリーズ‥。

うちにあるくまの絵本で一番かわいいくまはこれかな。

「よるくま クリスマスのまえのよる」(酒井駒子作・白泉社)

炎の雫では今、クリスマス関連の本を展示していて、それにも入っています。欧米ではクリスマスは日本のお正月みたいなもので1月6日ころまで続くそうなので、年明けまでこのままにしておこうと思っています。


昨今の熊と人間の現実に戻りましょう。人に危害を与えるかもしれない熊をどうするか、駆除するのか、山に返すのか、人と熊の境界をどうやって守るのか、熊が出たらどう対処するべきか。答えはどこにあるのでしょうか。


熊と共存している(?)アラスカで暮らす日本人のネットの記事を読みました。アラスカには10万頭以上の熊が生息していて、町にもよく出没する、でも森で狩りをする人はいても、駆除しろという人はいない。生活の一部に熊がいることは当たり前。警察からの注意事項は、近づいて写真を撮るな、冷静で分別ある行動をとれ、本当に危害が加えられる危険がある時だけ110番(向こうでは911)しろ、というもの。(暗に熊がいるくらいで警察に電話するなと言っている。)。ゴミ箱は熊が開けられないような構造になっているそうです。(写真はアラスカのゴミ箱と熊。横に注意書き。アラスカ警察のFacebook)

熊は出没してもほとんど庭の木の果実などを食べていて、基本は人間や犬をみたら逃げる。年間数件しか被害は起こらないので、恐れず、ほっとけばいいという感じだそうです。事件を起こした熊を調べたら、過去にも人を襲っていたことがわかった例も複数あったようです。裏を返せば、ほとんどの熊は殺人グマじゃないということ。アラスカでは、それを人間がちゃんと理解しているのですね。そりゃそうだ、人間だって殺人者になるのはごくごく稀な例で、ほとんどの人はそんなことしないのですから。日本人は怖がりすぎ、熊が出たら殺されると思って大騒ぎしています。


興味深い研究もあります。人里近くに住むイタリアのヒグマは、小型化して攻撃性も低くなっているそうです。これは人間が攻撃的な個体を排除し続けた結果、遺伝子レベルでおとなしい熊だけが選抜されて生き残ったと考えられ、家畜化症候群に近い現象とも言えるとありました。

(写真はイタリアのアペニンヒグマ、なんかかわいい、ヒグマの種類とは思えない)



かつてオオカミが犬になっていったように、獰猛ではない、人間と共存できる熊が現れ始めているのかもしれません。

でも、人間の行いが、生物を、生態系を変えてしまっていいのかなと、複雑な思いです。


私たち人間は、生態系の食物連鎖の枠の中にはまらない、だとしても、自然界に生きる生物の一つにすぎず、生あるものの命をいただきながら生きているのです。それを忘れずに、熊も、その他の生物も、最大限に尊重しながら生きたいものです。


最後に、阿仁マタギの言葉から、この文章を。

「銃声の後の静かな時間は命と向き合う時間だ。地球上すべての生きとし生けるものの命は等価であり、スーパーで並ぶ牛や豚、鶏もすべて同じ命だということを改めて考えることが必要だと思う。人間はそうした『命』によって生かされている存在だということを今一度認識しなければならない。」


2025年、今年1年間、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

よいお年をお迎えください。 (2025年12月28日 水野佳)





 

防災訓練 炊き出し&AED

  2月22日、地域の防災訓練がありました。 私の住んでいる所の自治会はいすみ市岬地区の停車場と言います。駅の近くだからついた名前でしょう。私たちがここに引っ越してきた10年ほど前は、100軒近い世帯数だったのですが、年々減り続け、今では60軒を切ってしまいました。 停車場防災会...