2022年5月26日木曜日

人の悪意とそれを超えてゆく力

4月の終わりに、フィッシング詐欺に引っかかってしまった。対応に追われた1か月。

あー疲れたなぁ、と空を見上げると、青い空におもしろい雲が浮かんでいる。ちょっと心が緩んで、思わず微笑む。あの雲は、流れてどこへ行くんだろう、どんな形に変わっていくのかな。

そもそもは1通のメールだった。「アップルから返金完了のお知らせ」というauからのメール、でも偽物だった。何か変だなと思いはしたのだけれど、詳細はこちらというところをクリックしてしまった。2月に夫がauからUQに 変えて、手数料が後から返金されるかもしれないと言われていたのもあって、それかなと。出てきた画面はいつものauの画面と全く同じ、パスワードと暗証番号入れたら…そこから全く進まない。何度か繰り返した。私は夫名義のiPad使ってるので、そっちの方かもと思い、よせばいいのに夫の方のパスと暗証番号も入れてみた。それでも進まない、変なのと思ったら、直後に夫のポイントが使われてしまった。韓国のゲームサイト。それでauに電話して、やっとフィッシング詐欺と気づいた。何度もやり取りして、パスワードと暗証番号変更し、au ウォレットカードの再発行をした。

ところがそれでは終わらなかった。5月の連休中、お家でまったりしてたら覚えのない利用速報が来た。今度はau payじゃなく 私のクレジットカード直の使用だった。またauやクレジットカード会社と何度もやり取り、何度も説明し直して大変。使われたのは、ネットフリックスとグーグル関連のゲーム。ネットフリックスは直接連絡してと言われて、即そのカードの停止と返金処理してくれた。金額は大したことないけど私のカードで登録されていた。グーグルは電話窓口はないのでメールでということで、メール出したけど確認できないという返事が来て、またカード会社に電話して……結局、クレジットカードも再発行し、1か月かかって、全部返金してもらえたけど、すごーく消耗した。
羽鳥さんの番組でも、メールのリンクをクリックせずに自分でサイトから入りなおせ、と再三言ってたのに。お巡りさんにもそう言われ、息子にはアドレスをちゃんと見ろと言われ、不注意だったなと身に沁みた。皆さんも気をつけて。

それにしても、世間は悪意に満ちている。少しでもスキがあれば付け込もう、ちょっとでも儲けよう、得しようという、ささやかな悪意を持った人がどれだけいるのだろうか。
詐欺ならまだいいかもしれない、いじめ、中傷、差別、各種のハラスメント、あおり運転なんかも、自分のうっ憤を晴らせれば人を傷つけてもいい、自分がやったとわからなければ構わないという、普通の人の中にある悪意。

そして世界は今、さらに大きな悪意の中にある。
ロシアによるウクライナ侵攻、戦争状態の真っただ中にあるこの時に、「カンタ!ティモール」を久しぶりに見た。そして、東ティモールには、そういう悪意を超えてゆく力がある、と強く感じ、この映画の持つメッセージ性に心を動かされた。

『この島を襲った悲劇と、それを生き抜いた奇跡の人びと。その姿が世界に希望の光を投げかける』

インドネシアによる一方的な軍事侵攻に対して、応戦するのではなく、27年間闘い続けて勝ち取った奇跡の独立。それから20年、5月20日は東ティモールの主権回復20周年の記念日だった。彼らの闘い方は、人間はどうすべきかの大きなヒントとなる。
映画の中で南風島渉さんが語る。「東ティモールの人たちは、捉えたインドネシアの兵士に対して、正義とは何か、人間が生きるとはどういうことかをずーっと話して聞かせ、拷問することなく無傷のまま帰す。自分の家族を殺したり、レイプした、そういう相手に、なかなかできることじゃない。それが結果的にはインドネシアの中に多くの東ティモールシンパを生むことになった。」と。

初代大統領シャナナの言葉。「世界の指導者たちよ、民衆に平和を返せ。もうやめるんだ、頭の中の欲望を追うのは。戦争したいやつなどいるものか、武器を売りたいトップだけ。政治家よ、その金は何だ、よその政府と何をしている。足元を見ろよ、やるべきことがあるだろう。自分の世界を良くすれば、世界にも平和が訪れる。」

