2023年4月27日木曜日

会津の旅3~ダリと裏磐梯編

 会津若松から裏磐梯へ。

会津若松から磐越西線で30分、猪苗代駅に着きます。そこからバスで40分ほどで諸橋近代美術館です。今回の旅の第2目的です。

バスを降りてびっくり。こんな山の中に、こんな素敵な美術館があるなんて!(イメージは中世の馬小屋だそうですが…)

諸橋近代美術館は1999年の開館。実業家諸橋廷蔵のコレクションを基に作られました。諸橋はシュルレアリスムに興味を持ち、特にサルバトール・ダリに衝撃を受けて蒐集を進めました。ダリのコレクションではアジア最大の美術館と言われ、ダリ作品約400点を所蔵しています。他にも、セザンヌやゴッホ、ルノアールも所蔵、ダリに次ぐコレクションとしてイギリスの現代アーティスト・PJクルックの作品も所蔵しています。残念ながら常設展というのがないので、今回はこれらの作品は見ることができませんでした。


諸橋近代美術館は冬季休館が終わってオープンしたばかり。
「ダリとハルスマン」という企画展が開催されていました。

ダリと言えば誰もが思い浮かべるこの写真を撮ったのがフィリップ・ハルスマンです。この美術館のチケットにもなっています。企画展には「天才の競演、再び。」という副題が付けられていました。1900年代の初め、ほぼ同じ時代に生まれた二人は、第2次世界大戦を機に亡命したアメリカ・ニューヨークで、1941年に出会います。
以降37年に渡って、ハルスマンが亡くなるまで、友好を続け、実験的な作品を作り続けました。それも、発表する予定などないまま、お互いに何か思いついたら連絡を取り合ってやってみる、という関係。すごいですよね。
このダリと猫が飛んでる写真、見たことがあるんじゃないかと思います。これ1948年の作品。当時は今みたいな映像加工技術もなく、実際にダリは飛んで、猫はハルスマンの家族が放り投げて、何度も繰り返して撮ったそうです。(この2つの写真はパンフレットから)

ハルスマンはアインシュタインやマリリン・モンローなどの時代を彩る著名人の写真を撮り続けた人物として知られ、雑誌「LIFE」の表紙に100回以上起用されています。
ダリとはよほど波長が合ったのでしょう。この2人の関係は全く対等、全然ダリ主導じゃない、むしろハルスマンからけしかけてるみたいな場合も多々あったようです。

4つの展示室のうち第3室のみが撮影可能でした。
この作品は「官能的な死」1951年。裸体で作った髑髏。
             
こちらは「シュルレアリスムとは私自身だ」1954年。
ダリ初期の代表作「記憶の固執」(1931年)のオマージュ。
柔らかくなっているのは時計ではなくダリの顔。
ダリは、「時計というものはすべからく柔らくなくてはいけない」と言っています。カイロスってことかな。
この作品と同じ1954年に、ダリは「記憶の固執の崩壊」を描いています。何か関係があるのでしょうか。
(この2点は第3室で私が撮った写真です)

この展覧会、モノクロ写真が多くて色が少ない。それでもところどころに、色彩のあるダリの作品があります。その一つがこれ「ガラとロブスターの肖像」1933年。この絵、妙に頭に残っちゃって、ふとした時にロブスターが乗った顔が浮かんだりします。ガラはダリにとってすべてと言える女性、何もかもガラに支えられている。(これはポストカードの写真、展覧会で本物見られました)

「反陽子的聖母被昇天」1956年。こちらも展示されていて見ることができました。(これはパンフレットからの写真)聖母マリアもガラですね。
この作品のそばには、「私は原子爆発に思いふける」や「ダリ・アトミクス」「ダリ爆発」などの題名が付けられたハラスマンの作品が並べられていました。とても刺激的。
そういえば、「ガラの額にメデューサの頭を描くサルバトール・ダリ」なんて作品もありました。

展示室4室分の外側は長いロビーになっていて、彫刻作品が並べられています。ほぼ全部ブロンズです。中にはどう見ても木製に見える椅子とか、プラスチックみたいに見えるチェーンとかもあります。柔らかい時計をモチーフにしたものも多い。彫刻作品は晩年のものが主です。これは「不思議の国のアリス」1977‐1984。これアリス?と思いました。(ポストカードの写真です)

突き当りがテトゥアンルームで「テトゥアンの大会戦」1962年の大きな絵が展示されています。これがなんとも不思議な絵で、謎がいっぱいある。解説ビデオを見て、作品見てと繰り返して、結構長い時間楽しめました。他にも実験映像みたいなビデオを流しているコーナーもあって、ずいぶん滞在してしまいました。

