2025年7月28日月曜日

令和の米騒動

去年からお米の値段が高騰しています。店頭小売価格の平均は2024年12月には5キロ4000円を超えました。というか、実際は銘柄米だと平気で5000円を超えてたし、それ以上にスーパーなどではお米のない状況に陥り、大騒ぎになりました

5月に政府が備蓄米の放出という画期的な政策をとって多少値段が下がってきたものの、今でも小売価格の平均は5キロ3500円(備蓄米、ブレンド米を含む平均)を超えています。銘柄米だと5キロ4300円、十分高い。10年前の価格だと5キロ2200円くらいなので、今のほぼ半額です。

令和の米騒動と言われています。ここ30年ほどでお米価格の高騰は1993年と2004年の2回起きていますが、今回はちょっとこれまでとは違うようです。

今回は不作というより需給バランスの問題と対応の不備。2023年産の作況指数は平年並み、生産量は662万トン。2024年産は679万トンと前年より増加、作況指数は101で平年並み。。ただし酷暑の影響による品質低下や需要の増加で30万トンの供給不足になりました。これは備蓄在庫の3分の1程度の不足に過ぎないのに、小売価格はどんどん上昇、お米がない騒動に発展しました。お米の値段について、深く考えたことはなかったので、調べてみることにしました。

うちは、長年、生協でお米を買っていたので、最初は世間の騒動とはあまり関係なく、ちょっと値段が上がってきたな、くらいでしたが、そのうちお米が抽選になって、2回続けて落選して大変!となりました。生協は基本単銘柄ですが、産地や収穫年が違うお米のブレンド米ができたり。今でも抽選体制は続いています。近所の産直にお米を買いに行ったら、こっちも値段が上がってて、なおかつ品質があまりよくなくて。一時期はスーパーには5000円くらいのお米しかなくて、ほんとにお米ないんだと思いました。

過去の米騒動を振り返ってみましょう。

1993年は冷夏で前年比30%以上の大幅な供給減、コメの作況指数は74で著しい不良、外国産米(タイ米、中国米、カリフォルニア米など)の緊急輸入が実施され、平成の米騒動と言われました。当時の需要量は1000万トンだったのに、供給量は780万トン、不足量は200万トンを超え、その時の備蓄米量は23万トンで全然足りず、外国産米を輸入しました。タイ米、食べましたねぇ、お料理番組などでどうやったらおいしく食べられるか、さかんにやってました。うちではチャーハンだったなぁ、と懐かしく思い出しました。

これをきっかけに、コメは一粒も輸入しないと言っていた日本は、コメ市場を部分的に開放し、ミニマムアクセス米が輸入されることになりました。また、この時以降、備蓄米は増量され100万トンとされました。これは10年に1度とされる作況指数著しい不良でも不足しない量ということのようです。

2003年も冷夏の影響で前年比15%減の110万トンの収量減、当時の備蓄米量150万トンに迫る収穫減で小売価格は年間で前年比1.14倍となりました。どちらの年も、翌年の作況は良く一時的なコメ不足で終わっています。


備蓄米とは、政府が不足の事態に備えて米の備蓄を行う制度です。政府が一定量を買い入れ、保管し、必要に応じて市場に放出します。備蓄量は約100万トン(年間21万トン)、約5年間保管され、5年を過ぎると飼料用に転用されたり、フードバンクや福祉施設、学校給食で活用されたり、海外支援に回されルこともあるそうです。


不測の事態に備えているはずの備蓄米ですが、ほとんど放出されたことはありません。1993年も2003年も、備蓄米は放出されていないようです。放出されたのは、2011年の東日本大震災の時に40万トン(当時の備蓄量の4%、被災者への無償提供ではなく、卸売業者への売却)と、2016年の熊本地震の時の90トン(備蓄量の0.009%)という記録しか見つけられませんでした。今回の備蓄米の供給は本当に画期的なことなのです。


今まで備蓄米の放出が行われてこなかったのは、市場価格への影響、買い戻し制度、流通経路の問題があります。備蓄米を放出すると、米が市場に出回って価格が下落し農家の収入に影響を及ぼすこと。入札形式で備蓄米を放出するため、中小の卸売業者や小売業者に不利であること。そして買い戻し制度。備蓄米には放出後1年以内に(最近5年に延長になったらしい)入札で受け渡された業者から同量同品質のコメを政府が買い戻すという条件が付いているそうです。え、何??受け渡しの対象となるのは年間5000万トン以上の取り扱いのある集荷業者、そこから卸売業者、小売業者と流通していくから時間がかかる。備蓄米が放出されても、当初はスムーズに流れず、一向に消費者には届かないという状況でした。どこかが抱え込んでいるのかと疑念を持たれたり、消えた何万トンとか言われたり。このため、小泉農水相は直接小売業者に受け渡し、返納する買い戻し制度もなしにした随意契約による備蓄米の放出を行いました。現在、2022年産の古古米、2021年産の古古古米、2020年産の古古古古米が流通していますが、8月末までの販売になります。これは、申請するときに8月末までに販売できると見込まれる量を申請することになっていたため、8月末までに売り切らないと申し込み資格取り消しなどのペナルティがあるからです。精米能力の問題もあるので、延長の声をあるようですが、5キロ2000円台の備蓄米を買いたい方はお早めに。