ルリックの守り人の言葉。「巨大な力ばかりを信じ、内にある価値に気づこうとせず、外側から奪うなら、その先で待つ未来は明らかだ。大地、水、目に見えぬものへの敬意を忘れた時、人類は絆を失う。大地を敬い、その恵みの中で人の絆を結びなさい。人間は同じ一つの自然に生かされて家族になれる。」

彼らの言葉は、世界がどんなに悪意に満たされていても、人間の中には、悪意を超えてゆく力が確かに存在するのだということを気づかせ、信じさせてくれる。

では、どうやったら悪意を超えてゆけるのか。
広田奈津子監督は、5月21日に東京のシネマ・チュプキ‣タバタでの映画上映アフタートークでこんな話をしていた。
「ティモールを旅していて、あちこちで『日本に何ができますか?』と尋ねたら、『あなたの世界を良くしてください、あなたの仕事をしてください、地域地域が健康になっていかないと世界に平和は訪れない』という答えが返ってきた。それは大統領だけじゃない、アレックスも、村のおじいちゃんも、みんながそう言った。」
彼女は、「朝新聞の見出しを見て『ああっ…!』って思ったときの想い、『良くないよ…』って思った時の想いだとかが、もしかしたら何千キロも飛んで、誰かを動かすかもしれないし、世界ってそうやって動いて歴史が変わっていくかもしれない」とも言う。世界はすべてが繋がっている、自分のいる場所で、自分の暮らしの中での小さな想いが、世界を変えてゆく第一歩だと信じている奈津子さん、なんて素敵な人だろう、愛に溢れている。

5月20日の炎の雫での上映会は、コロナ以前の上映会のようになり、マルシーラも歌わせてもらったし、観てくれた方たちと話もした。その中で、ティモールには“ありがとう”という言葉がない、という話になった。これは、上映会をするとよく話すことで、久しぶりだなあと思いながら話したのだけれど、期せずして21日のチュプキのトークの中でも語られていた。“あなた”と“わたし”が一緒だから、ありがとうがない。“私はあなたに感謝します”ではなくて“わたしたち二人にいいことがおきたね”という感覚だと。これってすごいことだ。裏返して考えれば悪いことも同じ、“あなたとわたしにによくないことがおきたね”ということ、どっちが悪いわけでもない。だから、東ティモールの人たちは相手を憎まないのか、とストンと落ちた。そもそも、敵という言葉がない、強いて言えば、今は別の方向を向いている人だという話もあったなと思い出す。
「長老は『お前の見ている外側はお前の内側だ。やり返してもいいけど、やり返す相手は自分自身でもあるんだ』と言った、哲学的ですね」と奈津子さん。
「カンタ!ティモール」深い!

この空は東ティモールにも、ウクライナにもつながっている。

「♪空を見上げて美しいと思うなら、
ほほをなでる風に懐かしさを感じたら、
あなたとわたしは同じ心、
見つめ合えば、手を取れば、分かり合えるさ♪」
これはだいぶ前に書いた『SHARE』という歌の歌詞。

東ティモールには、輪になって手をつなぎ、大地を踏みしめて踊るテぺという踊りがある。テぺは心を強くするという。そんな風にみんなが同じ心で手を取り合う日が来ますように。

世界中どこだって、沈む夕陽は美しいし、夜が明けて昇る朝陽は、希望へと続く。
(2022年5月27日 佳 空も雲も夕焼けも、私の住む千葉・いすみの写真です)

*5月21日のシネマ・チュプキ・タバタでの、広田奈津子監督と宮城里佳さんのトークを引用させていただきました。他にも興味深いお話がたくさん、トークのほぼすべてを書き起こしてくださっています。チュプキのFacebookページから読むことができます。ぜひ読んでみてください。 今こそ、カンタティモールです!






 

新生・炎の雫

「炎の雫」新しくなりました。 東ティモールコーヒーから自家焙煎コーヒーへ。コーヒーの銘柄を増やして、カフェでも飲めるし、豆の販売でもご購入いただけるようになりました。 ラインナップに加わったのは、タンザニア・コロンビア・メキシコ・グァテマラ・エチオピアシダモの5種類。 また、焙煎...