この作品は、「ダンス(ロックンロール)~セブン・ライブラリー・アーツより」という1957年の作品。創設者の諸橋廷蔵が、美術館開館までずっと自分の書斎に置いていたものだそうです。
ダリらしい作品ですね。
残念ながら今回は展示されていなくて見られなかったので、ポストカード買ってきました。いつか見たいなぁ。



裏磐梯 五色沼とペンション

美術館から徒歩で今夜宿泊するペンションへ。そこに荷物を置いて、ペンションのご主人お勧めの五色沼へ散歩に出掛けました。

1888年の磐梯山の噴火で山体崩壊が起き、土砂で川がせき止められて数百の湖沼ができました。中でも五色沼と呼ばれる湖沼群は、火山性物質の影響もあって、独特の色彩を持つようになった神秘的なところ。季節、天候、時間によって様々に色が変わります。五色沼最大の沼、毘沙門沼へは、ペンションから歩いて10分ほど。この日はあいにくの曇りでしたが、それでも十分魅力的な色を見せてくれていました。
こんな感じで沼のほとりに木で作られた歩道が続いています。片道約4キロの自然探勝路があって、毘沙門沼から8つの沼を廻りながら裏磐梯高原駅まで歩くことができます。ちなみに、裏磐梯高原駅は電車の駅ではなくてバス停です。私たちが毘沙門沼に着いた頃はもう夕方でしたが、ボートに乗ってる人もいて、お店もいくつもあり、観光地らしさがうかがえました。ただ、4時半を過ぎるとみんな閉まってたけれど。

毘沙門沼のほとりを少しだけ歩いてみました。さすがにもう歩いている人はいない、「クマ出没、注意!」なんて書いてある、そういえばさっき戻っていった人はリュックに鈴付けてたっけ、怖いかも、なんて思いながら行って、なんだかポツンと雨?なんて感じたので、
途中まで行って引き返しました。それから湿地園と書いてある方へ行ってみました。樹がいっぱい、すくっと立ってるのもあれば、こんな感じに絡み合ってるのもある。この間も木の道が張り巡らされています。いいなぁ。


これ、水芭蕉です。水芭蕉って夏じゃなかったっけ?
ゼンマイみたいなものがニョキニョキ生えてるところもあるし、でっかいフキノトウが咲いちゃったみたいな花もある。グーグルレンズで検索したら、ホワイトバターバーって出たけど本当かしら。折れた木もそこここに転がってる。今、湿地は普通の陸地に変わっていく途中なのだそうです。それが見られるというのは大変希少なことだ、みたいな看板がありました。

この辺りは標高800mを超えていて、高尾山の頂上より高い。
なのでまだ桜も咲いています。晴れていたら、さぞきれいだったでしょう。これは、毘沙門沼から裏磐梯ビジターセンターへ戻る途中の道です。そういえば、諸橋近代美術館の前庭にも桜咲いてましたね。会津では今年は桜が早くて、もうすっかり終わっちゃったと言ってたけど、裏磐梯はまだOKでした。

しばしのお散歩を楽しんだ後、ペンションに戻りました。
「クリッターハウス」ここ、とってもいいペンションでした。お部屋はツイン、というかサブベッドもあって3人泊まれそう。お風呂も3つあり、夕食と朝食は洋食。部屋数は5つとこじんまりしていて、とても落ち着く感じ。トイレと洗面所は部屋の外だけど、まるでおうちみたいです。
この日の宿泊客は私たちだけ。

食堂では薪ストーブが燃えていて、ゆったりとディナーをいただくことができました。くまちゃんもくつろいでます。
お食事はフルコース、すっごくおいしい!(会津の旅2をご覧ください)ご主人との会話も楽しい。この辺りのペンションはほとんどが移住者だそう。ここのご主人も、以前は東京で仕事してたとか。やっぱり冬が大変だとのこと。
この日は寒くて、最低気温は4℃。玄関の脇に雪が詰まれてる。山はまだ雪をかぶってるし、いつごろまでストーブ使うの?と聞いたら、連休ころまでかなと言っていました。

翌朝、晴れました。
部屋の窓から差し込む朝の光。高原の朝です。朝食もとってもおいしくて、食べすぎちゃいました。ここ、絶対また来たい。今度は五色沼トレッキングコース歩きたいです。

バス停まで送っていただいて、バスで猪苗代へ、磐越西線で郡山へ、郡山から高速バスで帰ることにしました。今回の旅、行きの新幹線とホテルの予約して、それから勝常寺に拝観予約電話しただけ、あとは行き当たりばったりで動きました。帰りも新幹線じゃなくてバスにしようかと前日に決めてネットで予約。こんなことは初めて。でもこれはこれで楽しい。
なかなかいい旅でした。
でもね、ペンションを出てから新宿経由で家に帰りつくまで約10時間!疲っかれた!!
次はやっぱり新幹線でしょうか。
…会津の旅・完…  (2023年4月27日 佳)


























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