そもそもお米の値段はどうやって決まるのでしょうか。

お米には3つの価格があります。JAが農家に提示する概算金、全農集荷業者が卸売業者に提示する相対卸売価格、そして小売業者が消費者に提示する小売価格。

現在のお米の価格のもとになっているのは概算金です。稲刈り前の7~9月頃に、生産見通しと販売契約状況をもとに概算した金額が全農各県の本部が提示され、それをもとに個々のJAが農家に価格を呈示する。また、県本部は保管・運送コストを考え流通経費や手数料を乗せて卸売業者への相対取引価格を決定します。JAお米の取引量は全体の40%で、JA以外の買い取り業者はJAの概算金の提示後に買取価格を呈示するので、基準はJAが作っていることになります。

農水省は「コメの生産量は民間が自主的に決定し、価格は市場で決定されている」という建前ですが、米の卸売市場は現在も日本には存在しません。1960年から自主流通米が認められ、1980年代になると実質的には政府の手を離れましたが、米の価格決定に政府が関与していたともいえます。食糧管理法は1995年まで存在し、それは食糧法に切り替わったけれど、誰でもお米を販売できるわけではなく、2004年にようやく米の流通は自由化されました。でも今でも政府は米の生産量目標の提示は行っています。減反政策は2018年に廃止されたものの、飼料用コメ・麦・大豆などへの転作を促進する補助金制度が存在しています。国は米の価格に関与していないと言えるのだろうか、と思ってしまいます。


日本人の米の消費量は年々下がり続けて一人当たり年間51㎏前後、1962年のピーク時には118㎏だったので半分以下になりました。お米の自給率はほぼ100%。日本の食糧自給率を考えると、カロリーべ―スの自給率は38%なので、自給率においてのお米の重要性がわかります。


令和の米騒動を機に、お米の作付面積を増やす動きが広がっています。需要回復を見込んだ農家さんの判断での作付面積は去年より10ha以上増えるらしい。国や農協の決めたことに従うのではなく、自主的にどれだけお米を作るか決められるようになってきたのは喜ばしいことです。本来、どの作物をどれだけ作るかは、農家が決めればいいこと、当たり前のことがお米についてはそうなっていなかったのだと今頃知りました。現在農協を通して販売される米は4割ほど(かつては100%だった)、スーパーや小売店による直接買い付け、農家直売やインターネット通販など様々な販路ができてきた今だから、農家の自主的な判断が実現可能になった、それを更に推し進めていってほしものです。


これはうちの近所の田んぼの今日の写真。千葉では4月に田植えされた稲が黄色く色づいて頭を垂れてきました。一般には田植えから120~150日で収穫。だとすればもうちょっと。千葉では年々田植えが早くなり、収穫も早くなっています。近年は台風が来るというと、その前に刈り取っちゃおうと作業してるのを見かけたりもします。今年は米不足の影響からか早く収穫するのかな。


余談ですが、稲を収穫した後、もう一度田植えをして収穫するのを二期作といいます。(私はこれを二毛作と勘違いしていました。二毛作はお米の収穫後、違う作物を植えて収穫すること。稲の後に麦とか。)

稲を刈り取った後にまた伸びて穂が出ているのを見かけます。ひこばえといいます。このひこばえを育てて収穫するのが再生二期作。一回の田植えで2回収穫する技術、温暖化を逆手に取った方法として研究されているようです。これ千葉でできそうです。この辺の人はそのままほっぽっといてるけど。

地球温暖化の影響で二期作ができるところが増えているとか。こんなところにも温暖化なのですね。


今年以降のお米の価格はどうなるのでしょうか?

今まで5キロ2000円くらいで買えていた銘柄米が急に倍以上の値段になって、それがもとに戻ればばいい? そうではないようです。多数の農家さんが「お米は安すぎる」とことあるごとに表明していました。一方、消費者は安い方がいい、この乖離が問題です。ある農家さんが、お米の適正価格は5キロ3000~3500円くらいじゃないかと言っています。農家も設備投資やもろもろの費用を払って何とかやっていけて、消費者も納得して払える金額がそのくらいだろうと。なるほどと思える値段です。どうせなら安い方がいいと思ってしまう自分を反省。もちろん銘柄によって、作り方によって、価格差があって当然。ばらつきがあっていい。農協の概算金は地域の銘柄によって一律に決まっています。それに対して卸売業者などに直売している農家は、それぞれ契約して値段を決めているようです。だからネットなどではすご~く高いお米もある。アマゾンで令和6年産有機栽培米のコシヒカリで5㎏13800円というのもありました。それでいいんじゃないでしょうか。どこの農家のどういうお米だからこの値段、まるでコーヒーみたいですが、そうなっていくべきだと思います。

国の役割は市場で売れる作物を自由に作れる環境を整えること。農業を守ることは、補助金を出して農家の収入を保証することではなく、消費者が欲しいと思うような商品を農家が提供できるよう支援すること、そういう観点からお米の流通、価格などを見直してほしいと思います。(2025年7月28日 佳)





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