2024年5月29日水曜日

長野・アートな旅


長野に行ってきました。
目的は、3つのミュージアムと1つのブックカフェ。どれもずーっと行きたいと思っていたところ、やっと実現しました。

まずは新幹線で長野へ。長野まで1時間半で着いちゃいました。青い空に白い雲、山並み連なる風景、信濃の国です。

何はともあれ善光寺。
連休後の平日ですが、結構にぎわっています。創建1400年の古刹、ご本尊は一光三尊阿弥陀如来像ですが絶対秘仏で非公開。7年ごとに前立本尊が御開帳されます。(前回は2022年でした。)仏像大好きな私としては、見られる仏像がなくて至極残念。


本堂の手前には六地蔵。輪廻転生の6つの世界で人々を救う菩薩。1759年建立されましたが、戦争で軍需物資供出に出されて昭和29年に再興されたもの。
左端のひと回り大きな延命地蔵、別名八百屋お七のぬれ仏。江戸の大火を出したお七の霊を慰めるために作られたという言い伝えがあるそう。

仁王門も2度消失し、今のは大正7年の再建。でもいい感じ。

「牛に引かれて善光寺参り」とは、思いがけないことや他人の誘いでよい方に導かれること。不信心な老婆を導くために、観音様が牛に化身して角に洗濯物を引っかけて追いかけさせて善光寺に導き、それによって老婆が信心深くなったという言い伝えによるそうです。

目的その1・長野県立美術館の東山魁夷館。

1966年開館の長野県信濃美術館に東山魁夷館ができたのは1990年。それが2021年に長野県立美術館として新装開館されました。善光寺の隣、城山公園一帯の整備とともに行われたリニューアル。ミュージアムも屋外も、とても開放的で気持ちのいい空間でした。

東山魁夷は若いころから大好きです。東山ブルーと呼ばれる青に魅せられ、繊細な色合いに惹かれ、独特な静謐感に包まれる心地よさ。
魁夷館には、スケッチや秀作も含めて、素晴らしい作品が並んでいます。凄い。圧倒的。これは魁夷の絶筆と言われている「夕星」のポストカード。5月6日が命日故に、この時期に本物が展示されていて、心に染み入るような作品でした。

長野美術館3階のカフェのテラス席からの風景。山の手前にある屋根は善光寺。光を浴び、風を感じながらのんびり休憩できます。ケーキやソフトクリームもおいしかった!

東山魁夷は1999年に91歳で亡くなりました。善光寺大本願に葬られています。

翌日、松本へ移動。国宝松本城です。こちらも結構な人出、外国人が多い。連休中は大変な混雑だったとか。城内に上る行列に加わってしまい、あまり考えずに登ったら、これが大変で、階段は狭くて急で、人も多くて怖い。足がガクガクになりました。上まで登っても大して面白くないし。お城は外から眺める方がいい、これからは中に入るのはやめようっと。

そもそも江戸時代までに建てられて現存する天守は12城しかなく、そのうち国宝は5城のみ。姫路城、彦根城、松江城、犬山城、そして松本城です。どちらかというと白いお城が姫路城と彦根城、黒いお城が松江城と松本城。犬山城は一番古くてコンパクト、全国の天守のモデルになった洒落たデザインのお城と言われています。
私たち、何年か前に犬山城に行きました。今は亡きやなぎさんのライブを聞きに行ったついでに。犬山城の方が、もっと階段急で、梯子登ってるみたいだったと記憶しています。

松本城をあとにして、松本の街を散策。魅力的な通りがたくさんあります。縄手通りの入り口にカエルのオブジェ。芸大から寄贈されたものだそうです。かなり個性的。町並みは雰囲あって素敵。ちょっとしたギャラリー、陶器、雑貨、アクセサリー、もちろん飲食店も、ちょっと入ってみたいなというお店がたくさんあって寄り道だらけ、あっという間に時間がたってしまいます。
中町通りの松本ブルワリーでクラフトビールで一息。ちょうど「工芸の5月」というイベントを開催中で、私は工芸の5月と名付けられたビールを、夫はラガーをいただきました。(中町通り店の2階のスペースで疲れを癒す水野たかしです。)


目的その2・松本市美術館 特集展示「草間彌生 魂のおきどころ」


松本駅からあがたの森通りを歩いて15分弱、松本市美術館があります。通り沿いの木立に巨大なチューリップ、草間彌生だ!エントランスには色鮮やかな水玉模様の植物、建物の壁は一面真っ赤な水玉。うわーー草間彌生だ。
嬉しくなっちゃいます。ここ、ホント、来たかったんです。

