2016年3月10日木曜日

「逃げ遅れる人々」

  


東日本大震災から5年が経ちました。

あの日、私は、東京の中野特別支援学校にいました。当時の仕事は、障害児の放課後支援のNPO で、ちょうど知的障害の高校生の子どもたちを学校に迎えに行っていました。大きな揺れで、その場にいた全員が学校の体育館に避難。そのままそこで4時間ほど待機、保護者の方に連絡がつくまで待ってくださいと言われて、体育館で障害のある子供たちと居ました。携帯もつならがず事務所に連絡も取れず、状況もよくわからない、でも意外と落ち着いていられました。不思議だったのは、子供たちも静かに待っていられたこと。たくさんの障害児がいて、パニックを起こしたり大変なことになるだろうと覚悟しましたが、そんなことは全然ありませんでした。

彼らは状況を理解し、どうしようもないことを感じ取り、じっと待っていたのかもしれません。

あれから、もう5年になるのですね。

 

来週、炎の雫ではドキュメンタリー映画「逃げ遅れる人々」の上映会を行います。3月17日木曜日、19:00スタート。1ドリンク付き1500円。

 

 私がこの映画に出会ったのは、2013年の秋。当時勤めていた児童館の先輩が、映画の上映会と監督のトークを企画し、そこに参加しました。監督は、、映像グループ「ローポジション」の飯田基晴さん 。ローポジションという名前には、低い視点から弱い人たちに寄り添うという思いが込められています。

そういう方なので、「若いときから、障害のある人たちにもいろいろかかわってきた、なのに、震災の時、彼らのことなど思い出しもしなかった。そういえば障害のある人たちはどうしていたのだろうと思ったのは、ずいぶん経ってからでした。」と話されました。

 被災した障害者のためにまず動いたのは、障害を持つ人たち、つまり当事者支援。障害者の視点で、生きるために必要なもの、なくてはならないものをピックアップし、それを持ってすぐに出発したそうです。

 避難所や仮設住宅に入った人、また周りに迷惑をかけるからと避難をあきらめた人、原発事故のために避難区域に取り残された人、行き場を求めてさまよう人、…飯田さんは丁寧に話を聞き、映像に記録しています。

 私は、原発の問題に直面した福島の車いすの女性が、「私たちは何もしてこなかったんだ」とつぶやく場面に胸を打たれたました。あの時何が起きたのか、障害をもつ人たちが何を感じ、何を考えたのか、それがどう続いているのか まずはそれを知ること。そして、考えること。それが必要だと思います。

 

 東北の復興は全然進んでいない、と2年半前に飯田さんは言っていましたが、5年経った今も、全然進んでいないと聞きます。仮設住宅の期限はあっても、行く先ができていないから、延長せざるを得ないというところもあります。新築の家を建てる人がいる一方で、どうしようもなく、何も変わらない人がいる、場所によって、人によって大きな差ができているとも聞きます。被災地から離れていると、すでに過去のことのように思ってしまうこともあるけれど、そうではないのだと思い出さねばなりません。原発の問題ですら、ニュースにあまり登場しなくなっている現実。何も解決していないのに、忘れてしまってはいけないのに、忘れられようとしていること、それを考えなくてはと思います。

 

 今まで、炎の雫では、この映画を2回上映しています。

 

2014年の5月には、「カンタ! ティモール」と「逃げ遅れる人々」の連続上映をしました。その時、ブログに書いたのが以下の文章です。

この3日間に考えたのは、人が生きていくことの重さ・命の大切さ。それを感じ、考えるきっかけになるというだけで、この上映会の意味があったと思っています。映画を見てくださった方が、それぞれの生活の中で、思い出したり、考えたりしてくれればいいなあ、それがこの先、何かにつながっていくのでなないかと思います。もちろん私たちも考え、行動し続けていきたいと思います。”

 

 さて、あれから自分達は何を考え、何をしてきたのか、反省と自戒を込めて、改めてこの映画に向き合おうと思います。どうぞ、あなたも考えてみてください。多くの方の参加を、お待ちしています。 

 

(3月10日 佳)


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