これは「果てしない人間の一生」という作品のポストカード。
ニンゲンなんてしょせん虫みたいなもんかと思えてきて肩の力が抜けますね。展示されていた平面の作品は少なかったけど、初期の作品ですごくいいなと思うのがあったりします。床からニョキニョキ生えてる立体作品もチンアナゴみたいなのがあったりして面白い。

草間彌生と言えばかぼちゃ。これは「大いなる巨大な南瓜」という作品、これだけで一部屋になっていて、ここだけ写真OK。奥にいるのは私、黄色い服を着ていたので同化してます。
ミクストメディアとされている鏡を使った作品が多くありました。特に印象に残ったのが「魂の灯」鏡張りの小さな部屋に入ってドアを閉めると無数の光がきらめいていて、まるで宇宙にいるかのよう、夢のようでもありました。「天国への梯子」という作品も良かった。天井からぶら下がっている梯子は穴の中をずーっと上にも下にも続いていくように見える、下をのぞき込むのが怖いぐらい。実際は鏡なんだけど。梯子は色が変わり続ける。それを眺めていると、時間の感覚が溶けてなくなっていくみたいでした。

草間彌生は1929年に松本の旧家に生まれました。幼いころから花が人のような顔になって話しかけてきたり、犬が人の言葉で吠えてきたり、ものの形が解体して水玉状になって自分も世界も宇宙も埋め尽くされる、そんな幻覚に悩まされ、それと闘うために紙片に記録する、それが草間芸術の原点と言われています。やがて、すべてを水玉の粒子として、自分も水玉となって消滅していくことで、永遠の時の無限と宇宙の無限に回帰するという思想に至ります。水玉は生きる喜びであり、悲しみであり、すべてを示す、草間作品の主幹となっていきました。以来ずーっと、草間彌生は、いろんな時代を経ながら第一線で活動を続け、第一級の芸術家であり続けています。
これは私が持っている草間彌生の本たち。松本市美術館のミュージアムショップでも「不思議の国のアリス」(この草間版アリス、すごくいい、私の大のお気に入りです)や「美術手帳」は売られていました。

草間彌生を、すごい!すき!、と思い始めたのは、2018年の越後妻有・大地の芸術祭です。これがその作品「花咲ける妻有」まつだい農舞台フィールドミュージアムの屋外に展示されています。この芸術祭、すごーーく面白くて、今では名を知られた現代アーティストの作品が目白押しでした。ボルタンスキー、レアンドロ・エルリッヒ、イリヤ&エミリア‣カバコフ、磯部行久、ダミアン・オルテガ、日比野克彦や田島征三なんて人も参加していました。にもかかわらず、そんな中で「花咲ける妻有」は圧倒的な存在感でした。この年の新作ではなくて、その時点ですでに15年そこにあり続けたものなのに、です。あぁ草間彌生、本物だ!!と強く感じたのでした。それ以来、草間作品に興味を持ち、各地に散らばる作品を調べたり、映像や本や時には実物を見たりしていて、ずっと松本いきたいと思っていたのでした。やっと実現しました。館内のトイレも、街を走るタウンバスも赤い水玉ですよ。
松本市美術館ができたのは2002年、たくさんの草間作品を持っていて、特集展示は展示替えをしながら通年で行われて、ぜひまた行きたいと思います。
草間彌生『ピカソでもマチスでもなんでも来い。私はこの水玉一つで立ち向かってやる。』
今年95歳、体はシャンと、皮膚もピンと張って、眼はキラキラしてる。益々のご活躍を祈念しています。


目的その3・茅野市尖石縄文考古館

3つ目のミュージアムは茅野にある縄文考古館。松本から各駅停車でで50分。そこからバスで20分ほど。でも、このバスが1日3本しかなくて、それに乗り場がわからなくて、やっとの思いでたどり着きました。あたふたしてドキドキしたけど、これも旅の楽しみのうちかな。

ここには国宝が2つあります。土偶「縄文のビーナス」と「仮面の女神」。その他、長野県宝に指定されている縄文土器が多数。また、周辺の木立の中には与助尾根遺跡の復元住居もあります。なんて気持ちのいい場所でしょうか、時間が止まってるみたい。


「縄文のビーナス」です。前だけじゃなくて、ヨコと後ろ姿もかわいい。高さ27cm。縄文時代中期、約5000年前のもの。ほぼ完全な形で出土したそうです。妊娠した女性の姿。
1986年(昭和61年)出土。国宝指定は1995年、土偶では最初の国宝。

こちらが「仮面の女神」高さ34cm。縄文時代後期、約4000年前。中が空洞の中空土偶。
2000年(平成12年)出土。2014年国宝指定。逆三角形の仮面をつけ、神に変わってマツリをする女性を表す。右足が壊れて出土、縄文人が故意に壊した(または取り外した?)と考えられている。お墓と考えられる穴から出土した。
ここでは実際に見つかったままの穴に土偶のレプリカを置いて展示しています。

館内には、縄文土器が多数展示されています。その他体験コーナーもあって、この日は中学生くらいの集団や熟年のグループが粘土を使った体験をやっているみたいでした。個人は予約が必要だったので残念ながら土器づくりは体験できず。でもどんぐりすり潰し体験とか、縄文時代の衣服を着てみるとかやってみました。なんか楽しい。館外に出ると緑あふれる空間、尖石(とがりいし)の地名の基になった石まで行ってみたり、復元住居のある空間でぼーっとしたり。館内に戻ってコーヒーとケーキ、縄文土器の本も買って、国宝ガチャもやっちゃいました。ガチャなんて何年ぶりだろう。4時間ほど縄文考古館に居たけど全然飽きずに、気分良く過ごしました。


目的その4・book cafe 栞日

時間は前後しますが、絶対に行こうと決めていた「栞日」。ずいぶん前にネットで見て、絶対行きたい、行こうと決めて数年。松本市美術館に行く前に訪れました。やっと。
実は松本市美術館のすぐ近くにあります。ちょっと手前の、道を挟んだ向こう側。
1階にカフェスペース、2階が書庫のようなスペース、本を見ながらコーヒー飲んだりできます。3階は宿泊スペース、できれば1週間くらい泊まってというコンセプトなので、今回は断念。(空いてたら短期宿泊も可。)

コーヒーとチーズトーストを頼んで2階に上がったら…
素晴らしいです。これだ!ここだ!これぞ求めていた場所だ!
大好きです、ここ。嬉しくなって早速本を見て回り、手に取って、なんか引っ掛かったら席に戻ってページを繰って…
ここにはいつまででも居られます。ずーっとここにいたいなぁと思ってしまう空間です。

おいてある本はすべて売り物。でも勝手に読んでいい。
かなり個性的なラインナップ。マニアックな雑誌、主張のある本、飲食系、でも一捻りも二捻りもある本ばかり、しかも比較的新しいものが多い。面白いです。ミロコマチコや荒井良二の新作絵本もある。夫は京都の自家焙煎珈琲屋さんの店主が書いた蘊蓄本を持ってきて読んでいます。どっちかの絵本を買って帰ろうかと思った矢先に、ふと目に留まったのが…

これです。 木下龍也の歌集「オール アラウンド ユー」
帯にあった歌に魅かれて手に取りました。
席に持ち帰り、パラパラ読んで、なんだこれ、いいかも、となり、結局これ買ってきました。短歌なんて、俵万智以来。調べてみたら、短歌不感症を標榜している谷川俊太郎が反応した若き歌人のようです。こういう直感的な本との出会いは久しぶり。これも栞日のおかげですね。

今回の旅の隠れた目的は、蕎麦。長野はそばどころ、お蕎麦は5回食べました。駅そばが3回、長野と松本と茅野の駅。ちゃんとしたお蕎麦が2回、長野と松本で。その中で一番おいしかったのが、松本市美術館の近くのそば処浅田の二八蕎麦と十割蕎麦。(奥のが十割、見た目はあまり違わないけど歯ごたえが違う。でもどっちもおいしい。)メニューはこの2品と温かいお蕎麦が1品あるのみ、売り切れたら終了。ここのお蕎麦、つけ汁もキリっと甘くなくて、とても美味しかったです。

駅そば代表は茅野駅の立ち食いカウンターのきのこそば。
きのこが山菜の水煮みたいじゃなくてしっかり味が付いていて、量もたっぷり入っていて期待以上においしかった。長野はきのこ名産だしね。
長野駅に着いてすぐ食べた駅そばは、長野県内のチェーン店みたいでしたが、一応二八そばとなってました。BSの番組「ふらっと立ち食いソバ」や「麺鉄」のファンの私たちとしては、駅そば食べなくちゃというのもあったので。

千葉に帰って、少しでも栞日みたいな店に近づきたい思いがとどまらず、店内の模様替えをすることにしました。
どうしたらあの空気感を出せるんだろう?
どうしたら居心地のいい空間を作れるんだろう?本はそれなりにあるし、ラインナップも一味違うことには密かに自信あります。
とりあえず見せ方、置き方か、ということで、まずは1つのテーブルを展示台にして本を置くだけにしましょう。コロナの時の間仕切りが使えます。考えてみれば、昔古本屋やりたいと思ったことあったな、と思い出し、高円寺に古本酒場っていうのもあったな、と思い出す。何せ自分が居心地よく、機嫌よく過ごせる場所にしようと決めました。

♬…幻想だって最強さ イマジナリーに銀河はある 自分の機嫌とったもん勝ち…♬
よし、そっちに向かって進みましょう。(2024年5月29日 佳)




















































十和田市現代美術館 

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